08 遺跡探索
古代遺跡の内部は、どちらかというと現代日本の研究施設の中のような雰囲気だった。リノリウム張りっぽい近代的な廊下が奥に伸び、左右には扉が等間隔で並んでいる。
これはこれでゲーム通りではあるし、俺としては懐かしいくらいの感覚だが、フォルシーナたちにはやはり物珍しく見えるようで、全員がさかんに周囲を見回している。
並ぶ扉のほとんどは鍵がかかっていた。こちらは『精霊の祝福』でも開かない仕様なので無視をして進んでいく。いくつか開く扉もあって部屋を調べるが、どこも研究員の私室らしくめぼしいものはない。
書類などがいくつか手に入ったが、ゲームと同じでフレーバーテキストが書いてあるだけだった。それによるとここは新兵器の研究所で、現在『実験体1号』の最終調整に当たっているところだったらしい。
というか古代遺跡なのに文字や言葉がほとんど変らないんだよな。そのあたりの適当さはゲームっぽいが、一応このインテクルース王国は古代文明からつながっているという設定はあった。
「その『実験体1号』というのが、お父様が危険視なさっている古代兵器なのですね?」
「恐らくな。汎用性の高い兵器で、自己修復機能があり、様々な武装を付け替えて運用できるらしい」
「想像もできません。お父様は具体的にどのようなものかご存知なのですか?」
「まあ、なんとなくだがな」
と濁しておくが、もちろんどういうものかはよくわかっている。
いくつかの部屋を調べつつ、遺跡の奥へと進んでいく。
右側に大きな両開きの扉が見えた。扉には『重要区画』とか『関係者以外立入禁止』とか書いてある。
「ここは……。もしかしてこの奥に古代兵器があるのでしょうか」
「いや、ここはまだ遺跡の中心部ではない。だがなにか重要なものがありそうではあるな」
ゲーム通りなら、ここは中央区画に入るためのスイッチを入れる部屋だ。もちろんスイッチを入れる前にはお約束の戦闘があるはず。
「入るぞ。油断するな」
ゲームでは破壊されていたが、『精霊の祝福』で開くタイプの扉だった。左右に扉がスライドすると、目の前に現れたのは倉庫のような空間だ。幅奥行きともに30メートル、天井も高く5、6メートルはあるだろうか。丁度バスケットボールができそうなくらいの広さだ。
左右には棚があって機材や物資がいくつか並べられている。奥には操作盤のような機器が鎮座していて、正面の壁には液晶テレビみたいなモニターが設置されている。ただ稼働はしていないらしく映像は映し出されてはいない。
「お父様、ここは物置きなのでしょうか。しかしあの奥の魔道具のようなものが気になります」
「そうだな。だが罠があるかもしれん。慎重に進もう」
俺が先頭になって部屋に入っていく。ゲームだと、少し進んだところでイベントバトルがあるはずだ。
10歩ほど進んだところで、突然けたたましく警報が鳴り響いた。それまで完全に無音だったので、知っていてもビクッとなってしまうな。知らなかったフォルシーナたちは慌てて構えをとって周囲を見回している。
「落ち着け。上だ」
見ると天井がパカッと開いて、そこから金属製と思われる人型のゴーレム5体が飛び降りてきた。背の高さは3メートルくらいか。ゴーレムと言ったが、俺から見ると完全にSF的なロボットである。見た目は武骨な、リアル系ロボットアニメ寄りの形状をしている。右腕は肘から先が剣、左腕は銃になっていて、戦闘用だと嫌でもわかる。
『侵入者ヲ感知。排除シマス』
戦闘ロボ型ゴーレム『ガードゴーレム』が声を発した。ゲームと違って『精霊の祝福』を使って正規の手順で入ったのだから侵入者じゃないよね、と言いたいところだが、ここの職員だと証明する条件が他にあるのかもしれない。
「左腕から魔法を放ってくるらしい、注意するように。2体は私が片づける。ローテローザ公とオルティアナは2人でもう1体を。フォルシーナたちは2体を相手にせよ」
「わかったわ」「はい!」「おうっ!」
俺が全部倒してもいいのだが、他では得られない貴重な経験値だ。フォルシーナたちには頑張ってもらおう。
俺は『縮地』で右の二体の間に割り込み、『無尽冥王剣』でそいつらの両腕両足を斬り飛ばして端に転がしておく。これはあとでミアールに止めをささせよう。
残り3体のうち1体は、ヴァミリオラが魔法を直撃させ、ゴーレムが怯んだところを聖女オルティアナが跳び蹴りでノックアウトしていた。一撃で頭部がちぎれて吹き飛んだのだが、さすがゲームでは『鉄拳聖女』という二つ名だっただけはある。それを見てマリアンロッテが目を白黒させているのが面白い。
フォルシーナたちはいつものマリアンロッテの魔法で防御力アップ、フォルシーナの氷属性魔法で足止めからのアミュエリザ、ミアール、クーラリア3人の格闘戦のコンビネーションで危なげなく倒していた。向こうは一応飛び道具も放ってきたのだが、それはマリアンロッテが土属性魔法『アースウォール』で土の壁を作って防いでいた。
「ミアール、この2体の止めをたのむ」
俺は戦い終わったミアールを呼んで、手足を斬り落としたゴーレムに止めをささせた。
狙い通り、2体ともに『ゴーレム核』を落とす。ミアールのドロップ運上昇スキルは有用すぎるな。
俺が拾ってマジックバッグにしまおうとすると、ヴァミリオラが目ざとく聞いてくる。
「あら、それは『ゴーレム核』?」
「うむ。今のモンスターはゴーレムであったからな」
「でもそれは役に立つものではないでしょう?」
「一般にはそうであろうな。私はこれを有効に扱える術をもっている」
「もしかして、ブラウモント公爵領で巨大なゴーレムを使役しているという情報は……」
「ふっ、さすがローテローザ公だな」
と適当曖昧発言でごまかして、俺は奥の操作盤へと近づいた。
中央にある水晶球のようなものに手を当てると、こちらは『精霊の祝福』とは関係なく起動した。目の前にある壁掛けモニターが光を発する。これで『実験体1号』のある部屋の扉が開くはずだ。
一応モニターの表示を確認すると、『実験体0号 休眠状態 実験体1号 稼働状態』という文字。
「実験体0号、だと?」
ゲームでは存在しなかった『実験体』である。
もしや『精霊の祝福』を使って遺跡に入ったことで、ゲームでは表に出なかった要素が現れたということだろうか。いずれにしても古代兵器が2体いるというのは面倒な話だ。
俺が知っているのは『実験体1号』への対処だけで、『実験体0号』については完全に未知である。同じやり方で対処できるならいいが、そうでなかった場合が怖い。俺の中ボスパワー+『神速』でなんとかなるならいいが、大体『0号』なんてナンバリング、強キャラの匂いしかしない。
「どうなさったのですかお父様」
「どうやら古代兵器は2体存在するようだ。1体は稼働状態にあり、1体は休眠状態にある。そして私が対処法を知っているのは稼働状態にある1体のほうのみだ」
「ということは、休眠状態にある方はそのままにしておいた方がいいということでしょうか?」
「そうするしかあるまいな」
と答えたが、正直この会話自体完全なフラグにしかなっていない気がする。
間違いなく『実験体0号』が勝手に起動するパターンだよなあ、これ。




