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1.キャラクタークリエイト

───ピコンッ



ようやくインストールが終わったと通知が来たので、いそいそとベッドに寝転がりバイザーを装着する。


目を閉じればすぐにスーッと意識が遠のくような感覚が訪れ、また幾ばくもしない内に目が覚めたと思いきや、目の前には広大な宇宙空間のような星空が広がっていた。


いや、星空が広がっていたというよりは、星空の中に漂っていると言った方が正しいかもしれない。



《──初めまして巡り人様。ここではキャラクタークリエイトを行うことができます》

《ガイドに従い、それぞれの項目を確認・決定して下さい──》


中々お目にかかれない景色に密かにテンションを上げていると、脳内にアナウンスが流れてきた。


《まずはこの世界であなたの分身となるアバターを作成して下さい──》


目の前にフッと現れたのは、多少のデフォルメはされているものの、先ほどスキャンした自分を素体としたアバターだった。


VRゲームが売り出された最初の頃は、没入感を上げるために色々なものがかなりリアル寄りに作成されていたらしいけれど、逆にそれが原因となって『現実とゲームの区別がつかなくなる』なんて冗談のような事故が多々起こったそうだ。

特に未成年、ようは子供がそうなるケースか多く、やたら攻撃的になったり現実の自分に違和感を覚えたり、と本当に色々あったらしい。


それからは景色はともかく、キャラクターや出てくるモンスターなどはデフォルメを強くして“ゲーム感”を強くしたり、NPCにはあえて会話に吹き出しを着けたりなど『これはゲームなんだ!現実じゃない!』と印象付けるための涙ぐましい努力があったのだとか。

しかしよりリアル感を求める層も一定数はいるもので、そういったゲームは基本成人指定となっているものがほとんどである。


そして私がゲームに求めるのは没入感。

そう、どっぷりと浸れるこのRFOの世界も勿論成人指定である。


とそんなことはさておき、私はじっと自分の素体データを眺める。


普段は自キャラのキャラ設定まで考える私であるので、自分をベースにすることは滅多になく、1からアバターを作成するのが常だった。


しかしこれが中々難しく、デフォルメされたキャラならともかく、リアル寄りのアバターで思い通りに作るというのは結構センスがいる。

なのでこういったゲームでは自分をベースに色彩を変えたり少し弄って整える、といった方法が主流なのではあるが、それはそれで要らぬリアル感がついてきたりもする。


(さてどうするか……そもそも女キャラかぁ…前の粘着野郎共を思い出すとちょっとなぁ……)


とうんうん唸っていると、ある一つの項目が目に入った。


(ん?男体化…?)


何と自分をベースに男体化できるらしい。


(お?……おおっ!いいねいいね!あ、ちょっと冬李兄に似てる…かも?)


どこぞのラノベ展開のようだ!とテンションを上げつつも、自分の面影だけでなくどことなく双子の雰囲気も受け継いでいる姿に更にテンションが上がる。


(よしっ今回はこの男キャラにしよう!そしたらあと変更するのは……)


ここから更に調整を加えていく。

肌は褐色に。そして髪は現在ストレートのショートヘアなので、色を焦げ茶色にして肩甲骨辺りまで伸ばしてみる。前髪はかきあげた感じで額をだすのも悪くないかもしれない。

うむ、いい感じにワイルドである。

そして瞳の色は新緑を思わせる鮮やかな緑へ。


(あとはそうだなぁ…)


ゲーム内でプレイヤー同士の軽い交流なら好ましいけれど、執拗に絡まれるのは大変鬱陶しい。ということを最近学んだので、多少は絡まれにくそうな見た目にしたい。


(目は結構切れ長になってるしこのままでいいかな。背はもうちょい高くして、筋肉…はこのくらいかな。あとは眉毛ももうちょい角度つけて……)


最終調整を加え完成する。


(よしっ完璧だ!褐色肌のエキゾチックお兄さん!うん、一人称は“俺”かな。あと喋り方はちょっと柄悪そうな感じで。あとは……)


すでに何かをやり遂げた感はあるけれど、まだアバターを決めただけである。


《次は種族を決定して下さい。種族を決定するとアバターに補正がかかります──》


種族。

これもファンタジーなら定番であるが、ゲームによって色々と変わってくるだろう。今回は人族・獣人族・エルフ族・ドワーフ族・魔人族の5つの中から選ぶ形になっている。

さらに獣人族はその中でさらに5つに別れているので、実際は9種類の中から選べるようになっているらしい。中々細かい。


そしてその種族説明は、


□人族

平均的なステータス。

特に得意・不得意はなく、スキルの発現や成長が早い。


□獣人族

各種族ごとにそれぞれ特性がある。

狐族以外は基本的に知力が低い。


・犬人族

スタミナと素早さが上がりやすい。

パーティーを組んでいると戦闘開始時に味方に〈鼓舞〉の効果がつく。


・猫人族

素早さと攻撃が上がりやすい。

常時〈忍び足〉の効果により、敵に見つかりにくくなる。


・狐人族

器用と知力が上がりやすい。

スキル〈幻惑〉により、相手を混乱させることがある。


・熊人族

体力と攻撃が上がりやすい。

スキル〈威嚇〉により、戦闘開始時に敵を怯ませることがある。


・鳥人族

素早さと器用が上がりやすいが、体力が低い。

特性〈鷹の目〉により視野が広く命中率が高いが、夜は視力が下がる。

背中に小さな羽が生えているため、落下速度を遅くしたり、短い距離なら滑空が可能。しかし自力で飛ぶことはできない。


□エルフ族

魔力と知力が上がりやすく魔法系スキルの成長が早いが、打たれ弱い。

森の中での戦闘中ステータスにバフがかかる。


□ドワーフ族

スタミナと器用が上がりやすく生産系のスキルの成長が早いが、足が遅い。

始めから〈鍛冶〉と〈採掘〉のスキルを持っている。両手武器装備時に攻撃力が上がる。


□魔人族

始まりのステータスは低いが、レベルアップによる成長補正が高い。その代わり他の種族よりもスキルの成長が遅い。

始めから〈暗視〉のスキルを持っている。


といった感じである。

CMでは他にもここに出ていない種族も映っていたので、進化やら転生やらのシステムがあるのではないかと言われている。とても胸熱である。


《猫人族が選択されました。種族補正によるアバターの調整中………》


はい。

いやまあエキゾチックなお兄さんで猫耳なのもどうかとは思ったんですけどね?でもそれ以上に種族特性の常時〈忍び足〉が魅力的過ぎました…。多分これ常時ってことは、敵だけじゃなくてプレイヤーやNPCにも効くのでは?と。面倒事からはスルッと逃げる、大事だと思います。


さてあとは…


《次はスキルを選択して下さい。リストの中から最大10個まで選択できます──》


ふぅむ…

これは特に迷うことなく、双子の二人からお薦めされたスキルも取り入れつつポチポチと選んでいく。


《それでは最後にあなたの名前を決めて下さい──》


(んーそうだなぁ…。このキャラなら何かエキゾチックな名前がいいかな。……いやエキゾチックな名前ってなんだ?んー…うぅーん……あ、そうだ今回は性別が逆転してるから、夏樹も逆転させて……)


これでよし、と




《──登録が完了しました》


《以上でキャラクタークリエイトを終了いたします》


《………地上へ降り立つ準備が整いました》




《──おかえりなさいませ、ジュカ様。どうぞこの世界を心行くまでお楽しみ下さい。我々はあなたを歓迎します──》







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― 新着の感想 ―
最近出会うVR小説はキャラデザに凝らないタイプばかりだったので、キャラデザガチ勢としてこだわりのあるアバターを作ってくれる主人公でうれしいです! あとノーマルな獣人を初期種族に選ぶ主人公は珍しいのでそ…
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