僕らの大冒険計画
僕らの大冒険計画。
幼い頃に、僕らはそんなことをしていたのを思い出す。
「今日はどこに行こうか?」
中心にいるタケルが言う。
「いつも通りの方法で決めようよ」
「そうだな。じゃあ、回すぜ?」
おう、いいよ、とか周りから声が上がる。
タケルは地球儀を回した。これはゴミ捨て場で見つけたものだ。僕たちはいつも地球儀を回して、誰かが止めたところの名前を見てそれからそれっぽいところを探す。
今日は僕が止めた。場所はコスタリカってとこだった。
「コスタリカ?誰か知ってるか?」
タケルが周りに聞く。
いや、知らない、どこだ。声が上がる。
「なんか遺跡がありそうだよな」
ケンが思いつきで言う。
「たしかに、なんか古代人がいそうな感じがするな」
「そうかなー?」
ユリがとぼけたように言う。
「まあ、とりあえず古そうな場所に行けばいいんじゃないかな。そこをコスタリカにしようよ」
僕がそう提案した。いつもこんな感じで何となくで決めて出発する。
「よし、それじゃあ今日は遺跡の発掘に行くぞー!」
おー!と他の四人が声をあげる。
僕らはいつも五人で遊んでいた。タケル、ケン、ユリ、ハル、そして僕。
小学校での仲良し五人組だった。中学校でケンとハルが別の学校に行ってしまって、集まることは無くなってしまったが、卒業までは毎日のように遊んでいた。
あの時が一番楽しかったと社会人になってから思う。毎日が楽しくて、みんなで笑って、怒って、泣いて。新しい場所を探しては地球儀で指したところの名前をつけていた。
拠点イギリスを出発した僕らは並んで歩いていく。
隊列が決まっていて、前に一人ハル。後ろにタケル、僕、ユリ、ケンの順だ。
この並びはケンが好きな「ちぇす」から取っている。最初にケンが「びしょっぷ」になりたいと言いだし、そのあとタケルが名前がかっこいいからと言って「るーく」になりその二つが埋まった。
ハルは少し変わっていてあまり話さない。でもその時は前にいるのがいいなとかで「ぽーん」になった。
残っているのが、きんぐ、くいーん、ないとだった。
ユリは当然「くいーん」を選んだ。
残った僕は「ないと」にした。なんとなくユリと「きんぐ」と「くいーん」で一まとめにされるのが恥ずかしかったからだ。
きんぐがいない変な隊列にだけど、僕らはそれを楽しんでいた。「ないと」になったところで何かと戦ったりとかそういうのも無く、ただただ付けて満足するといった感じだった。
しばらく進んで前にスリランカと名付けた公園についた。砂場が大きく、ユリがスリランカって砂漠がありそうと言ったことによりそうなった。
僕らが決めた拠点にはポスターが置いてある。小さい紙にスリランカと書いて、木の枝に刺してある。勝手に名づけてあるから人目につかない所にポスターを置くようにしている。
他に名づけた拠点も同じようにポスターは置いてある。
よくわからない建物や発電所とか工場とか色々なところに置いて行った。別に捨てられてもいいけど、一度ポスターを置くというのが僕らにとって重要なのだ。
スリランカを通り過ぎ、僕らは進んでいく。
前でハルが今回のポスターを描いている。ハルは絵を描くのが好きなのでいつもポスターに描いていた。
「ハル、今日は何を描いてるの?」
「んー象かなあ?コスタリカにいそう」
へへとハルが笑う
「いるかなあ?象って動物園にしかいないんじゃないのか?」
タケルが口を挟んでくる。
「そんなことないさ。アフリカにはいるらしいよ」と少しだけ物知りなケンが言う・
「ふーん、初めて知ったな」
タケルは興味無さそうにうなずいていた。
「ねー遺跡を探すなら裏山に行った方がいいんじゃないのー?」
ユリが提案したことで僕らは裏山に向かった。
二時くらいでも山の中は薄暗かった。
「ハル、前一人じゃ危ないよ」
ぼくは「ないと」らしく守るように前に出た。
「私は大丈夫だけどなあ」
ハルは一人で前にいるのがよかったみたいだけど、さすがにいざというときのために隣にいた。
「なんかさあ、これ遺跡なんて見つかるのか?」
タケルがそう漏らす。
「どうだろう、裏山は小さいしそういうのがあったらとっくに見つかってそうだね」
僕も見つからないような気がしていた。
「暗くなる前に見つからないようなら戻ろう。山は危ないって聞くし」
ケンがそう言う。
そうだね、だなー、んー、とかみんなが言う。
一時間くらい歩いてコスタリカっぽいものは見当たらなかった。
「そろそろ帰るか。疲れたし」
ケンが言うとみんな賛同し、山を下りることにした。
帰り道を歩いている時にハルが突然声を上げた。
「あ!あれがコスタリカっぽいよ。」
ハルが指を指すほうを見ると小さいお社があった。
「遺跡じゃねえじゃん」
「でも、古いよねえ」
「これでいいんじゃないの?」
「今回はこれにしとくか」
「じゃあポスター置くよ」
お社の下にポスターを入れる。
お社は古くて、誰も掃除してないようだった。一応、上にあった葉っぱを取っておいた。
「今日も楽しかったな。コスタリカがあれでいいかはわかんないけどさ」
拠点に戻ったタケルが地球儀に触りながら言う。
「僕はいいと思うよ。歴史がありそうだったし」
「私もあれがよかったー」
ユリが笑いながら言う。
「よし、それじゃあ今日はこれくらいで解散しよう」
ケンが立ち上がり帰ろうとする。タケルとユリもそのあとに続く。
僕も帰ろうとしてカバンを持つ。
足を踏み出してすぐ、後ろからハルが話しかけてきた。
「今日、山の時私の隣に来たのナイトっぽかったよね」
へへとまたハルは笑う。
「それじゃあねー、また明日―」
手を振りながらハルは帰って行った。
今日の活動はこれでおしまい。明日は何をしようかな。
小学校の遊んだ思い出はこれが一番記憶に残ってる。
多分、ハルに抱いた気持ちが初恋ってやつだったからじゃないかなと思っている。
自分のサイトで投稿したものです。『チェス』『ポスター』『地球儀』の3つのテーマで書いた小説になります。
自分のサイトでは3つのテーマを使った三題話をいくつか載せています。