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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
15章 国王マークスチュアート、魔族領へ行く

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05 アラムンドを説得する

 深夜の寝室。


 寝ている俺に刃を突き立てようとしたアラムンドだが、直前で思いとどまり、その場を去ろうとした。


 しかし、その時アラムンドが残した言葉が、バッドエンドに向かうルート――アラムンドが命を散らすルート――のそれと気づいた俺は、


「待て、アラムンド」


 と声をかけ、ベッドの上で身を起こした。


 アラムンドはビクッと身を震わせ立ち止まった。


「起きて……いらっしゃったのですか?」


「気配には敏感でな。さて、このままでは話もできぬ。とりあえずこちらを向け」


「私には、お館様に向ける顔がありません。今、私がなにをしようとしていたか、それはお分かりでしょう」


「お前が思いとどまったのはわかっている。そしてお前がずっと私を裏切っていたのもまたわかっている。その上で、お前とはきちんと話をしたい」


 俺がそう言うと、アラムンドはゆっくりをこちらに身体を向けた。


 闇夜の中でその顔はよく見えないが、いつものマスクをしていないのは声でわかっている。


「私が裏切っていたこと、そして今お館様を殺そうとしたこと。それを知ってなお話をするというのですか?」


「そうだ。裏切ってはいたが、それとは別に私のために尽くしてくれたのもまた事実であろう。それに免じて事情を聞こうというのだ」


「それは……。事情を話したとて、私がしたことが許されるわけではありません」


「許すかどうかは私が決めることだ。お前がどれほどダークエルフの救済を願っていかはよく知っている。それを台無しにしてまでこのような行動にでるには、相応の理由があろう。違うか?」


 まあ実際、アラムンドに命令をした奴が誰なのかまで知ってはいるんだけどね。


 ただ、ここでそれを指摘していいのかどうか、それはさすがに判断が付かない。


 アラムンドはしばらく黙っていたが、顔を横に向け、ぽつぽつと言葉を漏らし始めた。


「……私にお館様を裏切るよう指示をしたのは、私の母なのです」


「ほう。母ということはダークエルフなのだろう? なぜダークエルフの土地を安堵しようとする私を殺す指示など出すのだろうか」


「それは……私にもわからないのです。母ももとは私と同じく、ダークエルフの行く先を案じていたはずなのです。ですがそれがいつからか妙な指示をするようになり……。ただ、それにずっと逆らわず、唯々《いい》諾々《だくだく》と従っていた私も悪いのです」


「ダークエルフは親子の情も厚いと聞いている。もとは同じ志を持っていたというなら、母君に逆らうのは難しかろう」


 俺が理解を示すようなことを言うと、アラムンドは静かに首を横に振った。


「それでも私がお館様を裏切り、そして余計ないさかいが起こるよう仕向けたのは間違いのないことです。許されることではありません」


「先のミルザム、ベランゴル両国の話をしているのなら、あれは先代王妃を前ゲントロノフ公が逃がした時点で起こるべくして起こったことだ。私を裏切っていたことに関してはその代償は支払わせるが、その内容は私が決めることであってお前に決定権はない」


「……それは……そうかもしれませんが……。しかし……」


「なにか気になることがあるのかね」


「……私は母を止めなければならないのです。いや、本当はもっと前にそうするべきでした。今、お館様に刃を向けたことでそれに気付いたのです。ですから――」


「行かせてほしいと、そう言うつもりか」


「はい……」


 う~ん、まあゲームの設定通りなら、アラムンドは確かにここで母の元に行かないといけないんだよな。そうでないと、この世界にとって致命的なことが起きる可能性があるからだ。


 アラムンドにはそれを止めてもらわなければならないのだが、だからといって彼女自身が自分の命を軽んじるのも俺個人の感情としては困るのだ。


 俺はそこでベッドから出て、アラムンドのところまで歩いていった。


 アラムンドは動くことはせずに、その場でじっとしたままである。まあ『神速チート』持ちの俺からは、ゲームで全キャラトップの素早さステータス持ちの彼女であっても逃げられないのだが。


 俺はアラムンドの両肩に手を置いて、そして正面から彼女の瞳を見据えた。


「ならば、行くことは止めはせぬ。だが、必ず私の元に帰ってくると約束せよ。それができぬのならお前を行かせることはできぬ」


「そ、それは……」


「できぬのか?」


「い、いえ、約束をすることはできます。ただ、なぜお館様はそこまで私を……」


 暗くて表情はやはりよく見えなかったが、アラムンドはかなり動揺しているようだった。


 まあ腹黒国王に迫られたらそりゃ困るよね。でもここはキチンと言っておかないとならない。なにしろアラムンドの命にも、ひいては世界の命運にもかかわることだからな。


「決まっている。お前は私にとって大切な存在なのだ。私にとってお前の代わりはおらぬ。お前を失うことはできぬのだ。わかるな?」


 だって超強い凄腕密偵とか、ゲームシナリオが終わっても絶対必要な人材だからなあ。だからこそアラムンドにはすでに『エクストラポーション(精霊水バージョン)』を複数渡してたりするし。


 そういった積み重ねが功を奏したのか、アラムンドはしばらく固まってから、目をつぶって静かにうなずいた。


「……ありがとう、ございます。お館様のお気持ち、とても嬉しく思います。事が終わったら、必ずお館様の元へ戻るとお約束いたします」


「うむ。それと、お前は一人ではない。自らの手に負えぬことがあれば、迷わず私を頼れ。それも約束できるな?」


「は、はい。私の手に負えぬことがあれば、必ずお館様を頼ります。お約束します」


「ならよい。行け」


 俺が手をはなすと、アラムンドはその場に片膝をついた。


「ありがとうございます。行ってまいります」


 そしてシュッという音とともに姿を消した。


 俺はアラムンドの気配が遠ざかっていったのを確認して、ベッドの端に腰かけた。


「とりあえずこれでなんとかなってくれるといいんだが。まあここはダークエルフの約束を守る意志の強さに賭けるしかないな」


 ここはただ祈ることしかできないのが残念だが、しかしこれで魔族領へと向かう準備がようやくすべて整ったことになる。


 魔族領はゲームでは何度となく訪れた土地だが、今世では初めて行く場所だ。マークスチュアート面すらも心が踊っているくらいなので、俺自身かなり楽しみではある。


 まあその先の魔王とのやり取りがどうなるか、ゲーム通りに行くかどうかは未知数ではあるが……今は明日に備えて寝るとしよう。

こちら「悪役公爵」の書籍が3月5日発売となります。

手元にはすでに現物があるのですが、思ったより分厚くて驚いております(笑)

装丁もきれいで、へいろー様の緻密なイラストがとても目をひく一冊です。

是非よろしくお願いいたします。

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