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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第9章 悪役公爵マークスチュアート、即位し新王国を樹立す

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02 新たな情報

 メイドのミアールが紅茶を用意してくれたので、フォルシーナとともに応接セットに座った。


 紅茶とともに茶菓子も並んでおり、それらを楽しむことにする。


 古代アンドロイドのツクヨミも隣に座らせておくが、残念ながら彼女は食べ物などは一切口にしない。もともとそういう機能がないらしいので無理に食べさせることもできないようだ。


「ところでお父様、即位戴冠の儀がいよいよ10日後と決まりましたね」


「うむ。宰相がかなり急いだようだ。所詮形式だけのものだが、国威発揚には必要なものゆえやらぬわけにもいかぬからな」


「ふふっ。即位の儀を略式で済まそうなどと考えるのはお父様くらいのものです。人々にとって儀式は必要なものだと思います。心を新たにする機会ですから」


「まったくその通りだ。私もそこまでは考えが至らなかった」


「それもまたお父様の謙虚さ故とは思いますけれど。ねえミアール、ミアールもそう思うでしょう?」


「はいお嬢様、私もそう思います」


 その返事にフォルシーナはニッコリと笑い、そして紅茶に口をつけた。


 王都を攻略し、この王城を居所と定めてから、フォルシーナは一段と表情豊かになった気がする。原作ゲームでも王都奪還はフォルシーナの転換点だったので、それを思えばおかしいことではない。ただこのリアル世界だとそこまで変わる理由はなかったはずなので、それだけは不思議ではある。


「そういえばマリアンロッテは元気でしょうか? お父様の即位戴冠の儀の時にはこちらへ来るのですよね?」


「両親と共に来るであろうな」


 マリアンロッテについては、リープゲン侯爵、魔導師バヌアル、そしてゲントロノフ公爵領軍1万とともに、領地へと一旦帰した。向こうで両親と再会し、その後のことを話し合っているはずだ。新王家としては、ゲントロノフ公爵家はそのまま存続させるつもりであることも伝えてはある。向こうもその意を汲んで対応をしてくるだろう。


「マスター、ランクAが接近中です」


「うむ」


 ツクヨミの報告の通り執務室がノックされ、紫紺の髪をまとめた銀縁眼鏡の美女が入ってくる。秘書のような服装であるので今はラエルザだが、その正体は魔族軍四至将『冷笑のミルラエルザ』である。


「閣下、ご報告があります」


「聞こう」


 俺は執務机に移動し、ラエルザに対した。


「魔族軍は現在、四至将ドブルザラク、四至将エルゴジーラを中心にして軍をまとめ、この王国への再侵攻を準備中です。一月半後を目途に動き出すものと思われます」


「四至将を2人動員するとはな。動きが鈍いと思っていたが、なるほどそういうことであったか」


「は。魔宰相ロゼディクスは、王都を即座に奪還されたこと、そして閣下の領を襲撃した軍が一人も生還しなかったこと、ドブルザラク配下の2将軍が討ち取られたことをかなり重く見たようです」


「ふっ、少しこちらもやりすぎたか」


 と余裕ぶったが、この情報は俺としては想定外の話である。


 ゲームだと魔族の再侵攻は、復讐に燃えるドブルザラクが単独で軍を率いてやってくることになっていたのだ。もちろん成長した主人公ロークスや覚醒したフォルシーナなどによって倒されるのだが、その裏ではリンやレギルが軍を率いて魔族軍と戦っていて、かなりの打撃を受けることになる。結果としてリンやレギルといった実力者が王都を離れられなくなり、ロークスがパーティを率いて魔族領へ旅立つことになるのだが……今考えると最後はなんでそうなるのか意味がよくわからないな。


「軍勢としてはどの程度の規模になりそうだ?」


「兵数だけなら前回の2割増しほどでしょう。ただしエルゴジーラは……」


「ワイバーン部隊か。厄介だな」


「さすが閣下。ご存じでしたか」


 四至将エルゴジーラは空を飛べるドラゴンであり、その配下にワイバーンというドラゴンの亜種である飛行型のモンスターを多く従えている。


 当然ながらこの世界でも航空戦力は非常に有用で、ワイバーンは口から火球ブレスを吐き出せるため、上空から一方的に爆撃することができる。幸い射程は短いのでこちらの魔法も届くのだが、しかし空対地上では向こうに地の利がありすぎる。現有の戦力だけでは非常に苦しい戦いを強いられるだろう。


「……仕方ない、こちらも前倒しで話を通してくるか」


「閣下?」


「いや、こちらの話だ。しかしそれは重要な情報だ、助かるぞラエルザ」


「はっ。エルゴジーラの対抗策として、私の配下のサキュバスを魔導師に化けさせ100人ほど閣下にお預けすることもできますが、いかがいたしましょう」


「うむ、それも頼もうか。ワイバーン相手なら魔導師は一人でも多い方がよい」


「かしこまりました」


 ラエルザは一礼して執務室を去っていく。


 俺が応接セットのソファに戻ると、フォルシーナが溜息をついた。


「お父様の器の大きさは理解していたはずなのですが、まさか恐るべき魔族の将すら自らの手足のようにお使いになるとは思いませんでした」


「あの者の狙いは明確だからな。それが達せられるまでは信用できると考えたまでだ」


「しかしあのラエルザの存在は隠すものだと思っていたのですが」


「下手に隠せば逆に勘ぐられるものだ。それならばある程度信の置けるものには知らせておき、私が魔族すら使う人間だと印象づけたほうがよい」


「なるほど、そのようなことまで狙っておられるのですね」


 先ほどのやりとりから明らかなように、ラエルザについては特に隠さずに国王秘書を続けてもらうことにした。


 フォルシーナを始め何人かは彼女の正体を知っているわけだが、無論彼らには事情を説明して納得をしてもらっている。宰相のマルダンフ侯爵だけは多少難色を示したのだが、そこは腹黒中ボスの舌先三寸でなんとか説得をした。


 実のところラエルザに関しては、原作ゲーム知識からいくと存在を隠さないほうが後々話がスムーズに進むはずなのだ。ただそれを理由にするわけにもいかないので、フォルシーナに語ったような言い方になってしまう。


「ところでお父様、さきほどのラエルザの話が本当であれば、再びこの王都に危機が迫っているということになりますね」


「うむ。さすがにゴーレムが揃っていても、ワイバーンの大部隊が相手では分が悪い。そもそも城塞というのは飛行するモンスターには弱いのだ」


「ではどのような対策をされるのですか?」


「考えられる策は2つ。こちらも飛行部隊を編成すること、そして強力な対空兵力を揃えることだ」


「ではその準備をされると?」


「飛行部隊は難しいが、対空兵力にはあてがなくもない。フォルシーナ、即位の儀が終わり次第『不帰の森』の奥地に向かうゆえ、そのつもりで用意をしておきなさい」


「『不帰の森』、ですか? では大森林と同じような探索になるのでしょうか?」


「うむ、そう考えておいて間違いない」


 さて、城を空けるとなるとこちらも色々と準備が必要だ。


 俺は紅茶を飲み干すと、残りの書類の処理に取り掛かった。

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