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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第5章 悪役公爵マークスチュアート、王都で暗躍す

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10 王城を後にして

 王城を後にした俺とヴァミリオラは、それぞれ王都にある自分の別宅へと向かった。


 別宅に行くと、やはり迎えに来た使用人に驚かれてしまったが、こちらにも俺が戦死したという噂が届いていたようだ。


 使用人をねぎらいつつ、執務室でダークエルフ忍者のアラムンドを呼ぶ。基本的に彼女は俺について回ることになっている。


「アラムンド、私についての噂だが、どういうことかわかったか?」


「は。噂が広まり始めたのはここ3日のことのようです。噂の出所は王室出入りの商人、どうやら王城内では、お館様の領地は魔族に蹂躙じゅうりんされたことになっていたようです」


「こちらの移動中に広まったか。意図的なものか?」


「そこまでは。ただ、公爵領に比べて王都が無事であったと喧伝けんでんすることによって新王の権威を高めようとすることはできるかと思います」


「なるほど。くだんの貴族たちを処刑するのにも都合が良いしな。問題はそのような虚偽の情報がなぜ新王側に届いたかだ」


「2日前の時点では知りようがない情報のはずです。単なる予測で誰かがしらせたのか……」


「予測もなにも、王家の周りには公爵領が狙われると考えたものなどおるまい。それをさせた者以外にはな」


「……それはどのような意味でしょうか?」


 非常にわかりづらいが、アラムンドの疑いの表情は本気のものに見えた。


 ということは、秘書官ラエルザの件はアラムンドも知らなかったようだ。といってもそれは別段おかしなことではない。彼女は俺を裏切るキャラではあるが、別に魔族と直接つながっているわけではない。


「言葉通りの意味だ。それより来客のようだ。あの馬車はローテローザ公か」


 窓の外を見ると、丁度玄関前にバラの紋章をつけた馬車が停まったところだった。


 俺はアラムンドに次の指示を与え、ヴァミリオラを迎えに出る。


「ごきげんようブラウモント公。少しお邪魔させていただいてよろしいかしら」


「無論だ」


 俺自ら応接の間に案内をして、向かい合わせにソファに座る。


「今日はよく王都まで来てくれた。かなり無理な日程だったと思うが」


「ふふ、あんな手紙をもらったら急ぎ来ないわけにはいかないわ。しかし本当に奇妙な状況になったものね。王都が陥落するまでは貴方の言ったとおりだったけれど」


「さすがに新王とゲントロノフ公がここまで迅速に奪還をするとは思わなかった。しかし公が王の即位反対を私より先に明言したのは驚いた。ずいぶんと私は信用してもらっているのだな」


「多少はね。もっともそれ以前に、あんな王の即位に反対しないなんて、ローテローザ家の汚点にしかならないもの。あれを王都認めたなんて勘違いされるのもしゃくに障るし、賛成したらアミュエリザを寄越せと言われるのも目に見えているわ」


 ロークスはヴァミリオラにも色目を使っていたみたいだからな。勘違いさせないというのも美人にとっては必要なことなのだろう。妹アミュエリザについては姉バカ極まれりだが、これについては俺も同じだからなにも言えない。


「私も似たようなものだな。あそこで反対をしないのであれば、三大公としてかなえの軽重を問われるというものだ。特に強引に王城内の粛清しゅくせいを行うというのは看過できん」


「本当ね。罪を疑われているのは全員大森林開拓の反対派だもの。あからさますぎて笑ってしまうわ」


「公のおかげで彼らの即時処刑は避けられた。といってもまだ安心はできぬがな」


「捕まっている大臣たちが罪の重さに耐えられずひっそりと自決した。そんな話を作ることも可能だものね」


 そう、実はそれがロークスたちがとれる次の策だ。


 捕まえている貴族たちを暗殺し、罪を認めて自殺したと発表する。ゲームでも簒奪者マークスチュアートが同じことをやろうとしていたことである。


 ただ今回、王城に行って事態が少し変ってしまった。魔王軍四至将(しししょう)ミルラエルザの存在だ。


「暗殺については私が対処をしておこう。ときにローテ―ローザ公はラファルフィヌス教会と仲が良かったと記憶しているが、どうだ?」


「え? ええそうね。ロヴァリエの病気のこともあって寄付も多めにしているし、今代の聖女とは昔からの友人だから仲はいいわ。それがなにか?」


「裁判の時までに教会から『破邪の鐘』を借りてきてもらいたいのだ」


 俺の依頼に、ヴァミリオラは目を細め、わずかに身を乗り出してきた。


「『破邪の鐘』? 理由を聞いてもいいかしら?」


「うむ。実はな――」




 一日明けて翌日、昼は王城に行くも特になにもなく終わった。


 一応ロークスには再度忠言をしておいたが、とりつく島もないのは変わらなかった。彼がまだ14歳であることを考えると、あの人間性をすべて彼自身の責任に帰するのは抵抗がある。ただ王族である以上、そういった甘えは許されないという考えもマークスチュアートとしてはもちろんある。このあたりは前世の記憶があると少し悩むとことろではあった。


 そしてその日の夜、俺は王都の北にある、城壁と一体化した砦のような建物の前に来ていた。


 そこは見た目通り、有事には砦のような役割を果たす建物であるが、平時には『訳あり』の人間、つまり罪を犯した貴族が収監される場所でもあった。


 もちろん三大公とはいえ、夜にそんな場所を訪れることはあり得ない。なのでもとAランク冒険者として身につけた『隠密』スキルを駆使して忍び込む。


 向かうのは地下。そこに貴族を『収監』する部屋があるからだ。


 地下への入口などにも衛兵がいたが、なぜか床に横になって眠っていた。俺は横を素通りし、地下へと下りていく。


 地下には廊下があり、左右に扉が等間隔で4つづつ並んでいる。扉に開いた小さな窓から微かに光が漏れているのがわかる。例の冤罪を被せられた大臣たちが入れられているのである。


「問題はないか」


 と問うと、廊下の奥にいたダークエルフ忍者のアラムンドが振り返った。


「今しがた暗殺者をとらえたところです。かなりの手練れでした」


 見ると、アラムンドの足元に黒づくめの人間が3人、ぐったりとして転がっていた。


「うむ、よくやった。しかし思ったより動きが早かったな」


「お館様のお考え通りでした。ところでこの者たちはいかがいたしましょうか?」


「ふむ……」


 俺は暗殺者のところに近づいていって、一人の頭巾をはぐ。


 現れたのは褐色肌で、長い耳を持った、10代後半に見える美しい女だった。それを見てアラムンドの目が見開かれる。まあ、こんなところで同族を見ればそれは驚くだろうな。


 俺はそのまま全員の頭巾を取るが、全員がダークエルフの女だった。しかもその3人の顔には全員見覚えがある。なぜならゲームにも出てきた脇役の暗殺者であったからだ。なぜか顔グラがきちんとあって、薄い本要員として微妙に人気があったり……。


「お館様、その、どうされるおつもりでしょうか?」


 アラムンドの声は妙に低かった。薄い本を思い出していたのがバレたわけではなく、この3人組が彼女の同族で、なおかつ知り合いだからなのはゲーム知識から明らかである。


 しかし実は、これは俺としても想定外だった。暗殺者が普通の人間だったらこのまま表に引きずり出してもいいのだが、相手がこのダークエルフ暗殺者3人娘となると扱いが難しい。なにしろアラムンドの同族だし、それに実はゲームのシナリオ、というかこの世界の種族のあり方にも関わってくる話になるからだ。


「本来なら明るみにだして裁かれるべきだろうが、ここにダークエルフがいて、しかも王国貴族を暗殺しようとしたというのはかなり問題があるな。そうであろうアラムンド?」


「は……、はい」


「下手をすると種族間の軋轢あつれきが再燃しかねん。まったく面倒な連中を使ってくれたものだ」


「それでは……」


「とりあえず我が館へと連れていく。そこで尋問をしたのち処遇は考えよう」


「ははっ」


 その怜悧(れいり)な横顔に、ホッとした表情を隠しきれていないアラムンド。


 俺が二人を担ぎ上げ、アラムンドが一人を背負い、帰りがけに「侵入者だ! 地下に向かっているぞ!」と叫んでやった。すぐに建物内がハチの巣をつついたような騒ぎになったので、これでこれ以上暗殺などできないだろう。俺たちはその場を後にしたのだった。

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― 新着の感想 ―
状況が刻一刻と混沌と化してますな
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