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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第10章 国王マークスチュアート、エルフの里を探訪す

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06 モバイルフォートレス

『不帰の森』深部にて出現した巨大リクガメ型ボス『フォレストフォートレス』。


 フォルシーナたちの攻撃により追い詰められたように見えたが、そこで新たな動きがあった。


 といっても、それは単に頭を甲羅の中に引っ込めただけなのだが。


「あっ! このやろう!」


 クーラリアが引っ込んだ頭部を刀で突き刺そうとするが、そこはすでに蓋が閉まったような状態になっていて、刃は簡単に弾き返されてしまう。


「硬えなコイツ! こうなりゃこっちだ!」


 すぐに足の方に攻撃を始めるも、そちらもすぐに甲羅の中に入って手が出せなくなる。


 アミュエリザやミアールも甲羅の隙間などを狙って攻撃するが、ほとんど有効なダメージを与えられていない。


 結局フォレストフォートレスは頭や足すべてを甲羅の中に引っ込めて、完全な防御態勢に入ってしまった。


 アミュエリザがフォルシーナの方を振り返る。


「これでは手が出せない。フォルシーナ、魔法はどう?」


「やってみるわ。『アイスパイル』」


 何本もの氷の杭が甲羅に刺さるが、やはり表面で砕け散るのみだ。


 フォルシーナたちが手も足も出なくなったところで、『フォレストフォートレス』の巨体の下から地響きのような音が響いてきた。


 見ると巨大な甲羅が、どういう原理かゆっくりと水平に回転を始めていた。その回転は次第に速度を上げていき、しかもゆっくりとこちらに移動を開始してくる。ゲームでは『グランドスピン』とかいう名前の技である。


 クーラリアが尻尾を太くしながら飛び下がる。


「ちょちょちょっ!? なんだよコイツ!?」


「これがこのモンスターの厄介なところなんだ。ダメージを受けるとこの回転攻撃が来る。甲羅が硬すぎて手もでない。唯一の手段は火属性魔法を多く撃ち込んで蒸し焼きにするくらいだ。だが森だと火属性魔法もあまり多くは使えない」


 アルファラがそう答えつつ、俺の方をとがめるように見てくる。


 まあ俺が戦うと言ったからな。なんとかしろということだろう。


 さてこのボス、ゲームだとアルファラが言う通り、この状態になると火属性魔法が多少通じるくらいになる。ただ時間が経てば元の形態に戻るはずなんだが、アルファラの言い方だとリアルでは違うようだ。まあ普通に考えれば、わざわざ弱点をさらすようなモンスターもいないだろう。


「どうするの? 私の火属性魔法を試してみる?」


 ヴァミリオラがそう提案してくれるが、俺は首を横にふった。


「いや、公の魔法では森も無事では済むまい。ここは私がやろう」


 俺が『シグルドの聖剣』を抜いて前に出ると、フォルシーナやアミュエリザが期待のまなざしを向けてきた。


 本当は最後まで彼女たちに戦わせたかったのだが、アルファラには俺の力をもう一度しっかり見せておいたほうがいいだろう。今後のエルフ族の族長との交渉を有利に進めるためにも。


 フォレストフォートレスの回転はもはや手が出せないほどのスピードになっている。ただ移動そのものは人が歩く速度ほどしかない。とはいっても、その体当たりに巻き込まれたら一撃で致命傷になりかねない。


 俺はその小山のような巨体を前に、剣を構え、いくぶん芝居がかった動きで必殺技を放った。


「砕けよ、『無尽むじん冥王剣めいおいうけん』」


 俺が大上段から剣を一振りすると、無数の斬撃がフォレストフォートレスの巨体を駆け巡った。


 ガリガリという凄まじい大音声が響きわたり、甲羅の表面が次第にこそげ取られていき、破片が周囲に飛び散って消えていく。


 その後も『無尽冥王剣』を放つたびに甲羅は薄くなっていき、ついには全体がひびに覆われるまでに至る。俺が最後の一撃を放つと、その甲羅はビキッという音ともに割れて砕け散った。


 甲羅を破壊されたフォレストフォートレスは回転をやめ、四肢を投げ出した状態で身を地に伏した。すでに瀕死の状態である。


「ミアール、止めをさせ」


「は!? あ、はいお館様!」


 ミアールが頭部に向かって突きを繰り出す。その突きは螺旋の光をまとって、フォレストフォートレスの頭部に大穴を開けた。『刺突閃』という単体強攻撃スキルである。


 その一撃が止めとなり、フォレストフォートレスは光の粒子となって消えていった。


 残ったのはバレーボールほどもある魔石と、同じくらいの大きさの亀の甲羅の置物だった。




「信じられん。まさかフォレストフォートレスの甲羅を剣一本で砕いてしまうとは……」


「これがお父様の剣技よアルファラ。お父様はこの大陸一の剣士にして魔導師なの」


「待て、あの剣の腕を持つ上に魔法まで使うのか!?」


「ええ。そちらの腕も大陸一よ。最強の剣士にして最強の魔導師、最高の錬金術師にして最高の王、それがお父様なの」


「フォルシーナ、そのあたりにしておきなさい」


 胸を張って鼻息荒く暴走を始めたフォルシーナを抑えつつ、俺はフォレストフォートレスからドロップしたレアアイテム『モバイルフォートレス』を拾い上げた。見た目はただの亀の甲羅だが、非常に有能なアイテムである。


 そのレアドロップを引き当てた推定『神運』スキル持ちのミアールが、不思議そうな顔をした。


「お館様、こちらはどのような物なのでしょうか?」


「ミアールのおかげで珍しいものが手に入ったな。これの使い方はこれから見せよう。よし、今日はここで野営を行う」


 俺はそう宣言すると、広場の真ん中に『モバイルフォートレス』を置いた。魔力を流し込むと、その亀の甲羅はわずかに振動し、そしてなんと徐々に形を大きくしていった。


「全員離れよ」


 何事かと見にこようとしていた聖女オルティアナやクーラリアたちを下がらせ、俺自身も『モバイルフォートレス』から距離を取る。


 巨大化を続ける亀の甲羅は、直径が10メートルほどになると拡大を止めた。


 目の前にあるのは、もはや家ほどの大きさがある巨大亀の甲羅である。


 いくらこの世界がファンタジー世界だといっても、さすがにこれは驚きの現象だ。しかし本当に驚くのはこれからだったりする。


「なあご主人様、あの甲羅、横に扉があるよなです」


 クーラリアが指さす先には、確かに扉がある。甲羅の形状から言えば、本来なら頭が出てくる場所だろう。


「入ってみるがいい」


「え? じゃあ入ってみますです」


 クーラリアが近づいていって甲羅の横にある扉を開いた。マリアンロッテやオルティアナたちも興味津々といった感じで後ろから近づいて見守っている。


 クーラリアは開いた入り口から中に入っていくと、素っ頓狂な声を上げた。


「なんだこれ!? これじゃまるで家じゃねえか!? みんな、入って見てみてくれよです!」


「えっ!?」


 その言葉にマリアンロッテたちも次々と中に入っていき、そしてクーラリアと同様に驚きの声を上げていった。


 最後に残った俺は、中の騒ぎが一段落したところで『モバイルフォートレス』の中に入った。


 クーラリアが言った通り、そこはほとんど家の中であった。


 大きな部屋の一方にリビングのようなスペースがあり、一方にベッドが並んでいる。


 また一方にはキッチンのような場所もあって、料理道具を揃えれば料理もできそうな設えである。


 見た感じ10人くらいならこの中で寝泊まりできそうな雰囲気で、フォルシーナたちも部屋のあちこちでベッドに座ってみたり椅子やテーブルの具合を確かめたりしている。


「あっ、陛下、このお家はどのようなものなのですか?」


 俺が半ば呆れながら部屋の中を見回していると、マリアンロッテがぱたぱたと小走りにやってきた。


「うむ、これは『モバイルフォートレス』という大変珍しい魔道具だ。普段は持ち運べる大きさだが、魔力を流すとこのように家に変化する」


「そのような魔導具が……。先ほどのモンスターから手に入るとご存じだったのですか?」


「これも書物で知った知識に過ぎぬがな。非常に珍しいものなので、ミアールがいなければ手に入らなかっただろう」


「ミアールの運の良さはすごいですからね! ところでこのお家は、テントの代わりになるということでいいのでしょうか?」


「そういうことだな。これでこれからの旅が随分と楽になるだろう」


「はい。今日のお泊まりも楽しみです!」


 マリアンロッテは嬉しそうな顔をして、フォルシーナたちのところへ行って俺の話を伝え始めた。


 しかしこの『モバイルフォートレス』は、たしかにゲームにもあったアイテムで、フィールドで『使う』と体力や魔力が完全回復するというものだった。


 非常に便利ではあるが必須というわけでもないせいか、一度きりしか出てこないボスでの確率ドロップ扱いという、ロールプレイングゲームとしてあるまじき仕様のレアアイテムであった。


 一説によるとそれはバグだったらしいのだが、『オレオ』が発売された時代はネットに接続してアップデートするという技術が存在していなかったので、そのまま放置されていたのだ。


 それはともかく旅をする上ではどうしても欲しいものではあったので、『神運』持ちのミアールさまさまである。


 俺は無表情にフォルシーナたちを見守っているメイド姿の少女に、心の中で手を合わせた。 

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― 新着の感想 ―
今はアプデでバグが直る時代なので、嬉しいですよねぇw
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