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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第6章 悪役公爵マークスチュアート、遺跡にて古代兵器と対峙す

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01 大聖堂にて

『転移魔法』を手に入れた俺は、色々と動き回って大森林攻略の準備を整えた。


 といっても必要そうな道具を揃えさせて全部マジックバッグに詰めたり、ヴァミリオラを領地に一度送って妹アミュエリザと共に準備を整えさせたり、聖女オルティアナをやはり一度王都に戻したり、王都を出てブラウモント領に向かっているアラムンドやジラルナ達の様子を見たりとかしただけだが。


 ともかくとして大森林へ行く準備は整い、いよいよ出発という時になった。


 まずはフォルシーナ、ミアール、クーラリア、マリアンロッテの4人を連れて王都の大聖堂へ。ちなみに当然ながらマリアンロッテは変装をさせてある。


 オルティアナに指定されたのは教皇の執務室で、そこに全員で転移する。


「おう、本当に『転移魔法』などというものが存在したとは。神の御許みもとに行くのにいい土産話ができそうだ」


「教皇猊下、そういう不謹慎なお話はおやめください」


 急に現れたはずの俺たちの姿を見て、教皇ハルゲントゥスと聖女オルティアナがそんなやりとりをしている。


 ファルシーナたちは教皇に挨拶をした後、オルティアナとともに別室に行ってしまった。大森林探索に持っていく装備の相談があるらしい。男には見せられないものの話だそうなのでそちらは任せるしかない。自然と俺は教皇と話をすることになった。


「急なお話で申し訳ありませぬ。多少危険な探索にはなると思いますが、聖女は必ずお守りいたしましょう」


「なんの、聖女自ら行きたいといっているのだ。自身の身は自身で守ろう。ああ見えて拙僧が舌を巻くほど強いぞ、オルティアナは」


 ニヤッと笑うといたずらっ子のような表情になる教皇。白い頭髪と髭はともかく、冒険者もかくやというガッチリした体格には、白の高級ローブがまったく似合っていない。


「それは頼もしいですな。聖女様の光属性魔法にも頼ることは多いでしょうから、同行していただくことはありがたく思っておりますよ」


「どうせ公のことだ、わかっていると思うが、聖女は隠しごとのできぬ性分だ。あまりいじめてはくれるなよ?」


 という教皇の言葉は、彼女が今回の件で情報収集役を兼ねていることを暗に伝えているのだろう。情報収集を指示している本人がそれを言うのはどうかと思うのだが。


 このあたりは織り込み済みなので俺もあいまいにうなずいておく。別に探られても痛くない腹だ。


「それと公爵、この国は確かに危うい。王家もゲントロノフ公も先日の魔族襲来以降動きが不穏だ。先の戦で傷ついた民に手を差し伸べぬどころか、再び臨時の税を取り立てるなどと通達をしておる。今思うと魔族襲来前の動きもおかしなところが多かった」


「さようでございましょうな」


「巡礼に行っていた聖女も、本来なら魔族襲来の前に王都に着いていたはずなのだ。ところが話によると、手前の村に王家の使いが来て、なんのかんのと理由をつけられて足止めを食っていたらしい」


「いかにも怪しい話ですな。しかしもしそれが意図的なものとして、目的は奈辺なへんにあるのでしょうか」


「聖女がおらねば大聖堂の守りは薄くなる。あるいは……」


「教皇猊下が魔族に……ということを狙った可能性もあるわけですな。口にするのもはばかられますが、万一教皇猊下の御身になにかあったとき、代わりとなる方はどなたなのです?」


「ブルファクト枢機卿が最有力であろうな。ゲントロノフ公爵領の教会のトップ、と言えば話が早かろう?」


「たしかに」


 まったく、叩けば叩くほどホコリが出てくるとはこのことか。


 しかし例の裁判関係は雑に感じたが、教会にまで手を伸ばしているというのは驚きだ。ここインテクルース王国では、王家と国教ラファルフィヌス教の教会は一定の距離を保っている。これは過去に、互いに干渉しないという協約を水面下で結んでいるからなのだが、もし今の話が本当ならこれは重大な協約違反ということになる。今回の一件で王都全体をロークス・ゲントロノフ派で完全に固めようとしたということなのだろうが、思ったより徹底したやりかたで驚くばかりだ。


「ま、今のところはあくまで可能性の話でしかないがな。公爵に知っておいてもらいたいのは、教会は、民の安寧をはかるために国の安定を最優先に考えておるということよ。そして我らは王家の血統には頓着せん。教義としてもそこは一切言及していないのでな」


「……心得ておきましょう」


 いやいや、教皇猊下貴方もか。


 なんでそう皆して俺に簒奪ムーブを勧めてくるんだろう。そもそもマークスチュアートは教皇と仲が良かったとかそういうことはなかったと思うんだが。やはり『エクストラポーション』効果か? だとしたらとんだチートアイテムだ。いや、俺にとっては呪いのアイテムかもしれない。


 ともあれ教皇との話が一段落したところで、女性陣が別室から戻ってきた。フォルシーナとマリアンロッテ、そしてオルティアナが妙にニコニコしていて、狐獣人のクーラリアがニヤニヤしているのがちょっと気になるが、いったいなんの話をしていたのだろうか。まあ女子の秘密のようなので聞く気はないが。


 俺は教皇に別れと出発の挨拶を告げ、聖女オルティアナを入れて5人になった女性陣を連れ、ローテローザ公爵領へと転移した。




 ローテローザ公爵領での転移先は、公爵邸の応接の間とした。


 そこではヴァミリオラと、その妹にしてゲームのメインヒロイン、真紅のポニーテールにぱっつん姫カットの少女騎士アミュエリザが準備完了状態で待っていた。


 部屋に現れた俺たちの姿を見て、最初アミュエリザは目が飛び出そうなほどの顔で驚いていた。しばらくしてからハッと正気を取り戻し、次いですごい勢いで俺の前にやってきた。


「やはり『蒼月の魔剣士』ブラウモント公爵様は途方もないお力をお持ちなのですね! この度、大森林探索にご一緒させていただけるのをとても嬉しく思います! きっとお役に立ちますのでよろしくお願いいたします!」


 ほっとくと抱き着いてきそうな勢いなので、俺は慌ててその肩をおさえて落ち着かせた。


 ちなみに肩に触れたとたんヴァミリオラから強烈な殺気がほとばしったのは言うまでもない。さらに言えば背後から氷のような冷気が漂ってきた気もするが、確認していないので真偽不明である。


「落ち着かれよアミュエリザ嬢。此度の探索では貴女の力は必ず必要になる。それとともに自らの力を伸ばすよい機会とするがいい。期待をしているぞ」


「はい! 必ずや公爵様に気に入っていただけるようにいたします!」


「ああ……いや、姉上にこそ気に入っていただけるようにしたまえ」


 見るとヴァミリオラの全身から陽炎のような闘気が立ち上っていて、背後からの冷気もさらに圧を増してくる。


 これ以上アミュエリザにしゃべらせると危険なので、俺は話題を変えることにした。

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