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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第10章 国王マークスチュアート、エルフの里を探訪す

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158/242

10 腕試し

『腕試し』の呼び出しがあったのは、20分ほど経ってからだった。


 伝えに来たのは族長の右腕のミュゼだ。


 俺が立ち上がるとフォルシーナたちもあわせて立ち上がった。足は崩していたので今度はしびれてはいなかったようだ。


「お父様なら勝つことは容易と思いますが、ご武運をお祈りいたします」


「うむ、まあすぐに終わる。問題はその後だ。ダンジョンのような場所に入ることになるゆえ、そのつもりでいてほしい」


「わかりました。お父様の神のごときお知恵は尽きることがありませんね」


「神と比するのもおこがましい程度のものだ」


 と親子で話をしながら、ミュゼの後をついて館の前の広場に出る。


 そこにはすでに数百人のエルフがいて、円形の広場の外周に立ち並んでいた。


 広場の中央に族長のゼファラと、そして娘のアルファラが立っている。


 ゼファラが手にしているのは短弓だが、腰にはククリと呼ばれるナタのような大型のナイフを下げている。エルフ族戦士の標準的な装備であり、これは娘のアルファラも同じである。


「来たな人族の王マークスチュアート。お前の力、見せてもらうぞ」


「よかろう」


 フォルシーナたちをその場にとどめ、俺だけが前に進み出る。


 後ろでクーラリアが「なんかアイツすっきりした顔してねえか?」とか言っていて吹き出しそうになる。なぜ気付くのか、獣人族の勘は恐ろしい。


「勝負はどのような形で行うのだろうか」


「我らエルフ族は弓と魔法に重きを置いている。その腕を競うのが我らのやり方だ」


「弓はさすがに貴殿には及ばぬかもしれぬが、魔法の腕には自信がある。両方を合わせた形であれば問題ない」


「安心せよ、その形で行う。勝負は簡単だ。あれを見よ」


 ゼファラがそう言うと、広場に集まっていたエルフのうち、通りをふさぐ者たちが左右に分かれた。


 その先は砂利を敷き詰めた通りが門の方までまっすぐに500メートルほど続いている。


 そしてその通りの一番向こう、城門出口の手前に、大きな岩が二つ置いてあるのが見える。500メートル向こうなのでもちろん米粒のようにしか見えないが、建物と比較をすると縦横3メートルくらいはありそうだ。


 恐らくは土魔法で作った岩だろうが、魔法が得意なエルフが作ったものとなれば、その頑丈さはあの『フォレストフォートレス』の甲羅より上だろう。


「あの岩を矢か魔法で射抜いて、より深く砕いた方が勝ちだ。わかるな?」


「うむ、理解した」


 俺は多少ホッとしつつうなずいた。どうやらここは原作ゲーム通りのようだ。


 マークスチュアートは武芸百般に通じている男だが、さすがに弓だけの勝負だとゼファラ相手は分が悪い。だが魔法ありなら問題なく勝てるだろう。


 俺が余裕のある態度を取ると、ゼファラがわずかに眉を寄せた。


「随分と余裕があるな。あの的に当てるだけでも簡単ではないぞ」


「それは承知している。その上で問題ないと判断した」


 眼鏡スチャッをしながら、ゼファラの横に立つ。


「ここから魔法を撃てばよいのだな?」


「そうだ。お前が先にやれ」


「そうさせてもらおう」


 これがマンガとかアニメならゼファラが先にやって俺がその上を行く、みたいな流れになるのだろうが、普通は挑戦者が先だよな。


 さてこの勝負、原作ゲームだと主人公は慣れない弓を使ってなんとかゼファラに食らいつく、みたいな展開になる。実際は「メーター上を左右に動く針をタイミングよく真ん中で止めろ」というミニゲームになったりするのだが、設定的に考えたら剣士である主人公が弓の腕で勝つのはおかしいんだよな。


 そんなことを思い出しつつ、俺は右手を前に出す。使うのは光属性上級魔法の『ライトオブジエンド』だ。

 

 手の先に魔力を集め、それを限界まで圧縮する。こういった魔力の扱いはマークスチュアートは得意中の得意である。実は『魔の源泉』スキルは魔力の操作技術まで向上させている。中ボス(チート)×『魔の源泉(チート)』の凶悪さはもはや語るまでもないだろう。


「『ライトオブジエンド』」


 魔法名を唱えると同時に、俺の手のひらから一条の光線、というにはあまりに太い光柱がほとばしり、一瞬で500メートル先の岩に突き刺さる。


 この距離だと魔法を当てるだけでも恐ろしく難しいのだが、狙撃の腕もマークスチュアートの芸のうちだ。


 光の柱に貫かれた岩は一瞬でそのほとんどが溶けるようにして消失し、地面の上にわずかにその残骸を残すのみとなった。


 後ろの方で「あれがお父様の本気の魔法。まだまだ私は及ばないのね」とか「ご主人様はマジおかしいぜ」とか「わかっていたけれど、魔法もあそこまで極めているなんて驚異的だわ」とか言っているのが聞こえる。


 まあそちらはともかく、問題はゼファラやアルファラ、そしてエルフ族たちの反応だ。


「これでどうかね?」


 俺が横を見ると、ゼファラが的である岩の方をじっと見たまま固まっていた。


 切れ長の目を見開いているのでかなり驚いているようだ。見るとアルファラも全く同じ反応をしていて、周囲のエルフ族も声を失っている。


「ではゼファラ殿の腕を見せていただこうか」


 声を掛けると、ゼファラはハッとなって俺の方に顔を向けた。


「なるほど大したものだ。すでにこの勝負は決しているが、我が腕も見せておこう」


 そう言うとゼファラは矢筒から矢を一本抜き、弓につがえると的の方に向かった。


 弓を引き絞るその姿は非常に美しく、見とれるほどのものである。矢にはすでに風属性魔法の力が付与されていて、鏃が薄く緑色の光を発している。


「『テンペストアロー』!」


 ゼファラが矢を放つと、矢は光の螺旋の軌跡を残しながらまっすぐに飛んでいき岩に命中、その岩の上部を三分の一ほどを破砕した。矢が重力を無視して飛んでいくのも、500メートル先の的に命中させるのも、その威力も規格外のわざである。


「見事だ。これならばワイバーンの強靭な皮も容易に貫けよう」


「それは嫌味か? お前の魔法の前では児戯に等しかろう」


「私は少し特別でな。比較せぬ方がよい」


「ふざけた男だ。だがその通りの腕はもつようだ。一番勝負はお前の勝ちを認めよう」


 ゼファラが勝敗を口にすると、周囲のエルフたちもようやくざわつき始めた。


 しかし俺が気になったのはそこではない。


「一番勝負とはどういうことだ?」


「む? ああ、われらエルフ族は武の腕だけでは相手を認めぬ。やはりその武にふさわしき美を兼ね備えてこその強者であるからな」


「美……だと?」


 いやなにそれ、初耳なんですけど。 

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― 新着の感想 ―
美w 醜かったら相手にもして貰えないんですね……w
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