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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第5章 悪役公爵マークスチュアート、王都で暗躍す

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21 ディメンションハンドラー

 地下はゲーム通り石造りの迷宮ダンジョンになっていた。


 壁や天井の一部が発光していて、行動するのに支障はない。どうやら迷宮の通路もゲーム通りなので、俺は迷わず奥へと進んでいく。


 曲がり角から現れるモンスターは、土や石でできたゴーレムばかりだ。ただし形は人型だけでなく、四足歩行の獣型や六本足の虫型など様々である。石礫つぶてなどを飛ばしてくるタイプもいるが、基本的に俺の相手にはならない。接近すれば剣で斬り、遠距離戦を仕掛けてくるなら魔法の槍で貫いてやる。


「宝箱は……やはりないんだな」


 ゲームでは通路に宝箱が設置されていたが、さすがにリアルだとそれはなかった。だが代わりに、本来宝箱がある場所に武器や防具などがそのまま落ちていた。しかもほぼ新品状態だ。そういえばダンジョンの石の壁なども新品に見える。もしかしたら迷宮が開くまでは時間が停止していたとか、そんな感じなのかもしれない。


 ともあれダンジョン自体ゲーム的には後半に入るものなので、落ちている武具はそれなりに高級品だった。俺はそれらをすべてマジックバッグに詰めながら先へと進んでいく。


 トラップやギミック要素もあるダンジョンだが、すべてカラクリはわかっているので詰まるところはない。ラッキーなことにザコモンスターのゴーレムが何個か『ゴーレム核』をドロップした。これで領地の守りがますます盤石になっていく。


 ダンジョンを徘徊すること3時間ほどで最下層の地下7階までたどりついた。ゲームでは初回結構苦戦したダンジョンなんだが、知識チート+中ボスチートは恐ろしい。


 目の前には一本道の通路がある。それを進んでいくと、地下とは思えないほどの広い空間に出た。ダンジョンボスの間である。


 その空間の中央に、黒いローブをまとった、身長3メートルほどの骸骨が立っていた。両手にそれぞれ長大な曲刀を持っている。二刀流の骸骨暗殺者型ボス、名は『ディメンションハンドラー』である。


『……我が力を欲するか……』


 ディメンションハンドラーは骸骨の眼窩に青い光を灯らせながら、くらい声で語り掛けてきた。あ~そういえばこんなやりとりがあったな。一応は重要イベントだからなあ。


「お前の力をもらい受けにきた」


『……ならば己が我が力を得るに足ると証明せよ……』


「よかろう、ゆくぞ」


 両手の曲刀を構えるディメンションハンドラーに向かって、風魔法『ウインドパイル』を射出。


 しかし風の杭が命中する直前、ディメンションハンドラーの足元に魔法陣が輝き、暗殺者骸骨の姿が消える。


 俺は『縮地』でその場を飛びのく。一瞬前まで俺の首があったあたりを、剣呑な銀の光が薙いでいく。


 俺の背後に現れていたディメンションハンドラーは、振り切った曲刀を構え直しながら再び口を開いた。


『……我が必殺の刃、よくぞかわした……』


「ふ、この程度造作もない」


『……だが我を倒さねば力は得られぬ。見事我の首を獲ってみせよ……』


「もとよりそのつもりだ」


 ディメンションハンドラーが曲刀を振り上げながら、滑るように突っ込んでくる。俺が放った魔法を刃で弾きつつ、走る銀光が狙うのは俺の首。剣で受けようとするが、その瞬間『ディメンションハンドラー』の姿が消える。俺は再び『縮地』で飛びのき、上空からの一撃を回避する。


 着地を狙って魔法を放つが、ディメンションハンドラーの姿は空中で再び消える。背後に微かな魔力。俺は風圧魔法『ブラスト』をジェット噴射代わりに使って空中へ飛び上がる。俺の背中を狙って現れたディメンションハンドラー、その頭蓋骨に向かって剣を振るが、さすがにそれは曲刀で防がれた。


「思ったより厄介だな」


 俺はディメンションハンドラーから距離を取りつつ、リアル世界での『転移魔法』の面倒臭さを再確認する。


 そう、このディメンションハンドラーは、この世界では神話伝承の魔法とされている『転移魔法』の使い手である。そしてもちろんコイツを倒して得られるのは、その『転移魔法』そのものだ。ゲーム世界じゃただの便利移動魔法でしかないが、リアル世界ではパラダイムシフトすらうながしかねない驚異の魔法である。


 俺が魔法を撃つ。ディメンションハンドラーが転移する。俺が回避しつつ反撃する。ディメンションハンドラーが防御する、もしくは再転移する。


 そんなやりとりを何回か繰り返すと、ディメンションハンドラーの大体の能力がわかってきた。どうやらゲームとほとんど同じで、転移魔法こそ厄介だが剣の腕はそこまでではない。無論その3メートルという身長とあわせれば並の戦士や冒険者では手も足も出ないだろうが、『蒼月の魔剣士(笑)』にとっては取るに足りないものだ。


「そろそろ終わりにしようか、ディメンションハンドラー」


『……我が名を知る者がいようとはな……』


 ディメンションハンドラーが曲刀を縦横無尽に振り回しながら突進してくる。俺はその刃の嵐をすべて剣で弾き返し、致命となる一撃を首へと走らせる。ミスリルの刃が骨に触れる瞬間、ディメンションハンドラーの姿が消える。


蓋天がいてん冥王剣めいおうけん


 ディメンションハンドラーの次の攻撃をあえて回避せず、俺はその場で必殺技を放った。これも中ボスお約束の全周囲無差別攻撃である。


 俺の背後に現れた『ディメンションハンドラー』は、その攻撃を浴びて動きを止めた。ザコなら瞬殺の技だが、さすが相手もイベント中ボス。しかしその隙は致命的だ。


無明むみょう冥王剣めいおうけん


 一条の光となった俺は、すれ違いざまに『ディメンションハンドラー』の首を切断する。


 振り返ると、地に落ちた頭蓋骨を残して、『ディメンションハンドラー』は光の粒子に変っていくところだった。


『……見事なり。我が力を持ってゆくがよい……』


『ディメンションハンドラー』の頭蓋骨、その頭頂部から光の球が現れる。手を伸ばすと、その光は俺の手のひらに吸い込まれていった。流れ込んでくるのは『転移魔法』の知識。どうやら目的は無事達せられたようだ。


「長年の務めご苦労。お前の伝えしわざは確かに受け取った。お前の主の願いにはたがえぬよう使うゆえ、安心して眠るがいい」


『……ようやくこの務めを終えることができる。そして我が主にも顔向けできる。感謝するぞ強き者よ……』


 眼窩から光が失われ、頭蓋骨も光の粒子に還っていく。


 ディメンションハンドラーは、『転移魔法』を作り出した大魔導師が、その力を伝える相手を選別するために作り出したモンスターだった。ちなみにゲームだと、ここでその大魔導師と『ディメンションハンドラー』のやりとりの回想シーンが入ったりする。


「さてと、『転移魔法』の能力を検証してから領に帰るか」


 俺は早速『転移魔法』を発動し、このダンジョンから脱出をするのだった。

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