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34.蚤の市

──ガヤガヤと買い物客で賑わう広場までやって来た。


どうやらここが件の蚤の市であるらしく、周りを見渡せば日用品からよくわからないガラクタまで様々な異国情緒溢れる品物が並べられている。


(お、これってなんだっけ……あーそうだ確かシーシャ、だったかな?なんか管みたいなのから煙吸ってプカーってやるやつ。ってか高ッッッか!一体誰が買うんだ……)


一つ一つ露店を見て回っていると、本当に色んな品が置いてある。

アインスベルで行った蚤の市も“家庭で不要になったもの”という点では同じなんだろうけれど、あちらは同系統のものというかそこまで奇抜なものは無かったような気がする。


対してドーラの蚤の市は多種多様というか、カントリー調のものもあれば北欧風、アラベスク、中華風と本当にバラエティー豊かである。

そんな中で気になったのが、懐中時計かと思って手に取ってみたけれど中を開いてみたら羅針盤だった、という代物でした。


「おっ兄ちゃんそれが気になるのかい?」


「……まァな」


話し掛けてきたのはドワーフ族のおっちゃんで、もともと小柄で筋肉質になりやすいドワーフ族だけれど、その中でも一際筋肉質に見える体型をしていた。端的に言えば、ゴリゴリのマッチョである。


「これは壊れてンのか」

「あ~まぁな。うちの地元の奴等なら直せるだろうが、今こっちに知り合いはいねぇからな」

「フぅん」


所々錆び付いている上に壊れているけれど、表側には細かい装飾が施されて繊細な模様が描かれているし、物を大切にしていそうなドワーフ族なら直すために手元に残しておいたりしないのだろうか。


「あん?いや別にそれは襲ってきた小物海賊を返り討ちにしたときの戦利品だからな。別に思い入れなんざねぇんだよ」


へぇー成るh………成る程???


うん、どうやらこのゴリゴリの筋肉は見せ掛けだけのものではないということですね、はい。


「あ~…どうもコッチの大陸の連中は俺たちドワーフ族は物作りしかしねぇと思ってるみたいだけどよぉ、普通に考えてそんな訳ねぇからな?」


ヤレヤレと肩を竦めながら言われてしまった。

確かにドワーフといえば、酒・鍛冶・器用みたいなイメージはある。

でも実際は鍛冶が苦手な人も、不器用な人も、酒が飲めない人だっているらしい。そりゃそうか。


目の前にいるこのおっちゃんも、物作りは苦手だけれど戦闘はかなり得意だとのこと。そして意外なことに商売も得意らしく、こうやって自分の船で別の大陸にやって来ては商品を売ったり仕入れたりしているらしい。


“世界を股にかけ戦う行商人”とは何とも豪快で格好良いおっちゃんである。

ちなみにそれを伝えてみたところ、



「なんたって俺さまは誇り高きヴァイキングだからな!ガッハッハッ!」



とのこと。


ヴァイキングとは確か海賊の俗称だった気がするけれど、どうやらこの世界では『海を渡り交易するもの』という意味合いが強いようです。まあこの世界の海は現実よりも遥かに危険度が高そうなので、そんな海を渡って交易をする人はそりゃあ誇り高くもなるし崇められるだろう。


それにヴァイキングといえば、角の付いた兜に髭もじゃなイメージがあるのでドワーフ族がヴァイキングをしていると言われても納得っちゃあ納得な気もする。


そんなおっちゃんは普段は表の大通り沿いで商売をしているそうなのだけれど、最近はやれこんな武器を作れだの、うちのクランの専属で働けだのと散々言われたらしく、それを無理だと断ると物に当たったり悪態を吐かれるわで大概面倒になったらしく今は裏通りに引っ込んでいるのだとか。


よくそんな失礼な奴らを殴り飛ばさなかったなと言えば、表の大通り沿いで問題を起こすと商売する権利が剥奪されてしまうとかでならばと移動してきたらしい。


「権利を剥奪されちまうのは困るが、別に商売はここでしか出来ねぇ訳じゃねぇからな。ここがダメならまた別のとこに行きゃあいいさ!」


ガハハ!と笑うおっちゃんを横目に、それってもしかして、というかどう考えてもプレイヤーの所業だよなあ…とげんなりする。


などとおっちゃんと世間話をしつつ、懐中時計型の羅針盤は無事購入。


えっ壊れてるのに買ってどうするのかって?そんなの見た目がカッコいいからに決まっt………というのは冗談で、いや確かにデザインはお洒落ですけどね?ではなく、実はこれも【???の欠片】の一つなのである。


ここに来る前に寄った骨董品店で買ったものと合わせると全部で10個以上は越えているのだけれど、それでもスキル解放のアナウンスが入らないということは数種類の言語の欠片が混ざっているのだろう。

嬉しいようなもどかしいような……。


とそんなことを考えていると、



《???の欠片を10個手に入れたことによりスキル〈ツヴェールク語〉が解放されました──》



お?キターーーー!!!

取得しますともしますとも!!必要スキルポイント5ポイントがなんぼのもんじゃい!と迷わず取得、ポチッとな!


よしよし思惑通り古代語スキルゲットだぜ!と一人ニマニマしていると、「んなボロッちい羅針盤がそんなに嬉しかったんか?」とおっちゃんに怪訝な顔をされてしまったけれど、全然気にならないね!




おっちゃんと別れた現在、カフェで休憩中です。

ちなみにふわふわパンケーキの店ではない、とだけ。


海の見えるテラス席はプレイヤー、住民問わず人気がでそうなものだけれど、大通りから大分外れているためか店内の客の数は少ない。


潮風も現実ならあまり嬉しいものではないけれど、ことゲームの中ならば歩き疲れた体を癒す爽やかな風となる。

注文したコーヒーを一口飲むと、どうやらスパイスが入っているらしく独特な甘味のあとに清涼感のある香りが鼻を抜け、中々爽快な後口になっている。


ここから見える景色と風も合わさると、相乗効果でマイナスイオンでも発生するんじゃなかろうか。


(さて……)


一頻り景色とコーヒーを堪能してから、さっき買った羅針盤を取り出す。



[アイテム]壊れた羅針盤 品質:低 レア:Ra

[備考]表面にツヴェールク語が描かれている。損傷が激しく読み取ることは出来ない。壊れた針は何かを示すことはない。



「…………」


食事をする場所で修理するのはどうなのかとは思ったけれど、分解して修理するのではなく〈修繕〉のスキルを掛けるだけなのでまあいいかと思いスキルを発動する。


手の中で淡く光った羅針盤を見てみると、表面の錆びは粗方落ちてはいたけれど中を見れば壊れた羅針盤はそのままだった。


(ふーむ…これはスキルのレベルが低いのか、それともこういった精密なものはそもそも〈修繕〉スキルの対象外なのか……)


古代語のスキルは取得出来たので別にこの羅針盤を直す必要はないのだけれど、壊れたままというのも何となく座りが悪い。

ヤヌルカに戻ってダニエルに相談してみようかな…。いや家具職人は畑違いだろうか?と考え込んでいると、横から声を掛けられていたことに気がついた。


「なぁ、そこの美人なにーさん」

「あれ、無視かい?」

「おーい」

「なーなー」

「もしもーし」

「ねぇってば!」



「あ゛ァ?」


途中から気付いてはいたけれど普通に面倒だったので放っておいたのだけれど、あまりにしつこかったのでつい返事をしてしまった。


大分柄悪めのお返事だったけれど相手に気にした様子はなく(気にしてほしかった)、「おっやっと気付いてくれた!」とニカッと笑っている。



話し掛けてきたのは燃えるような赤髪に三角帽子、そしてフロックコートを身に付けた“ザ・海賊”といった出で立ちの()()プレイヤーだった。



「いやぁ急に話し掛けちまって悪いね!あたしはジャンヌって言うんだけど、見ての通り海賊やってるのさ。んで何で声を掛けたかって言うと、あんたが持ってるソレ。ソレって懐中時計だろ?いやぁあたしも懐中時計探しててさぁ、もしよかったら売ってる場所を教えて貰えないかい?」


ふぅん、女海賊のRP(ロールプレイ)ねぇ………悪くないんじゃない?(大歓喜)


海賊と言えば懐中時計でしょ!という意見には海賊には詳しくないので何とも言えないけれど、私はRP勢は基本応援したい人間である。

私がRP勢と気付かれているかはさておき、仲間は大切にしていきたい所存。


「これは懐中時計じゃなくて羅針盤だ。まァ壊れてるがな」

「羅針盤だって!?もっと最高じゃないか!ど、どどどどこで売ってるんだい?」

「近ェ。裏通りにある露店だったが、コレしか置いてなかったぞ」


スズイッと乗り出してきた頭を押し返してそう告げると、残念そうに「そ、そうか…」と言って席へ戻ってくれた。そもそもこれは海賊からの戦利品だって言ってたしなあ。


「まァでも店主は船乗りだって話だ。だったら売ってる店くらいは知ってるンじゃねェのか」

「ほ、本当かい!?その店主紹介しちゃあくれないかい!?もちろん礼は弾むよ!」





ふむ…。

とはいえ一度買い物しただけなので紹介するほどあのおっちゃんと仲が良い訳ではないのだけれど。

でもまあ店の場所を教えるくらいなら構わないかな。


なんてったってRPの同志ですからねっっ!!!!

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RPはゲームの花形ですからにゃ
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