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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第8章 悪役公爵マークスチュアート、中ボスルートを完遂す

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23 そして中ボスルートへ

『ダークシャドウ』を出現させたゲントロノフは、いかにも悪役といった笑みを浮かべた。


「それは『影の鬼』の使い魔よ。『蒼月の魔剣士』といえども勝てる相手ではないぞ」


「使い魔ごとき、私の敵ではありませんな」


「ふほほ、己の自惚れを後悔するのも若い者の特権ではあるのう」


 前世の年齢足すとあなたより上なんですがね。


 と思いつつ、俺はシグルドの聖剣は抜かず、マジックバッグからミスリルソードを取り出す。


 それを見てゲントロノフは笑みを消し、怪訝そうに顔のしわを深くした。


「腰の立派な剣は使わぬのか?」


「このような雑魚、シグルドの聖剣を使うまでもありませぬゆえ」


「貴公は本当に自信家じゃの」


 とゲントロノフは吐き捨てるように言ったが、その声には微かにいら立ちがこもっていた。


 実はこの『ダークシャドウ』は強力な『聖剣耐性』を持っているモンスターなのだ。『鬼』が『シグルドの聖剣』を恐れて作った使い魔、なんて設定だった。


「来い、格の違いを見せてやろう」


 剣先を向けると、ダークシャドウは滑るように突っ込んできた。


 同時のその背中から無数の触手のようなものが広がり、先端がやじりのように変形したかと思うと、一斉に俺に向けて殺到してくる。


 俺は回避スキル『転身』を使用、身体をよじらせるようにして触手攻撃を避けながら、まとめて十数本ずつ切り裂いていく。切り裂かれた触手は消えてはいくが、新しいものが次々と生えてくるようだ。


「面倒だな。『無尽むじん冥王剣』」


 無数の斬撃を放って迫る触手すべてを切り払う。ついでに本体にもダメージを与えると、ダークシャドウは驚いたように飛びずさった。


「小手先の技では私は倒せんぞ?」


 俺の挑発を理解したのか、ダークシャドウは両腕を左右に広げた。その腕先が伸びると、先が大きな鎌の刃のように変化する。大鎌の二刀流というわけだ。


 ダークシャドウはその場で黒い大鎌を振り回す。その刃の軌跡から黒い三日月の刃が生じ、全周囲に広がったかと思うと、弧を描いてこちらへ飛来し、俺を全方向から囲むように迫ってくる。『ダークコンプレッション』という単体強攻撃技だったな。


蓋天がいてん冥王剣(めいおうけん)


 包囲攻撃に対しては全周囲攻撃だ。俺の周囲を数百の斬撃が駆け巡り、黒い刃をすべて叩き落とす。


 目の前が開けた次の瞬間、ダークシャドウがそこにいた。飛び道具をめくらましにしての攻撃か。両手の大鎌を広げたまま独楽のように回転し、そのまま俺の方に突っ込んでくる。『ダークスピナー』という見た目そのままの名前の技である。


 俺は『縮地』で距離を取り、すかさず『ライトニングレイン』を発動。


 頭上から降り注ぐ数条の雷がダークシャドウを直撃、一瞬だけ動きを止める。


「『破星はせい冥王剣』」 


 剣先から伸びた光の帯が、回転の止まったダークシャドウを袈裟に斬る。だがまだ致命傷ではない。


「『無明むみょう冥王剣』」


 さらに俺自身が一条の光となって突進、すれ違いざまにダークシャドウの首を狩る。


 振り返れば首を失った影が、形を失って消えていくところだった。


「ふっ。この程度では剣の錆にもなりませんな、ゲントロノフ公」


 俺がミスリルの剣をマジックバッグにしまいながら言うと、ゲントロノフは目を見開いたまま、ぶるぶると震えだした。


「馬鹿な……!? アレは人が倒せるものではないはず……!」


「『影の鬼』に騙されたのでしょう。さて、では王城へとお戻りいただきましょうか。ゲントロノフ公にも先王を弑した疑いがありますし、なにより『影の鬼』についていろいろとお聞きかせいただかねばなりませぬ」


 俺が一歩近づくと、ゲントロノフは腰から短杖を抜いて構えた。黒光りする、妙に禍々しい形状の杖である。


「それは断らせてもらおうかの。わしは領地に帰って余生を過ごすつもりゆえな」


「『鬼』に協力した人間が余生を過ごすだけで満足するとは思えませぬ。一体なにを対価にされたのですかな」


「黙れ青二才が。このゲントロノフ、対価などで動かぬわ」


 なにが心のひだに触れたのか、ゲントロノフは急に顔を怒りに染めた。すべての皺を歪めたその顔は、彼自身が鬼になったかのようだ。


「わしは見たいのだ、『鬼』が生み出す新たな世界をな。老い先短いこの身、それくらいの楽しみはあってよかろうが」


「意味がわかりませぬが、公の願いは多くの人間にとって邪なもののようですな」


「『鬼』のことをよくも知らぬ愚か者が。いずれにせよ、貴公は思うたより優秀にすぎたようじゃ。ここで消えてもらおうぞ。『ダークネスフレア』!」


 ゲントロノフが短杖をこちらに向けて魔法を放った。


 驚いたことに闇属性の最上級魔法である。俺の周囲に無数の黒い球体が出現し、一気に俺を飲み込むように膨張し――


「『ディスペルオール』」


 そして闇の波動によってすべて消失した。


 ゲントロノフは驚愕に目を見開く。


「な、なにが起きた!?」


「『ダークネスフレア』をお使いになるとは驚きましたが、その程度で私を亡き者にすることはできませぬ。大人しく従っていただきましょう」


「なんの! まだじゃ!」


 さらに『ダークネスフレア』を放ってくるゲントロノフ。よく見ると、その魔法は彼が持っている黒い短杖の力によって生じているようだ。つまり『シグルドの聖剣』と同じく、『使う』ことで魔法を発する武器ということらしい。


 とはいえ俺の『ディスペルオール』の前には無力である。


 俺は『神速』込みの『縮地』で接近し、反応できないゲントロノフの手からその杖を奪い取った。


「なっ、いつの間に!? ブラウモント公、お主は……いったいどれほどの力を……!?」


 目を見開いたまま、がっくりと膝をつき、崩れ落ちるゲントロノフ。


 もう一幕くらいはあるかと思ったが、どうやらゲントロノフについてはここまでのようだ。


『鬼』についてはこの後聞かねばならないが、ともかくこれで王都攻略、ついては俺の王位簒奪についてはほぼ完遂となった。


 仕方なく、本当に仕方なくたどった中ボスルートだが、終わってみると微かな高揚感と達成感があるのは、やはり俺がマークスチュアートだからだろうか。


 ならばここから、ゲームのマークスチュアートが夢見て果たせなかった国王としての人生を始めるとしよう。


 なにしろまだこの国は、そしてこの大陸は、平穏とは程遠い状態であるのだから。

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