表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロールド  作者: ハム
20/23

第20話

やっとこさ書けました(^-^)/お待たせして申し訳ありませんm(__)m

矢上の縛られた台座の奥に江口は俯き加減で立っていた。河野は江口の対面に、田沢達は河野の右後方に立ち、江口から距離を保っていた。台に縛られているとはいえ、まだ抵抗し暴れる矢上、その横では河野が江口に銃口を向けたまま離す様子は無かった。


『一体どう言うつもりで我々を手助けしたんだ?………いや、助けると見せ掛けて矢上君を拘束させ我々を独り占めするつもりか?』


始め厳しい口調の河野だったが徐々に冷静さを取り戻し、淡々とした口調へとトーンを下げて行った。江口は河野とは目を会わさずに下を向いて居たが、河野の言葉を否定する様に首を激しく横に振った。

矢上は暴れながら江口に向かって叫ぶ


『何シテンノ江口!早ク私ヲ自由ニシナサイヨ!………コイツラ、二人デ分ケルワヨ!』


矢上の言葉に江口は矢上と目を合わせたが、その表情は哀しみに溢れて小刻みに震えていた。江口の様子に気付いた矢上はふと暴れる事を止め、少し驚いた表情で江口を見詰めていた。

河野のからは江口の表情が見えず険しい顔のままで銃を構えたままであった。そんな状況の中、絞り出した様な声が田沢達にも聞こえてきた。


『………ショウヨ………』


はっきりと聞き取れない言葉に驚きながらも耳を澄ますと先程よりトーンを上げた江口の声が聞こえてくる。


『………モウ止メマショウ………コンナ事………』


はっきりと聞こえた江口の言葉に皆は理解が出来ないと言った表情であった。それは死者と化した矢上も同様であった。江口はそっと顔を上げた。人間の血の気が全くない白い肌、確かに死者に違いは無かった、しかし江口の目からは涙が流れ、そして震えていた。死者と化したとは言え部下であった江口の表情に河野の顔から険しさが消え困惑へと変わっていた。更に江口は続けた。


『………モウ、止メマショウ、矢上サン………』


江口の哀しみの表情に見いっていた矢上が江口の言葉にハッと我に返り、自分の耳を疑いさえした。


『ナ、何ヲ言ッテンノ江口?………私達ハモウ、元二戻レナイノヨ!………ソレニ、コノ苦痛ヲ和ラゲル為ニハ新鮮ナ脳ガ必要ナノハ、アンタダッテ本能的二理解シテルデショ!』


矢上は反論したが、江口はそれを押し黙ったまま聞いていた。しかし矢上の拘束されているロープを外そうとしない江口、更に神妙な面持ちで江口が発言した。


『………所長達二オ願イガアリマス………僕達ヲ殺シテクレマセンカ?』


江口の発言を数秒理解出来ないで居た河野達は唖然としていた。死者と化した江口の発言が余りにも突拍子のない発言だったからだ、しかし彼の表情からは硬い意思が伝わってくる。何かの罠かと思っていた田沢もその眼に江口の真剣さを感じ取った。静寂の走った空気を矢上が切り裂いた。


『達ッテ何ヨ!達ッテ?死二タイナラアンタダケ死二ナサイヨ!』


既に死んでいる江口と矢上の言い分には突っ込み処満載ではあろうが、今の緊迫した状況では誰もそんな事は思っていなかった。暫く騒ぐ矢上だったが何かを考え込んでいる河野を見て疑問に思う様に黙り込んだ。次に口を開いたのは河野だった。


『君達の希望は分かった………しかしいくつか聞いておきたい事がある………先ず、この冷凍室に保管されていた死体についてだが………此処には死体が5体あった筈だ………その内3体は彼らの仲間が外で目撃したらしいが………残り2体はどうなった?』


河野の質問に一瞬目を合わせる江口と矢上、河野の質問に江口が答え始めた。


『一体ハ焼却炉ヲ使ッテ処理シマシタ………モウ一体ハ………スイマセン………バタバタシテテ分カリマセン………』


江口の応えに河野は眉間に皺を寄せた。しかし田沢はどうやってあれ程までに死者が増幅したのか分かった様だった。更に河野は質問を投げ掛ける。


『………では、森山ともう一人の所員は何処に行った?』


河野の質問に再度江口は応えた。


『森山サント、金子君ハ外二出マシタ………僕モ一緒二一度研究所ヲ出タノデスガ………外ノ奴等ト同様二ナッタ森山サント金子君ヲ見テ怖クナリ、此処二戻ッテ来マシタ………』


更に眉間に皺を寄せる河野は矢上を見て質問した。


『矢上君………君モもそうなのか?』


矢上は河野を薄ら笑う様に応えた。


『私ハ単二此処二残ッタダケヨ!態々獲物ヲ追イ掛ケ回スナンテ、私ノ性二合ッテナイダケ、ソノ証拠二此処二逃ゲ込ンダ馬鹿ナ奴ハ美味シク頂イタケドネ………』


口の回りを血に染め、舌舐めずりをする矢上に自衛隊員と松尾は背筋に冷たいものが走った。埋立て地は死者が群れ、目の前にも死者が居りいつ自分達に襲い掛かるかも知れないと生きた心地はしないだろう。しかし河野は死者と化した部下を目の前にしても冷静に話ていた。


『………分かった。江口君………兎に角君の意志が本当であるなら、君を一旦拘束させて欲しいのだが………我々も出来る限り安全に事を進めたいのだが………分かって貰えるか?』


河野の言葉に江口は少し考えていたが素直に頷いてみせた。江口を信用はしてはいないが今は下手に刺激して襲われれば、自分達はひとたまりもない、一番背筋を凍らせ、肝を冷やしていたのは他でもない河野であった。


『………田沢君、他に拘束出来る物を持っているかい?』


田沢はリュックの中を探り手錠を一つとロープを手に取って見せた。それを見ていた江口は大人しく田沢の方に近寄って行く、もし江口の行動が演技で田沢に近付いた途端に襲い掛かるかも知れないと誰もが考え、少し距離を置く様に江口を取り囲み銃の狙いを江口に向けた。しかし江口は素直に両手に手錠を嵌め易い様に田沢に差し出した。江口から視線を外さない様に唾を飲み込みながらゆっくりと手錠を掛け様とする田沢、緊張で手が震えていた。江口の右手を掴み手錠を掛け、次に左手に掛けた。無事に手錠を掛けられた事に田沢自身驚いたが、緊張を緩めず、江口から眼を離さない様にゆっくりと後退りした。無事に手錠を掛けた事を確認した河野は江口に次の指示を出した。


『すまないが、江口君、次はこの台に横になってくれるかな?』


そう指示された江口は大人しく台に向かって歩きだす、松尾や隊員二名は江口が歩を進める度に少し後退りをし、警戒を緩めない。皆の警戒を他所に江口は素直に台に上がり仰向けに横たわった。


『田沢君、そのロープで矢上を縛った様に台事、彼を縛ってくれ………』


河野の指示に田沢は頷き台の横に付くとロープを江口を挟み台の向こう側になげた。一人では手間取るだろうと松尾も手伝う。まだ完全に縛ってない状況で江口が暴れる事を警戒しながらも手早く確実にロープで縛り付けて行く、絶対に程けない様に確認を怠らなかった。その作業を終えると皆が大きく息を吐き、漸く少し安堵出来る事となった。江口が縛られる様をずっと見詰めていた矢上は江口が縛り上げられたのを見て観念したのか頭上のライトを見詰めた。


二人の死者を拘束し終えた事で隊員と田沢、松尾はその場に腰を下ろし地べたに座り込んだ。

河野は左手を腰に添え、右手で口髭を調える様に弄りながら考え込んでいた。


『………さて、これからどうしたものか………』


呟く様に河野が言ったが、この後は決まっている。皆で地下に向かい、地下道を伝ってこの埋立て地を脱出するのだ、しかし河野が言ったのは、江口と矢上の事だった。死者と化したとは言え部下であった事に変わりはなく、江口の頼みを蔑ろには出来ない、台を研究所の廊下に出して置けば何れにせよ砲撃か爆撃により彼等は死滅するだろう。余り時間も無く迷ってる暇もある訳ではない。河野は江口に今後の事を説明する事にした。それは河野達の脱出プランではなく、埋立て地がどうなるかと言う事を、それを説明した上で死に方を選ばせ様と思ったのだ、


河野の説明は、時期に埋立て地は砲撃もしくは爆撃を受け証拠と共に全てを灰にされると言う事、もう一つは焼却炉を用いて江口と矢上を荼毘に附せよう言う考えであった。しかし河野の意見に田沢は反対した。死者を燃やしてしまった結果、この様な惨状を招いており、更に死者を燃やす事はデメリットがあり過ぎると考えたからであった。田沢の反対理由を聞き更なる罪悪感を受けた江口は泣いていた。必死に涙を堪えながら江口は爆撃による死を選択したのだ、他人をこれ以上犠牲に出来ないと思ったのだろう。


ただ、此処の冷凍室に置いて置けば万が一にでも爆撃でも生き残る可能性があるので河野は矢上と江口を研究室に移す事にした。幸な事に台には車輪が付いており、移動は簡単に行える。河野達は早速矢上と江口を移動させる事にした。冷凍室から隊員二名が先に出た。自動小銃を構え安全を確保する為だ、暗闇に包まれ静まり返った研究所は異様に気味が悪く、ゆっくり静かに研究室に移動させて行く、彼等以外に気配はなく、無事に移動を終えた。


ホッと一息付こうとしたその時だった。シャッターが閉じられた窓を叩く音が鳴り響く、その音に一気に緊張感が高まったのは言う迄もなかった。規則性が無く無造作に叩かれるシャッター皆誰もが理解出来た。死者であると、

『二階から様子を見てきます』


田沢はそう言うと研究室を走りながら階段に向かう田沢、その直ぐ後を追い掛ける松尾、咄嗟の事に河野が二人を止める間もなく闇の中に姿を消した田沢と松尾、切迫した状況下で矢上が天井を見上げながらポツリと呟いた。


『………一ツ良イ事教エテアゲル………』


矢上の言葉に河野と隊員二名は矢上を見た。そんな皆の素振りを何ら関係ないと言う様に矢上は話を続けた。


『コノ建物ノ中二、他ニモ私達ノ同類ガ居ルワヨ………』


更に緊張が高まり周囲を警戒する。シャッターを叩く音が確実に増えていた。焦りから額から汗を浮かばせる河野は田沢と松尾の安否を心配していた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ