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拉致も立派な勧誘なりぃー!

分かりにくいかもしれませんが、作中の「俺」は「谷津」のことです。


スイマセン。。。

火曜日。


授業も終わり放課後。


化学室。


「今日は何人くるかねぇ~?」


能天気な男が一人。


片菜高校科学部部長の肩書を持つ野御丸仁である。


「何人来るかねぇ~って…。このままここでのんびりしてちゃ0に等しいだろうね」


そう言っているのは名目だけ副部長の岡品谷津。俺は副部長などやりたくなかったのだけど…。


「やっぱりかぁ~。部費が減っちゃう~」


「いや、それよりも重大だろ!部員が入らないのは!!」



今日も新入生は校庭で集会。


毎日ご苦労なこと…。


「いいか部長!今日からが勝負だぜ!」


「え?何で?昨日は?」


「昨日はべつに構わんよ」


「なんでさ?」


「考えてみ?新入生は普通この部活に入りたい!的な希望を持って入学してくるだろ?」


「うんうん」


「だから、昨日はその希望する部活に行くわけだ」


「へぇへぇ」


「しかし、希望する部活があまりにも厳しかったりしたらどうなるよ?」


「入部を止めるやつも出るってことか!?」


「そうだ!」


「なるほど!谷津頭良いな。部長やらねぇ?」


「遠慮しときます」


そんな気話をしていたら部長もやる気を出したらしい。


珍しいこともあるもんだ。


「よし!じゃあ勧誘してこい!」


部長が指示した。


俺に…。


「あんたも来なさい!看板持って!」


そういうと部長は「おいでやす科学部ぅ~」とやる気のない字体で書かれた看板を持った。

因みに化学室の方向を示す矢印付き。


縦1メートル横50センチくらい。木製。


無駄にでかい看板である。


もちろん部長のお手製。

文化祭でも使われる予定。今回がデビューイベントである。


「お、重い…」


部長も持つのに一苦労である。


看板を廊下に設置しようとした時問題が発生した。


「あ…。これ、1年が来る方向に向けると裏になっちゃう…。裏何も書いてないし矢印も逆…」


「あ、ホントだ。気付かなかった」


「…。バカだなぁ。。。」


「いや、俺の所為じゃない」


「あ~?あんたの所為だろ!」


「もういいや。ビラ配ろう。ビラ」



谷津は部室からビラを持ってきた。


そして昨日と同じように昇降口で待機。




1年の集会が終わった。


みんな一斉に教室へ戻る。


「よし!行くよ部長!」


俺はそう言って一年生にビラを配った。


「科学部お願いしま~す」


「お願いしま~す」


「科学部でぇす。どうですかぁ?」


「どうすか?」


俺の後に部長が合わせる。


極力喋らないようにしたいらしい。



一通り配り終わった。


「さて、この後が勝負かな」


「え?配ったからもういいじゃん。何すんの?」


部長が聞いてくる。


「拉致!それしかない!もう手段は選ばない!」


「え?そんなにピンチ?」


「ピンチというか…。チャンスなの!運動部を止めた人が他の所にいっちゃ意味無いでしょ!だから、他の部活に回らせないという意味も含めて拉致するよ!」


「え~…。個人の意見を尊重し…」


部長がそう言いかけたところで俺がさえぎる。


「それじゃ部活が潰れちゃう!」




一年生が絶対通る階段下に陣取った。

ここは化学室につながる廊下の前でもある。


拉致するには絶好のポイントだ。


すると、一年生が降りてきた。

ホームルームが終わったらしい。


「ほら!部長!声かけて!」


「無理でしょ!あいつ超運動部!って感じだったぞ!エナメルの紐短くしてたし」


「あ~…。じゃあ無理だわなぁ~」


「第一!お前も声かけろって!言いだしっぺ!」


「うるさいな。分かってるよ!もっと弱そうなの見つけたらな!」


「自分だけそんな…。弱そうなやつって…。俺強そうなの担当…?」


「当り前だ!」


「そんなバカな…。非情なり、岡品谷津…!」


「何か言った?」


「いいえ、何も…」



そう言っている間にもどんどん一年生は降りてくる。


すると、谷津が一人に目を付けた。


「ちょっと君!ねぇ、部活決まってる?」


「はい」


「因みに何部?」


「テニス部に行こうかと…」


「あ~そうなの?じゃあ止めないわ~。科学部も考えといてよ!きつかったら科学部に!」


「はい」


1年生は行ってしまった。


「おい谷津!何故逃がした?」


「いや、部活決まってるのは無理だった」


「まぁ、そうだろうな」



谷津が二度目のアタックへ。


「君!部活決まってる?」


「いえ…。まだです」


「運動部がいい!とかある?」


「文化部がいいです。あんまりきつくないのが…」


「じゃあ科学部どう!?」


「科学部ですか…?」


「うん。じゃあこっち!化学室が活動場所だから!」


少々強引にも連れ込むことに成功した。


「あ、谷津。他に3人来てるよ」


部屋に入るや否やそう言われた。


「そう?いつの間に…」


今日の一年生の体験入部人数は4人。


昨日と比べれば良い感じである。




「谷津、実験やってよ。俺はよく知らないから」


部長がそう言った。


「部長がよく知らないってどうなの!?」


俺はそう言い返した。


「えっと…。とりあえず部活の紹介から…」


4人を一つの実験机にまとめて座らせた後、俺はそう切り出した。


「週三日で活動してます。活動内容はそれぞれが好きな実験を行えます。炎色反応とか、スライムとか…」


一通り説明する。


「俺が副部長で、あっちで洗剤撒いてるバカが部長」


「あれ、部長だったんですか?」


「正直でいいね!あれが部長。一番能力がない部員が部長になりました」



そこまで言って俺は実験の用意をした。


「今日は、爆発物を作りたいと思います」


「大丈夫なんですか?」


一年生が聞いてきた。


「ん~………。危険」


「え…?」


「まぁ上手くやるから」


そういってビーカーを取り出す。


「まず、濃硫酸を入れます」


ビーカーに濃硫酸を入れる。


「次に、濃硝酸を入れます」


硫酸が入ってるビーカーに硝酸を入れる。


「最後に、グリセリンを入れます」


さらにグリセリンを入れた。


「まぁ、これで一応完成なんだけど…。どうしよ…」


すると、ほんのちょっとだけピペットですくい、水道に落とした。


すると、爆発した。


軽く言ったけど物凄い。


「何作ったんですか?爆発するようなもの入れてませんよね?」


一年生が聞いてきた。


「入れてないよ。今のはニトログリセリン。聞いたことはあるでしょ?」


「ありますけど…。ダイナマイトのやつですよね?簡単に作れるんだ…」


「うん。まぁ、今は狭心症の薬としての方が需要があって、爆薬としては使わないんだけどね。まぁ、こういうのが簡単に作れるってことを教えたかったんだけど…。面白くない?」


「面白いです!」


これは手ごたえあり!


「じゃあ次はベンゼンにさっきの硫酸と硝酸を…」


「また爆発ですか?」


「まぁ、見ててって!」


そう言うと、ゼンゼンと書かれた液体を硫酸と硝酸を混ぜたものが入っているビーカーに入れた。


「こいつはニトロベンゼンっていうんだ」


「ニトロって…。また爆発じゃないですか!」


ニヤッと笑ってニトロベンゼンを水道に垂らす。


しかし、爆発しなかった。


「あれ…?失敗ですか?」


「いや、これで成功。ニトロベンゼンは安定した物質。だから爆発はしないよ」


「ニトロってのは名前だけですね」


「いやいや、ニトロ基ってのがくっついてればニトロって名乗れるんだ。まぁ、ニトロってのが全て危険じゃないってのがわかったでしょ?」


「そうですね、ニトロのイメージ変わりました」


「なら良かった。やったかいがあるねぇ」


「じゃあ、今日はこんくらいにしようと思うんだけど…。質問ある?」


「いや、特に無いですね」


「そうかい。みんな何部入るの?」


質問すると一年生が一人一人答えた。


「いや、俺はもう科学部で決めちゃってますけど…」


「私も科学部です」


「自分も…他は考えてないです」


「えっと…。自分はまだ、他も回ってみたいんですけど…」


拉致した人以外はほぼ獲得したと言ってもいいだろう。


とりあえずゼロは無くなった!

そう思うとほっとした。


因みに、一人女子。

部長に「嬉しい?」って聞いたら「まぁ…うん」って言ってた。素直なやつだ。



それから水曜日・木曜日と、入部を決めた三人しか来なかった。看板を立てかけただけにしたのが原因だろう。部長が「疲れた」というから苦肉の策を打った。


水曜日はルミノール発光の実験、木曜日は銅の金メッキの実験で10円玉を金色にした。


そして運命の金曜日。


入部届け提出の日。



今年の入部希望者は3人。


結局、いつも来てくれた3人からメンバーが変わることはなかった。


しかし、谷津は満足していた。


そして、顧問も来て自己紹介が始まった。


喋る内容はというと…。


名前・出身中学校・どこから通ってるか・趣味・元何部か・一言。


まずは部長。前に出てしゃべる。


「えぇ~っと…。この部活の部長の野御丸仁です。泥沼中出身です。えっと…倉病くらやみ市から来てます。趣味は…静かにしてることです。元美術部です。えっと…。お願いします」


次に俺。


「名目上だけ副部長の岡品谷津です。正式な副部長はいません。珍しい部活ですね。出身中学は口端くちばし中学校出身です。隣の明奈みょうな市から通ってます。趣味は寝ることです。一応元卓球部のサボり魔でした。えっと、もうちょいで引退と言う噂ですが、よろしくです!」


引退の日が決まってないのもこの部活の特徴だったりする。



他のメンバーも自己紹介をしていき、最後に一年生。


「えっと、じゃあ手前の人から順番におねがいしまーす」


俺が自己紹介するようにうながす。

一年生は遠慮がちだから。うん。


「えっと、一年の市川いちかわ 亮平りょうへいです。出身中学は白城しろじろ中です。伊毛夢市いもむしから通ってます。趣味は、植物の栽培です。元野球部です。よろしくお願いします」



「私の名前は冨張とばり 美穂みほです。出身中学は烏丸からすま中です。都町みやこまちから通ってます。趣味は玉ねぎをみじん切りにすることです。元吹奏楽部です。科学はよくわかりませんが実験は好きです。よろしくお願いします」



「僕は羽入はにゅう たけしと言います。出身はくるわ中です。村市町むらいちちょうから通ってます。趣味は田んぼで帰るを捕まえることです。元和太鼓部です。頑張ります」



自己紹介終了。


それに伴って今日の活動終了。





こうして、無事に科学部はメンバーを獲得した。


これからまた実験が楽しくなりそうである。



明日の実験内容を考えながら岡品谷津は化学室を後にし、駅へと歩いて行った。


駅前の桜の木は、もう花が散り始めていた。

連載にしては短いし、短編にしては長い。


微妙な長さとなりました、「我ら科学部! 春」でした。


というわけで、完結とさせていただきます。


また機会があったら…というか、ネタがおもいついたらやりたいです。


それではまた!


(このメンバーでの文化祭とか、いろいろ考えてるのも事実なんですけどね)



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