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54.VS 嘆きのクラーケン

「来るぞ!下だっ!!」




そのセリフと同時に各々が戦闘態勢をとる。


「くそっ忌々しいイカ野郎じゃねぇかっ!ついてねえなあっ!」


カインが悪態を吐くも、既に標的は定まってしまったようだ。

巨大な触腕がペペロンチーノ号に巻き付き、ギチギチと船体を締め上げる。


「っちょおミシミシ言ってる!ミシミシ言ってるって!」

「いやこの足キッショ!!」

「こんのイカ野郎がっ!てめえに沈められた船の恨みは忘れてねぇからなあっ!」


割と阿鼻叫喚です。

というか思っていた以上にイカがでっっっかい!



ギイィィィ────………


「──っ!?」

「おわーーー!?」

「ちょっ滑る滑る滑る!」


巨大なクラーケンの重さに耐えきれなかったのか、船体が徐々に傾いて行く。


「カインっ!テメェこれ本当に転覆しねェんだろうなァっ!」

「くっそ知るかよ!でもこのままだと多分やべえ!」

「チィッ!」


舌打ちをしながら急いで傾いている側へ向かい魔法を飛ばす。ザシュッという音と共に触腕に深い切れ込みが入ると、ひるんだのか船の傾きが一瞬止まる。


「お前たち慌てるんじゃないよっ!まずは一本ずつ触腕を切り落とすんだ!」


ジャンヌの号令でようやく船員たちも落ち着きを取り戻す。

全員近くにある触腕にそれぞれ攻撃を仕掛けると、ほどなくして何本かの触腕を切り落とすことに成功した。


すると船を転覆させるのは諦めたのか、スルスルと残りの触腕が引っ込んで行く。


「やったか………?」

「フラグおつ」

「マジでやめろ」

「ざけんなよお前」


再び静かになった海に警戒を強めていると、下から突き上げるような衝撃が襲ってきた。


「嘘だろっ!?」

「ギャーーーー!!」

「あーーっ!落ちる落ちる!」


何人か弾き飛ばされたりその辺のロープに引っ掛かっていたりするけれど、何とか全員無事のようである。……多分。


続いて現れたのは巨大な頭。白目と黒目を持つまるで人間の目のような巨大な単眼がギョロリとこちらを向く。


「うわぁ…」

「キモすぎ」

「夢にでそう」


激しく同感です。

その時スルリとハインリヒさんが隣に戻って来た。


「これは『嘆きのクラーケン』ですね」

「『()()』?」

「ええ。かつて王都でも有名になっていたのですが──」


──ドゴンッ


すぐ横に巨大な触腕が振り下ろされる。メキィッと嫌な音を立てるが、まだ船は壊れてはいないみたいです。

再び触腕が持ち上げられたかと思うと、今度は違う場所に振り下ろされる。


「過去イグニス大陸に渡る船は悉くこのクラーケンに沈められてしまい、あまりにも多くの者が嘆き哀しんだ、という理由から付けられたという説が一つ。」


あ、続けるんだ!?

まあ触腕の叩きつけは動きが単調でわかりやすいから、特に問題はないけれども。


「もう一つはクラーケンの鳴き声がまるで悲痛な叫び声のように聞こえるので、かつて海で亡くなった者たちの魂が集まり生まれたのがこのクラーケンである、という説ですね。」


続いて凪ぎ払うように振るわれた触腕を飛んで回避しながら、ハインリヒさんが語る。


「おいっお前ら余裕だな!?」


そこへ捕まって宙吊りにされていた仲間を、触腕を切り落とすことで颯爽と救出してきたカインも会話に加わってきた。


「最後の一つは──」

「いや、まだ続けんのかよ!?」

「とある一人のご令嬢が婚約していた男性に裏切られてしまい、別のご令嬢にその男性を奪われてしまった。しかしそれでもその男性を諦められなかったご令嬢は、ある時その男性を氷漬けにして連れ去ってしまったのです。そして誰にも二人の世界を邪魔されないように、氷漬けにした男性を船に乗せ、そしてその氷と共にこの海へと沈んで行きそして彼女はクラーケンとなった───という説ですね。」

「ん?それってあんまクラーケン関係無くねえか?」


一応誤解のないように伝えておくと、会話しながらでも攻撃はちゃんと続けています。

私は魔法、カインは槍、そしてハインリヒさんはロングソードの双剣スタイルでバッサバッサとやっております。あ、また触腕が一本吹っ飛んでいった。


確かにそのご令嬢は大分ヤバめの人ではあるけれど、クラーケンとはどこで繋がるんだろうね?そのねっちょりと絡みつくような想いがクラーケンと似ているとかそういうことなのだろうか。


「いえ、クラーケンはご令嬢と同じなんですよ。」

「何が?」

「氷魔法を使うところですね。」


「「は?」」


その時大半の触腕を切り落とされて怒ったのか、「キイィィイィィーーーー!!」というどこか叫び声にも似た鳴き声が響き、同時に空中に浮かび上がった白い光の玉から散弾のように氷の礫が飛び散った。




ドッドッと早鐘を鳴らす胸を押さえ、一息つく。


何とか咄嗟に後方へ跳躍することで難を逃れたけれど、あのままあの場に居たら結構なダメージを食らっていたと思う。

甲板には無数の氷の破片が突き刺さっていたけれど、幸いハリネズミになったプレイヤーは居なかったらしい。そこら中から「っぶねー!」「めっちゃかすった」「オレ何個か刺さったわ」という声が聞こえる。


って知ってたなら早く言わんかいっ!

だから思わず「知ってたンなら先に言っとけ!」と言ってハインリヒさんを蹴り飛ばしてしまった私は悪くないはず。


というか「申し訳ありません」と謝ってくれるのはいいのだけれど、何でそんなにキミは笑顔なんだ。蹴られてるのに何がそんなに嬉しぃ…………………ん?嬉しい?え、なんd………





……………あれ?????



「おいジュカぼーっとしてんな!次来るぞっ!」


え?あ、………えっ!?危なっ!


ガキンッ


間一髪で攻撃を避け、カウンターで魔法を叩き込む。

何か今物凄く嫌な予感がしてしまったのだけれど、今は置いておかざるを得ない!おいっお前のせいだかんなっ!そこのルンルンで戦ってるイケメン騎士ぃ!!



「よしっ今だよ!全員あの口を狙ってブチ抜いてやりなぁっ!!」


ジャンヌの号令に合わせて、船員たちが雄叫びを上げながら突撃していく。

クラーケンの弱点が“トンビ”と呼ばれる口の部分だとわかったまでは良かったのだけれど、流石に常に露出している部分ではないので中々に攻めあぐねていたんだよね。


それで色々と試して解ったのが、口が露出するタイミングは誰かが触腕に捕まり食べられる瞬間と、氷魔法を撃ってくる瞬間の2パターンであることが判明した。


あえて捕まり食べられる瞬間を狙うというのは、そもそもタイミングが計りづらいというのと失敗したときのダメージがかなりエグかったので早々に却下となった。

もう一つのタイミングは、触腕を切り落とすことで怒り状態になると氷魔法を撃ってくるというパターンだったので、時間は掛かるけれど確実であるこちらを採用することになった。あ、ちなみに触腕は再生するみたいです。


攻撃のパターンさえ分かってしまえばそこまで難しい相手ではなかったので、今のところ順調に相手の体力を削れています。

じゃあ何で今まで倒されていなかったのかというと、多分だけれど船の大きさの問題だったのではないかと思います。


まず第一に、この『嘆きのクラーケン』の攻撃はかなり大振りなので避けるのは然程難しくはない。だけれども、船が転覆、或いは半壊した状態になってしまうと、逃げ場や足場が失くなってしまい結局やられてしまうのである。

なので足場さえキッチリ確保しておけば、倒せない相手ではないということですね。


そんな訳で立派なガレオン船を手に入れている【ペペロンチーノ海賊団】のメンバーは、積年の恨みとばかりに大暴れしているというわけですよ。


中でもやはり一番活躍しているのはクランマスターであるジャンヌかな。

ジャンヌもハインリヒさんと同じく双剣スタイルで戦っているけれど、彼女の武器はカットラスと呼ばれる湾曲した刃の割と小型の剣である。なので威力よりも手数を重視したスピードタイプらしく、まるで剣舞のように舞いながら攻撃しているのが目に入る。


連撃に次ぐ連撃でスパスパ切り飛ばしていくのを見ていると、何故かやたらと爽快な気分になるね。ずっと見ていたくなります。


そして気が付けば最後の大詰めらしい。

カインが長い溜めからの渾身の一撃を、クラーケンの弱点である口に突っ込んでいく。




ギイィィイィィeeeaaaaAAaaaァ─────!!!!!!




最期の断末魔を上げ、『嘆きのクラーケン』は光の欠片となり砕け散った。



《フィールドボス『嘆きのクラーケン』が初討伐されました。初討伐報酬としてスキルポイントが贈られます──》

《称号【嘆きを鎮める者】を取得しました──》



「「「おっしゃああぁぁぁーー!!!!」」」

「初討伐じゃオラーーー!!」

「思い知ったかイカ野郎!」

「よっしゃあ宴じゃあ!」

「誰か酒持ってこーい!」

「今日は飲み明かすぞーー!」


各々勝鬨を上げて盛り上がる。







っあーーーー疲れた!!

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― 新着の感想 ―
ハインリヒ 業が深いよね
ハインリヒご褒美貰えて良かったね!w
変態にエサを上げないで下さい
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