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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第9章 悪役公爵マークスチュアート、即位し新王国を樹立す

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03 エメリウノのラボ

「あっ公爵様、じゃなくてもう国王陛下だっけ? おひさ~」


 午後一で、俺は王城の一画に設けたエメリウノの研究所を訪れた。


 紫の髪を羽のようなツインテールにし、際どいボディスーツに白衣という意味不明な格好をしている美女、それが『叡智の魔導師』エメリウノだ。


 今の彼女は、彼女自身が作った魔導人形に自分の魂を移す形でよみがえった存在だが、見た目も中身も人間とほとんど変わらない。


「まだ即位しておらぬので公爵でよい。こちらの環境には慣れたか?」


「もうバッチリ~。部屋も広いし道具類も全部こっちに移したし、研究もはかどってるから安心してねっ」


 とコロコロ笑いながら、エメリウノは俺の腕を取ってよりかかってくる。ちょいエロソシャゲ版のヒロインだからか、彼女はなぜか俺に対してだけやたらとボディタッチが多い。


「それは重畳。ところで例の魔道具の進捗はどうだろうか?」


「『通話の魔道具』なら一昨日完成しちゃったよぉ~。一応3つ作ったけど、試してみる?」


「それはすぐにでも試験をしておきたい。見せてもらおう」


 と言うと、エメリウノは棚に並んだ大きめのトランシーバーのような道具を持ってきて俺に渡してきた。


「ふむ、思ったより小さいな。どのくらいの距離まで通話が可能なのだ?」


「理論的にはここからなら王国内の領地全域いけるはずなんだけどねぇ。試してないからはっきりとは言えないんだぁ」


「なら試そうか。私が『転移魔法』で順次遠くに行きながら通話しよう。付き合ってもらえるか?」


「きゃはっ、それはもちろんっ! 公爵様話がわかるぅ」


 というわけで試してみると、確かに王城から最も遠い最西端まで届くことがわかった。


『通話の魔道具』そのものはまさに電話のように使えるもので、この世界の技術レベルからすると恐ろしいほど有用な道具である。むしろ中継なしで直接通話できることを考えると地球の技術より上かもしれない。正直これだけでエメリウノを仲間にしたかいがあった。


 研究所に戻ると、エメリウノがまた抱きついてくる。


「公爵様ありがと~。これで私の研究がまた一つ成功したよぉ」


「うむ、この魔道具は素晴らしいものだ。貴殿の名をさらに高めることになろう」


「うんうん、でもそういうのはあんまり興味ないから公爵様が好きにしていいからねぇ」


「そうはゆかぬ。このことは王国史に必ず残そう。それからこの『通話の魔道具』、量産は可能だろうか?」


「核となる魔導結晶が複製できれば量産は難しくはないんだけど、その魔導結晶はなかなか見つからないと思うよぉ」


 魔導結晶というのは、魔力を加えると特定の力を発現する結晶のことである。魔道具の作成というのは大部分この魔導結晶の改造を指すのだが、結晶自体が希少な上に、それができる人間自体非常に限られている。


「ふむ、少し待て」


 俺は『転移魔法』で執務室からツクヨミを連れてきて、『通話の魔道具』を渡した。


「ツクヨミ、その魔道具の核となる魔導結晶のレシピは作れるか?」


「はいマスター、解析をしてみます」


 ツクヨミの頭部が一部変形し、羽根型アンテナ付きヘッドセットとゴーグルが現れる。


「対象、魔導結晶、解析開始……データベース照合……錬金術魔法陣構築……解析完了。錬金術レシピを出力します」


 ツクヨミがテーブルの上にある紙に、超高速で文字や魔法陣を書き始める。十秒ほどでそれは完成し、ツクヨミは俺にその紙を渡してきた。


「こちらの素材と魔法陣を使用すれば、同規格の魔導結晶を錬成可能です。ただし膨大な魔力が必要ですので、マスター以外の錬成は難しいかもしれません」


「ふむ……」


 そのレシピ表に目を通す。上位の魔石を多く使う以外は、必要な素材はそこまで希少なものはない。多分この研究所にあるもので間に合うだろう。ということは、俺がいれば『通話の魔道具』は簡単に量産ができるということだ。


 俺はついツクヨミの頭をなでてしまう。


「大変すばらしいものだ。ツクヨミ、お前の力にはいつも驚かされるな」


「おほめいただきありがとうございますマスター」


「ふへぇ~、ツクヨミちゃんってそんなことができるんだぁ。それってもしかしてとんでもない能力なんじゃない?」


 エメリウノは目を輝かせてツクヨミの頬をなでたり手をにぎったりしたりしはじめる。ツクヨミは無表情にされるがままだ。


「まずは試してみるか。エメリウノ、錬金釜と素材をいくつか使うぞ」


「あっどうぞ~」


 ツクヨミにセクハラしまくっているエメリウノを放っておいて、俺はレシピ通りに素材を錬金釜に入れていく。蓋をして紙に描いてある魔法陣をそのまま脳内に描いて魔力を込めると、凄まじい量の魔力が吸い込まれていくのがわかった。


 ゴーレム作成の5割増しほどの魔力を消費したところで完成したようだ。蓋を開けると、アメジストに似た紫色の結晶が錬成されていた。


「エメリウノ、使えそうか?」


 俺が呼ぶと、エメリウノはツクヨミをつつくのをやめて錬金釜の中を覗き込んだ。


 手に取って色々な方向から眺め、そして「ふへぇ~」と声を漏らした。


「確かにこれは『通話の魔道具』用の魔導結晶に間違いないよぉ。加工済みの魔導結晶を直接錬成できるなんて聞いたこともないんだけど……これって天地がひっくり返るほどの話だよねぇ公爵様」


「そうであろうな。だができたことをあれこれ言っても仕方あるまい。我らがやるべきはこの力を使って民や国を守ること。その為にはどのような力をも使いこなそう」


「さすが私の王子様は器が違うねぇ。それじゃこの魔導結晶を作ってくれた分だけ『通話の魔道具』は作っておくよ。それでいいんでしょ?」


「頼む。それからエメリウノ、先日貴殿は空を飛ぶ魔法を使っていたと思うのだが、あれは余人には使えぬのだろうか」


 と聞くと、エメリウノは首を横に振った。


「あれはこの身体の中に仕込んだ機能だから魔法じゃないのよね。それに飛行時間も短いし、役には立たないと思うよぉ」


「それでは仕方あるまいな。余計なことを聞いた」


「なにか気になることがあるのかな?」


「うむ。魔族軍にはワイバーンを主力とする部隊があってな、それに対抗できる手段として考えたのだ」


「必要があれば飛行する魔道具を考えてもいいけどぉ?」


「いや、『通話の魔道具』の次は『土壌改良』の研究を優先してほしい。民を飢えさせぬ方策を先にしたい」


「りょーかいっ! さすが公爵様、理想の王様になりそうだねっ」


 再び抱き着いてきて、柔らかいモノをグイグイ押し当ててくるエメリウノ。ちょいエロソシャゲ出身とはいってもちょっとやりすぎではないだろうか。


 おまけにツクヨミが真似して抱き着いてくるのだが……そちらは少しほっこりして頭をなでてしまった。

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