23.ブラックオンカ
[騎獣]ブラックオンカ 適正:地
[備考]性格は非常に獰猛。隠密や俊敏性に優れ、樹上での移動も得意とする。しかしスタミナは少ない。
おぉ……。
オンカって何?と思ったけれど、たぶんアレだ、ジャガーだ。しかも黒変種っていう斑点模様はわかるけど全体的に黒いタイプのやつ。
結論を言います。
めっっっっっっちゃくちゃカッコいい!!!!
何アレ!?格好良すぎじゃない!?!?
えっ絶対あの子がいいんだが???
いや、あ、でも、あれ……?私今既に見つかってますね???(がっつり目が合っている)
☆ここで騎獣ゲットの基本の流れを説明しよう!
①騎獣に見つからないように背後へ回る。
……………ってもうすでに破綻しとるやないかーーーい!!!!
うぇぇ…やだよぉ…あの子がいいよぅ……。
そんな心の葛藤はおくびにも出さず目の前の騎獣と見つめ合う。
え、どうしよう…ここから入れる保険はありますか?っじゃなくて、えっここから挽回する方法なんてあるぅ???
するとそんな中意外にも目を逸らしたのは騎獣の方が先で、さらに何かをジッと見つめ始めた。
(?なにを……)
その視線の先にあったのはセットしたまま放置された釣竿。
何か掛かったらしくガタガタ揺れている。
(…………。いや今はそんなことよりも騎j、)
圧。
目の前の騎獣から物凄い圧を感じる。
まるで「何しとんねん、魚掛かっとるやろがい!はよ釣れや!」とでも言わんばかりである。
(えっ、いや、でも……そんなことしてる間に逃げらr)
ガルRrrrrr………!!
あっ早く釣れって言ってる、めっちゃ言ってる!!
急いで釣竿を手に取り釣り上げてみると、ツクナレという尾鰭に孔雀の羽模様にある目玉のような模様の入った魚が掛かっていた。
ってでかいな!
30cmは優に越えていそうだし、ランクが低い代わりに耐久値は高いはずの釣竿がミシミシと悲鳴を上げている。
というかこんなショボい釣竿でも釣れるとは…。やっぱり人の来なさそうな場所にいる魚は警戒心が薄いんだろうか。
などと考えていると、目の前には件の騎獣様。
急な大接近に驚きつつも大人しく釣り針を外して魚を手渡すと、何の遠慮もなくバリバリと食べておられる。
(これって今のうちに背中に跨がったりしてもいいのかな?いやでも、猫ってご飯中にちょっかい出されるとめちゃくちゃキレそうなイメージが……)
暫く葛藤しつつも食事風景を眺める。
そして食べ終わって満足したのか口回りを舐めていた騎獣と再び目が合った。
すると、なんと驚くことに姿勢を低くしてこちらを見ているではないですか!
(えっ、えっ!?も、もしやこれって友情ゲットの神展開……なのでは!?)
まさかの展開にドキドキする胸を抑え、騎獣へと近付く。
姿勢を低くしているといってもそこは人を乗せられるサイズの騎獣である、伏せた状態でも頭がジュカの腰辺りにある。立ち上がったときの体高はジュカと同じくらいかそれ以上あるのかもしれない。
逸る気持ちを押さえつつ、あまり負担を掛けないようにゆっくりと跨がる。
現実で乗馬の経験なんてないので、生き物の背中に跨がるというのは初めてである。ビロードのような手触りにガッシリとした筋肉の感触、伝わってくる背中の温かさに相手が生き物だと強く感じさせられ、何とも不思議な気分である。
そんな慣れない感覚にはわわ…!と感動していると、ドンッと下から突き上げられるような感覚と共に気が付けば宙を舞っていた。
(????????)
猫人族の習性の賜物なのか何なのか、無意識な状態でも身体を捻って無事に着地はできた。
何が起こったのか分からず困惑顔のまま騎獣の方を見ると、向こうも「は?お前マジ?」みたいな顔をしてこっちを見ていた。
…………。
あ、これ友情ゲットの神展開じゃないですね。
そうじゃなくて「もしも俺を乗りこなすことが出来るならお前の騎獣になることを考えてやってもいいぜ?」的な展開だこれ。
寧ろ折角チャンスを与えてやったのに何やってんのお前?みたいな顔をされている。
………いやわかるわけなくない???
こっちの方が「は???」である。
いや、でもまあ、たかだか魚一匹で友情ゲットは確かに烏滸がましかったかもしれない。
よし!と気合いを入れて、もう一度挑戦すべく騎獣の元へと向かう。
………あの、しゃがんでくれないんですけど。あ、追加の魚ですか。そうですよね、タダはダメですよね…。
インベントリの中に以前浜助くんから貰った魚が残っていて本当に助かった。ありがとう浜助くん。
ちなみに残る魚はあと3匹。つまりチャンスはあと3回。
少ないとは思うけれど、一期一会方式で失敗=即終了と比べたら破格の条件である。しかしこれってもしかしたら探せば友情ゲットの方法も見つかるのでは…?
いや、そんなことは今はどうでもいいだろう。それにこの騎獣はたぶんだけれど、仲良くなってもそのままゲットはさせてくれなさそうな気がする。
というかチャンスを複数回くれるだけでもかなり友好的ではある。一体何が彼の琴線に触れたのか。いやまあ魚ではあるんだろうけれど。
果たして再びのチャレンジ。
一回目・・・失敗。
二回目・・・失敗。
三回目・・・、
って、いや難しすぎない!?
飛んで跳ねてぶつかって、さらには空中で捻りまで入ってくる始末。
キミ本当に乗せる気ある???と問いたいところ。
だがしかし、何となくではあるけるど少しずつコツを掴めてきた気がする。
鞍越しではなく直接背中に跨がっているからか、筋肉の動きがよくわかる。跳ねる前には態勢が前に傾くし、身体を捻るときは背中から腰にかけての筋肉が動く。それに体重移動を感じれば、次にどちらへ動くのか大体の予測はつく。
「フゥー………」
正真正銘これがラストチャンスである。
魚を食べ終わった騎獣が「早く乗れ」と姿勢を低くする。
跨がると同時に立ち上がると見せかけてそのまま跳ねる。
これは最初に落ちたやつ。
次は左へ跳んでそのまま木にぶつかろうとする。
これは素早く身体を右へずらして回避。
木を駆け昇るときは身体を前に倒して背中に張り付く。
そのまま空中へと身を踊らせ振り落とそうとしてくる。
これは身体を捻るのと逆側に体重を掛けることで、そもそも捻らせないように押さえ込む。
そのままどのくらい時間が経ったのか。
数秒にも数分にも数時間にも感じられたけれど、その成果は目の前にある。
「ぐるrrrrr………」
《騎獣のテイムに成功しました。騎獣に名前を付けて下さい───》
ぃよっっっっっっしゃあぁぁぁーーー!!!!
やった!やったよ!!
うぅ…マジで嬉しい……
あ、名前、名前ね。うん、わかったから尻尾で叩くのはやめようね。普通に痛いからね。
さて、名前ですか。
正直捕まえることしか考えてなくて全然考えてなかったな…
うぅん、と唸ってみるも中々思いつかない。
ここはファンタジーの定番らしく、神話の中から選ぶというのはどうだろう?
システムから外部の検索機能を使って探してみる。
ジャガージャガー…………お、あるね。
『テスカトリポカ』にジャガーの戦士である『オセロメー』か……
んーー………ピンとこない。
とういか単純に呼びにくくない?
うーんうーんと更に悩むこと暫し。
あーーもう思いつかないからアレでいいや!何か前に“昔の映画特集”で見た別の星に住む青い肌の現地民と交流するやつ、…なんて映画だっけ?とにかくそれに出てくる黒い猫科っぽい猛獣がちょっと似てるような気がする。いやアレは完全に化け物っぽかったんだけど。
でもその猛獣がラストの方では仲間になるっていうのが、ベタだけど熱い展開で好きだったんだよね。
確かそれが現地民たちに「めちゃくちゃ恐怖をもたらす者」的な意味で呼ばれてたのが、えっと、パ、パル……パルル……?
「よし、お前は『パルゥ』だ」
そういうことになった。




