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45.お披露目と撮影会

〈side 椿〉


ジュカくんからメッセージを受け取り、逸る気持ちを抑えながら中庭へと足を踏み入れる。するとそこで待っていたのは───






──楽園でした。



陽光に照らされ、柔らかな芝生の上でその身を寛がせながらこちらを見る美しい二匹の獣───。


は?最高すぎない?もはや宗教画の域だが?は???


思わず五体投地した私は決して間違ってはいないはず。むしろやらない皆の方がおかしいと思う。だってよく見て?ハンスも隣で五体投地してるよ?


「なにあれ?俺はお兄ちゃんだから堪えられたけど、もし俺が女だったら完全に妊娠してた。危なかった。椿は大丈夫?妊娠してない?」


「私もお姉ちゃんだったから何とか堪えられた。もし私が男だったら確実に禁断の愛に目覚めてた。危なかった。ハンスは大丈夫そ?」


「とりあえず双子は落ち着け。つかその前にまず立て」


ハンスと二人、ハルに首根っこを掴まれるように引き上げられて何とか震える足で立ち上がる。

正直あまりの衝撃で昇天しかかっていたけど、昇天したらこの奇跡の光景が見れなくなってしまう。それはいけない、脳味噌と網膜とRFOのデータに焼き付けておかなければ!


そこでふとキャロとユリちゃんが静かだなと思ったら、二人とも無言でSSを撮り続けてた。

あと確かに言葉は喋ってなかったけど、ずっとシャッター音がカシャシャシャシャシャシャシャ…っていってた。全然静かじゃなかった。ただの気のせいだった。


「いやお前らこえーよ」

「そういうハルだってジュカのSS撮ってる癖に」

「…………連写はしてねぇよ」



ジュカくんは世界の宝だからね。仕方ないね。




〈side ジュカ〉


温かな陽光が降り注ぐ中庭に噴水の奏でる爽やかな水の音。そしてそこを吹き抜ける柔らかな風は優しく頬を撫で、色とりどりの花びらを踊らせる。



そんな穏やかな風景の中、途切れることなく響き続けるシャッター音。



いや、長くない?

今までも新しい装備が出来上がるとこうして撮影会をやっていたけれど、その時はもっとグラビアアイドルの撮影現場か!?と言わんばかりにギャイギャイ騒ぎながらの撮影会だった。大体新衣装を見た最初の瞬間はいつも無言になるけれど、今回はその無言のまま撮影会に突入してしまった。いや、怖いよ。


「なぜに無言?怖いんだけど…」


「ちょっ、まだ動いたらアカン!ジッとしときや!」

「そうですよ!あと視線をもう一度こちらに!!」


カシャシャシャシャシャシャ───!


「あ、ハイ……」


撮影会はまだまだ終わらない。


「……ふぅ。一旦休憩にしましょうか」

「せやな。次は場所変えて撮ろか」

「いいね~!次は動画も撮っちゃう?」

「おっいいじゃん!ジュカは元々姿勢がいいからな~歩く姿も様になるんだよな!」

「ほらよジュカ、コーヒー。……まあもうちょっと付き合ってやってくれや」


ま、まだ終わりじゃなかった……だと!?

と衝撃を受けていると、ハルさんがコーヒーを淹れてくれた。隣でゲンナリしているパルゥには煮干しを沢山あげようね。


煮干しはほぼ一口で消えていってしまったけれど、私たちはゆっくりとコーヒーを啜りながら休憩する。


「にしてもこの騎獣装備のデザインすごいね、めちゃめちゃ凝ってる」

「あァ、元々チブチア族って奴らが奉納品として作ったやつなんだと」

「へぇ。それが件の遺跡で判明したことなのか」

「でも奉納品って誰に奉納してたの?」

「奴らが信仰してた湖の女神だとよ」

「「「へえ~~~」」」


ついでにその湖に居ると思われる聖獣の話や、チブチア族の一風変わった儀式の話なんかをすると、みんなそれぞれに興味を持ってくれたようです。


「あの森の奥ってそんなに面白そうなことになってるんだ!?」

「湖を守る聖獣、もしくは魔物か。いいねぇ、強そうな相手は大歓迎だぜ?」

「私はそのチブチア族自体が気になるなぁ。装飾技術に長けとったって言う割にドワーフ族でもなさそうやしな」

「確かに他の奉納品も見てみたいよね~。デザインのいい勉強になりそう」

「そもそも湖の女神って誰なんでしょうね?」


ワイワイと喋りながら休憩していると、気付けばコーヒーも用意してくれた軽食もすっかり空になっていた。



「よし、おやつも食べたし撮影再開だよ!」


椿の号令と共に再びの撮影会である。


今度は動画を撮ると言うので、中庭にある建物と建物を繋ぐ回廊で撮影することになりました。


「あ、ジュカは念のためこれ着けといてな」


そう言って渡されたのは、一つの金色の仮面。……確かヴェネチアンマスクって言うんだったかな。


「何だコレ」

「前にジュカからOK貰て掲示板に装備のSS上げたやろ?そんときも念のために鼻から上は載せんようにして上げたんよ」

「まあそれでもジュカくんだって気付く人は気付くだろうけどね」

「誰にも見せたくない気持ちと、全員に見せびらかしたい気持ちがせめぎ合った結果の妥協案ですね」


な、なるほど?

まあ今回は動画ということで、変な画角で撮影するよりは始めから顔を隠しておこうということらしい。


「よし、準備OKだよ!ジュカくんカメラ目線でこっちまで歩いて来て~!」


動画というので何をさせられるのかと身構えていたけれど、蓋を開けてみればカメラ目線で歩くだけとのことだったので一安心です。

………いや、本当にそうだろうか。ただ歩くだけとはいえ、歩き方一つとってもその人の性格が出るのではないだろうか…?


例えばもしこれが自信家なタイプのキャラであれば、肩で風を切りながら胸を上げるようにして歩くだろうし、逆にミステリアスなキャラであればうっすらと微笑みながら女性モデルのようにしゃなりしゃなりと歩くのもいいだろう。


となると、ジュカの歩き方の正解は……


いや普段通りに歩けば?と思われる人もいるかもしれない。けれど私にはこれが改めて『ジュカとはどんな人物なのか?』という疑問を投げ付けられたように感じたんですよね。

うん、ここは気合いを入れて応えねば!




ジュカを見て感じて貰いたいのは“野生美”的なイメージだろうか。


口は悪いけれど粗暴なわけではない。自分に自信はあるけれどそれを周りに誇示するタイプじゃないし、あくまで自然体がいい。それにやっぱり最大の特徴である猫人族という部分も強調していきたいよね。


ジュカは面倒臭がりではあるけれどダウナー系ではないので、背筋は伸ばして背中は丸めない。でもそこで肩や腕が力まないように力を抜いて自然に下げる。

さらにしなやかさを出すために歩くラインは肩幅ではなく、一本のラインの上を辿るように。そして歩幅は大きくゆったりと。

あとは軽く顎を引いて、静かに見つめるように前を向けば完成です!


そしてそんな私の右斜め後ろをパルゥが音も無く付いてくる。

パルゥはその存在自体がすでに““美””なので、そりゃあ歩くだけでも華がある。引き締まった体躯にしなやかな筋肉、頭の天辺から尻尾の先端まで流れるように美しいですね!流石うちの子!



そして最後はカメラの横を通り過ぎる際に流し目ひとつに尻尾をゆらり。



どうだ!!完璧だったでしょ!!!と振り返れば、そこにあるのは死屍累々。

双子なんか滂沱の涙を流して天を仰いでいる。


君たちは本当に私の作るキャラが好きだね。

いや、嬉しいんだけどね。でも双子のテンションに慣らされてしまったお陰で、その反応が普通だと思っていた時期が割と長いことあったからね?友人に「いや、その反応は全然普通じゃないよ」って言われるまで全く気付かなかったんだからね!?


まあ直して欲しい訳ではないし、別にそのままでいいんだけどね。



その後は、折角だからとハンスとハルくんもお互いの騎獣と一緒に撮影することになった。

二人の騎獣は装備を着けてはいないけれど、素の姿だけでも十分にカッコいい。それに【共に歩む者】の称号を取得するのはもう確定事項らしく、既に椿たちに騎獣用の装備の注文も済ませていたらしい。いつの間に。


ハンスと白頭鷲の『ハーレー』

ハルくんと巨大灰色狼の『志狼』


いやあ【宵闇の騎士団】の黒と銀を基調とした軍服風の装備も相俟って、大変眼福でございました。



長きに渡った撮影会も無事に終わり、その場で解散…はしたけれどフレンドのホームから出ると元いた場所へと転送されるので、そのまま【Viola】へと戻って来た。


「……帰るか。じゃあな」

「うん、今日はお疲れ様!また遊ぼうね!」

「おつかれやで~」

「お疲れ様でした~」


そして店を出ようと扉に手を掛けたその時、ひとつのワールドアナウンスが流れた。




 




《ジャンヌ率いる『ペペロンチーノ海賊団』により、新大陸が発見されました──》

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― 新着の感想 ―
通り過ぎる時さりげなくツンデレ的な尻尾で相手の足か腕を絡めながら流れていくと即死効果の攻撃に繋がりそう ※尊死
癖ェッッッ 拘りがすんごい
このエピソードで分かりました。この作品は筆者様の癖をこれでもかと詰め込んだ作品なのですね。 そして、あの、その癖というのがですね、私にドンピシャでして。嗚呼、ほんと、いや、双子と同じ反応とまではいきま…
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