21/97
epilogue
暗雲が垂れこまれるような天気の日。
建物によって日差しは遮られ、普段から暗い場所がいっそう光の当たらない薄暗い場所に俺たちは立っていた。
隣に並んでいた緤が花束を持って一歩前に出て、しゃがむ。花に詳しくない俺に対して緤はプルメリアだよ、と言っていた。白く咲き誇る花がそよ風に揺れる。
「俺が此処に来たところで、貴方は俺を快く思わないのは百も承知です。だから、最初で最後だけ、此処に花を置かせて下さい」
此処は緤に恋をした男性が、失恋の怒りから別の人間を殺害した現場。
長髪を後ろで一つにまとめ、黒のスーツ姿に身を包んだ緤は、普段とかけ離れていて――まるで別人のようにさえ思う。
「――さようなら。もう二度と来ませんので」
謝る行為はこの場合、自分が死者に対して許されたい気持ちを整理したいだけとでも思ったのか、緤は殺害された彼に対して告げた言葉は『さようなら』だった。
「さて、いこう。終夜」
黙祷を終えた、緤は立ちあがった。それにつられて閉じていた瞳を開ける。
「あぁ」
二度と足を踏み入れないと決めた場所へ、最後にお辞儀をしてから俺たちは立ち去った。




