表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

◆6章「VOICE~声~」--1

 志津香たちにルーアの事を話してからは、昼休みや放課後に話す機会が増えた。話すことは、もちろんルーア絡みの事ばかり。

 ルーアは何者なのか? 身長は? 住んでいる所は何処なのか? などなど。まるで当初の勇哉たちと似たような質問ばかりだったが、本宮はもう少し深いところを訊ねていた。

 酸素はあるのか? 重力は? エネルギーは? などと、勇哉的に言えば「そんなのを知って、どうするんだ?」と、ルーアも少し返答に困っていた。

 先日のファーストコンタクト―志津香たちとルーアの会話―の後で、穂乃香が言うには本宮は宇宙とかに興味があるらしく、いわゆるSFオタらしい。

「なんだ、将来NASA辺りにでも就職したいのか?」と冗談交じりで訊くと、

「それが僕の目標だからね」

 本宮の瞳は本気だった。

 さて、それは置いといて。

「小此木さんは小学校とか中学校の時でも、宇宙との交信をやっていたんでしょう。それがなんで高校生になってルーアさんに届いたの?」

 志津香のふとした疑問に、

「多分、場所的に良かったも知れないよ。テレパシーというのは、電波みたいなものだという説があるから。ほら、羽ヶ崎高って高台にあるだろう。それで電波状況が届きやすくなって、小此木さんのテレパシーの電波がルーアさんに届いたのでいないかと」

 ハードSFオタの本宮が解説と解釈してくれて、一般的な知識しか持たない勇哉たちをなんとなく理解させたが、

「そんな理由なのか? てか、小此木の声がルーアに届くのは良しとして、なんでオレがルーアの声を聞けたりするんだよ。普通だったら、小此木とルーア間で交信するもんじゃないのか?」

「それは、波長が合ったんじゃないかな。ほら、携帯電話とか無線機とかでもそうだろう。特定の周波や電波で受信送信できる感じで、ルーアさんのテレパシーの波長が村上くんに合っていたんじゃないのかな」

「オレは携帯電話か!」

「そもそも村上くんの場合はテレパシーとかじゃなくて、チャネリングの方が正しいかも知れないね」

「ちゃ、ちゃねリング?」

「チャネリングというのはね、テレパシーの一種なんだけど、テレパシーとはちょっと違うんだ。やりとりができないような相手……例として挙げるのなら、神様とか精霊とかの霊的な存在や未来人や宇宙人とかの未知の存在とかと交信ができる事なんだ。テレパシーは一方的にかつ単独的にしか伝えられないけど、チャネリングはその存在との交信……声を聞くことができる。つまりテレパシーは他の人に自分の声を伝えるけど、チャネリングは他人の声を聞くを主にしている感じかな。ちなみにチャネリングができる人をチャネラーというんだけど、代表例としてシャーマンとかイタコとかがチャネラーと云われているんだ。有名なところでは邪馬台国のヒミコもチャネリングが使えるチャネラーだという説もあるんだよ」

 本宮が目を輝かせてペラペラと語り、専門的な用語が次々と飛び出してくる。こういった専門的な知識はそれらが興味ある人間に語るのなら良いのだが、一般人である勇哉たちにとっては聞くに堪えない話しであり、聞いているだけで辟易してしまう。

 それに、それをルーアに伝えても、

『?』

 と理解してくれる訳が無く、勇哉は噛み砕いて説明するしか無かった。その作業がよりいっそ勇哉を辟易させる。

 だけど、琴葉とルーアとの三人で話すよりは、こうして多くの人と話した方が楽しかった。これが、ルーアが言う“話が輪を広げる”というものだろうか。

 しかし、どうも琴葉の方は、そう思っていなさそうな感じだった。

 そんなルーア関連の話しをしながら、勇哉たちは今バスに揺られて、ある場所へと向っていた。それはゴールデンウィークに突入する前日に、穂乃香が五枚のチケットを持ってきた事に始まる。


     ~~~


「ねぇ小此木さん、勇哉くん。ゴールデンウィークは予定が空いていたりする?」

「一応……今のところは、何も予定は無いな」

 勇哉はサンドウィッチをほお張りながら受け答えた。

「小此木さんは?」

 首を横に振る琴葉。

「だったら、空いている日にでも此処に行かない?」

 穂乃香はおもむろに制服のポケットからチケットを取り出す。

「これは……」

「木星遊園地の無料チケット、フリーパス半額付き券よ」

 穂乃香が持っているチケットの一枚を志津香が引いた。

「どうしたのよ、これ?」

「ほら、あれ。市民活性プロジェクトプレゼントで、ウチに当たったの」

 市民活性プロジェクトプレゼントとは、伊河市では市内活性化運動として、毎週市役所が伊河市民を対象に、抽選で街のレジャー施設などの無料券や商品券が配られるものである。

「あれって、都市伝説じゃなかったんだ」

「当たる時は当たるのよ。で、ちょうど五枚あるし、みんなと遊びに行かない?」


     ~~~


 という訳で、こうして駅前からバスで四十分の所にある木星後楽園遊園地へと向っているのだった。

 ちなみに、木星後楽園遊園地とは市を飛び越えて県内でも一番大きな遊園地で日本でも名の知れた有数のレジャーランド。

 そして遊園地の名前にもなっている木製できたジェットコースター『ジュピター』が目玉で、一度来園したのならば是非乗って貰いたい。


     ~~~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ