9章 → 10章
―― 神聖インテクルース王城 フォルシーナ私室
「陛下が元気になられて安心しましたね、フォルシーナ姫様」
「姫様はやめてマリアンロッテ。今まで通りでお願い」
「ふふっ、冗談よ。でも国王陛下があのような姿をお見せになるのは初めての気がするわ。お元気になられてよかった」
「そうね。まさかあの2人のことで屈託されるとは思ってもみなかったけれど、そこもまたお父様の優しさかしら」
「そうだと思うわ。強くて聡明で優しくて、そして何より民のことを思っていらっしゃる国王陛下。そんな陛下のお側にいることを許されて、私たちはとても幸運な人間ね」
「ええ、本当にそう。でもそれだけにお父様の元に来ようとする人はさらに増えるでしょうね。それだけが心配よ」
「それはあの時の聖女様の失敗でかなり減ったと思うけれど。もしかしたらあの失敗も、その為に国王陛下が聖女様にお願いをしたのかも」
「確かにお父様の近くに聖女様のお姿があれば、多くの女性は諦めるでしょうけれど……。さすがにそのような事の為に、お父様が聖女様に公衆の面前で、その、せ、せせ……」
「接吻よ」
「……接吻を頼むとも思えないわ。お父様は女性をとても大切になさる方だもの」
「確かにそうね。そうすると、あの失敗は聖女様が自ら望まれてしたということになるけれど……」
「普段の様子を見ていればその方が自然でしょうね。本当に困ったものだわ、お父様のあの在り様は」
「ふふっ、聖女様に対しては困らないのね」
「だってお父様の近くにいたら特別な感情を抱くのは仕方ないでしょう。マリアンロッテだってあんなに強引に……」
「ま、まあそれは、ね? 私も陛下には助けていただいた身だから、陛下にこの身を捧げるのは当たり前だし」
「そんなことを言って、多くの貴族の前で既成事実を作るのはずるいと思うわ」
「それはほら、フォルシーナのこともちゃんと手伝うから。大丈夫、姫様になったのだから、大臣たちを動かすことだってできなくはないわ」
「……そうね。ツクヨミも知恵を貸してくれるし、そこはこれから考えていこうと思うわ。お父様は今のところ国の立て直しと、魔族や周辺国の警戒に全力を傾けていらっしゃるし、足りないところは私が補わないといけないわね」
「そうよ。国法の見直しは後回しになるでしょうから、こちらで準備を整えておくのがフォルシーナの仕事だと思う」
「この間の約束通り、マリアンロッテも手伝ってくれるわね?」
「もちろんよ。国王陛下の周りには聖女様やローテローザ公爵様、リン将軍閣下といった美しい女性も多いから気を抜けないけれど」
「それは大丈夫。お父様はいつも私が一番とおっしゃっているから。ね、ミアール?」
「え!? あ、ハイ、お館様はそうおっしゃっているとオモイマス」
「それなら大丈夫ね。あとは国王陛下のお役に立てるように、私たちはもっと強くならないといけないわ。といっても私は支援することしかできないけど」
「何を言っているの。マリアンロッテがいるからこの間の大森林だって皆戦えたのよ。お父様もマリアンロッテの光属性魔法の才能を褒めていたでしょう?」
「そうね! 私には私のできることがあるし、これからも頑張るわ。魔族との戦いではきっと役に立ってみせる」
「それは私も同じ。お父様の横にいられるようにならないと話にならないもの。皆で頑張りましょう」




