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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第2章 悪役公爵マークスチュアート、中ボスルート回避のために全力を尽くす

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03 マナビースト

「お父様、お父様はいらっしゃいますか!?」


 翌日昼過ぎ、執務室で書類を整理していた俺のところにフォルシーナが血相を変え、銀髪を振り乱すようにしてやってきた。もちろん使用人のミアールも同伴である。


「騒がしいぞフォルシーナ。貴族が取り乱すなどはしたないと知れ」


「申し訳ありませんお父様。しかし至急お父様にお聞きしたいことがございます」


 フォルシーナが執務机の前まで来て、姿勢を正しつつ俺の顔を正面から見据えてくる。その顔はかすかに『氷の令嬢』モードになりそうな雰囲気がある。


「なにを聞きたい」


「錬金術研究棟の地下に囚われている獣人たちのことです」


「ふむ……アラムンド」


「はっ!」


 何の前触れもなく現れるダークエルフ美女。


 フォルシーナはその姿に目を丸くする。


「お父様、この方は!?」


「我が懐刀(ふところがたな)のアラムンドだ。裏方の仕事をしてもらっている」


「裏方……」


 絶句するフォルシーナを無視して、俺はアラムンドを睨みつける。


「さてアラムンド、なぜフォルシーナが地下のことを知っている?」


「いえ……それは私にもわかりかねます」


 かすかに動揺を見せるアラムンド。まあそりゃそうだよな。彼女の落ち度ではないのだから。


「ふむ。ではフォルシーナよ、なぜ地下のことを知った?」


「それは……そのようなことはどうでもいいではありませんか! それより説明をお願いいたしますお父様!」


 一瞬言葉に詰まるも、フォルシーナは氷のように冷えた瞳を向けてくる。


「どうでもよくはないのだが、今のお前の状態ではまともに話をするのは難しいか。ならばお前の誤解を解くしかあるまい」


「誤解というのは?」


「ただそれには準備が必要だ。実はこれからお前をそれに伴わせるつもりだった。フォルシーナ、森を歩ける格好をしてきなさい。例の杖も忘れずにな。これより『不帰(かえらず)の森』に向かう」


「お父様、なにを……」


「言葉より行動だ。忘れたか?」


「わかりました。私はお父様を信じます」


 フォルシーナそう言って、ミアールとともに執務室を出ていった。


 残ったのは俺とアラムンドだ。


「困ったことになったが、娘の信用は失えんな。アラムンド、お前の力も借りるぞ。森に行く準備をせよ」


「は……は、かしこまりました」


 シュッという効果音とともに消えるダークエルフ美女。


 まだ戸惑っていたようなのは仕方ないだろう。これは想定外のアクシデントなのだ。アラムンドにとっては、だが。




 家宰のミルダートに森に行く旨を伝え、将軍ドルトンにまた4人の兵を借り、俺とフォルシーナ、そしてアラムンドは『不帰の森』へと向かった。


 入口に兵士1人を連絡係として残し、6人で森に入る。


 フォルシーナは初めての森で辛いかもしれないが、歩くのに苦にはならない程度にルートができているので大丈夫のはずだ。


 しばらく歩くとザコ『サーベルキラードッグ』が2匹現れる。


「フォルシーナ、早速実戦だ。私があの犬を吹き飛ばして倒す。そこに『アイスジャベリン』を打ち込め。できるな?」


「は、はいお父様! できます!」


 いきなり連れてこられた割には気丈に反応するフォルシーナ。さすがメインヒロインの一人といったところか。


 グワォウッ!


 犬歯が以上に発達した巨犬が迫る。


 俺は2匹ともミスリルの剣の腹で殴り飛ばして吹き飛ばす。


「撃てフォルシーナ」


「は、はいっ! 『アイスジャベリン』!」


 フォルシーナが手にした『精霊樹の杖』の杖頭(じょうとう)から氷の槍が射出され、地面で腹を見せている『サーベルキラードッグ』の脇腹を貫いた。


 一発目で命中させるとは思った以上に素質があるようだ。だがさすがに中盤のザコ、推定レベル1の魔導師の魔法1発では倒せない。


「フォルシーナ、倒すまで休まず撃て」


「はいお父様! 『アイスジャベリン』!」


 2発目、3発目が命中すると、ようやく一匹の『サーベルキラードッグ』が光の粒子になって消えていった。


 残り1体も同じようにフォルシーナが倒す。しかしそこで魔力が切れたようだ。俺は腰のポーチから魔力を回復させる『マジックポーション』の小瓶を取り出し、フォルシーナに渡す。


「さすが我が娘、初めてにしては上出来だ。これを飲みなさい。魔力が戻るだろう」


「ありがとうございます。お父様からいただいたこの『精霊樹の杖』のおかげです」


 そう言いながらフォルシーナは『マジックポーション』を飲む。眉を寄せたのは苦いからだろう。


 さらに奥に進む。


 次は『サーベルキラードッグ』が4匹現れた。


「アラムンド、2匹は任せる」


「かしこまりました」


 返事と同時にアラムンドは姿を消し、次の瞬間には2匹の『サーベルキラードッグ』の首を、2本の短刀で斬り落としている。凄まじい手練れの技、アラムンドは戦闘においても非常に高レベルなキャラクターである。


「すごい……ですね」


「彼女は非常に有能だ。戦闘においてもな」


「お父様はあの方のことを信用なさっているのですね」


「ああ、懐刀と言ったのは伊達では――」


 とそこまで言いかけて、俺はフォルシーナの目が『氷の令嬢』状態になっているのに気づいた。まさかフォルシーナはアラムンドが裏切りキャラだと気付いてるというのか?


 だがそれ以上の思考をする暇はなかった。『サーベルキラードッグ』が目の前に迫っていたからだ。


 俺は2匹を先ほどと同じように吹き飛ばし、フォルシーナに止めをささせる。


 先ほどより氷の槍の威力が上がっている気がする。恐らく『サーベルキラードッグ』を倒してその力を吸収したのだろう。ゲーム的に言う『レベルアップ』である。


 さらにその後、数回の戦闘を繰り返しながら森の奥へと向かった。休憩を取りながら2時間程進むと、前方にひときわ大きな木が見えてくる。そしてその大木の手前は、木の生えていない、ちょっとした広場になっていた。


「公爵様、この先は大型のモンスターが出るとの情報があります。ご注意を」


 護衛兵士の隊長ローランが警告を発する。


「そのモンスターが今回の目的だ。お前達も戦いには参加するように。これから戦ってもらうかもしれぬ相手だからな」


「はっ、了解しました」


 広場に入ると、どこからともなく叫び声が聞こえてきた。


 遠くから振動が伝わってきて急速に近づいてきたかと思うと、その振動の発生源が木々の間から現れた。


『マナビースト』、全高5メートル近いゴリラ型のモンスター。最大の特徴は腕が4本あることで、その腕で連続攻撃を繰り出してくる物理特化型の強力なモンスターだ。


 要するにここ『不帰の森』の中ボスの一体である。


「まずは私が一当たりする。指示をしたら攻撃に参加せよ。アラムンドは周囲の警戒に専念するように」


「はっ」


「わかりました、お父様」


「かしこまりました」


『マナビースト』が四本の腕で胸を叩き始める。戦闘開始の合図だ。


 俺は前に出て、剣を突き付けて『挑発』する。『マナビースト』の赤い目が俺に固定され、その巨体で体当たりを仕掛けてくる。


 俺は『縮地』スキルで高速移動を繰り返し、体当たりを避けながら、すれ違いざまに黒い毛皮を切り裂いていく。


 すると『マナビースト』は体当たりをやめ、四本の腕で殴りかかる攻撃に切り替えた。俺はそれを高速回避スキル『転身』で避けながら、「攻撃せよ」とフォルシーナたちに指示を出す。


 フォルシーナがありったけの魔力で『アイスジャベリン』を撃ちこむ。それが終わると、3人の兵士も次々と短槍で『マナビースト』を突き刺していく。全身が血に染まっていく巨獣。


 グオアアァッ!!


『マナビースト』が叫び、全身が淡く輝いた。危機になると発動する『マナオーバードライブ』という攻撃力上昇スキルだ。


「下がれ!」


 叫ぶと同時に、俺は『マナビースト』の懐に入り込む。


 周囲から放たれる4発のパンチ。その腕をすべて斬り落とし、


「散るがよい」


 無意識のうちに口から漏れる必殺技ボイスとともに、俺は攻撃範囲拡大スキル『烈波』と高威力単体攻撃スキル『一刀斬』を発動し、『マナビースト』を縦に真っ二つにした。

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