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15.村はずれにある神像の清掃

承諾する前に受注されたクエストに若干モヤりつつも、まあどのみち受けるつもりではあったので老婆に詳細を尋ねる。


「チッ、わぁったよ。で?その神像ってのはどこにあンだよ」

「それならオレが知ってるぜ!前に父ちゃんと行ったことがあるんだ!」

「村を出て北に真っ直ぐ行った先にある大岩をちょっと右に逸れた所さね。まぁジョンの坊やがついてればすぐにわかるはずだよ」

「あ?外は魔物が出んじゃねーか。ガキ共は連れて行かねェぞ」

「「えー!なんで!?!?」」

「まぁそうなんだけどねぇ…。ただあの辺は地元の人間じゃないと迷いやすいのさ。ただ出てくる魔物はスライムと芋虫くらいなもんだからね、こっちからちょっかいさえかけなきゃ基本は安全なのさ」

「………ハァ。おいチビ共、面倒掛けんなよ」

「「はーーい!」」



ジュカの戦闘スタイルはどう考えても誰かを守ることには向いていないので、死んでも復活することのない住人はできれば連れて行きたくなかったのだけれど。しかし道案内必須と言われてしまえば承諾せざるを得ない。まあ出てくるのがスライムと芋虫だけなら問題はないでしょう。


ということでアンナとジョンを連れて神像が置いてあるという場所へと向かっているけれど、確かにこれは自分一人だと辿り着けなかったかもしれない。

まずシンプルに道がない。元々人が頻繁に通るような場所ではないらしく、獣道すら出来ていなかった。そして目印の大岩が全然目立ってない。というかそもそも大岩(?)くらいのサイズ感である。そりゃ地元民しかわからないでしょうよ。


「あっ見えた!兄ちゃんあそこだぜ!」

「あっジョン待ってよ~!」

「おい!走ンな!」


魔物は怖いが好奇心は旺盛。村からここまでそんなに離れてはいない筈なのに、やたらと疲れました。


頭をガシガシと掻きつつ追い付けば、目の前に広がるのは神秘的な光景……ではなく、やたらと荒れた広場のような場所だった。


「えっなんでこんなに荒れてるんだ!?」

「ぐちゃぐちゃだね~」

「神様の像も倒れてる!」

「あっもしかしてこの前あった嵐のせいかなぁ?」

「あ~……そういえば風とか凄かったもんな」

「うん、アンナ怖かったからママと一緒に寝たもん」


とうやら本来はもっと綺麗な場所らしい。

もしかしたらその嵐があったから、あの老婆も掃除に来たがっていたのかもしれない。


何にせよ依頼はこの辺りの清掃であるので、とっとと片付けてしまおう。


「おい、俺はこの辺を片付けるからウロチョロすんじゃねェぞ」

「兄ちゃん大丈夫だよ、この辺は魔物が出ないんだ」

「魔物が出ない……?」

「うん、前に来たときもこの辺だけ全然出なかったんだぜ!」

「いや、そこにいんじゃねーか」


ピッと指を差せば、そこには一匹の芋虫。落ちてる葉っぱをモシャモシャ食べている。


「あ、あれ!?前に来たときは確かにいなかったのに…。父ちゃんもここには魔物は出ないって言ってたんだぜ?」


…………ふむ。

もしかしてこれのせいか?と倒れている石像を見る。大分昔に作られたものらしく、所々苔むしていて表面も長年風雨に晒されていたせいか大分のっぺりして見える。これが神像と言われても正直言われなければ分からないレベルだと思う。


取り敢えずこの神像を起こして、〈魔法学〉のスキルを習得したときに覚えた生活魔法の【洗浄(クリーン)】を使い綺麗にしてから台座っぽい所に立ててみる。


すると神像から光が溢れ、波紋のように広がりやがて消えていった。


「わあ~きれーい!」

「すげー!今のなんだったんだ!?」

 

光が広がったのは神像を中心としたおよそ半径5mほどの範囲だろうか。この光に押し出されるように芋虫が逃げて行ったところを見るに、おそらくここはセーフゾーンになったのではなかろうか。セーフゾーンとは魔物が湧かず、野外であったとしても安全にログアウトが出来る場所のことである。ちなみに街や村の中は基本全てセーフゾーンである。


《神像を元の位置に戻したことによりセーフゾーンが復活しました──》


どうやら正解だったらしい。


「おい、さっき光った範囲内は安全だ。そっから出るなよ」

「「はーい!」」


しっかりと魔物の怖さを教わっているらしい子供たちは、良い子のお返事をした後はちゃんと安全な範囲内で遊んでいる模様。素直な子供たちである。


そんな子供たちを横目に、このセーフゾーンを作り出した神像を観察してみる。

てっきり神話にでてきた太陽の神なのかと思いきや、どうやら違うっぽい。この神像はたぶん女神ではなく男の神な気がする。なぜなら神殿で見た女神像は何がとは言わないけれどご立派だったので、とだけ。


神話の絵本にでてきていた男の神は確か…とメモを確認してみると、どうやら光の神と火の神が男神らしい。光の神は確か、儚く散っていく生命を「かあいそ…」と憐れんでくれる慈悲深い系神様だったのでたぶんこの神様なんじゃないかな。

火の神は世界に熱を与えたと言われる神様だし、戦神としての側面もあるっぽいのでたぶん違うと思う。


しかし光の神と言えば、住人たちの間では夫婦神としても祀られていたはず。確か憐れんで集めた生命の欠片を闇の神へ渡して、それを闇の神が星の元へとキャッチアンドリリースするまでがワンセット、みたいな感じで語られていたので二人で一つ的な扱いをされるのも納得ではある。

でもここにいるのは光の神だけなのか…。


まあそんなもんか…と思い掃除を続けていると、ふとあることに気が付いた。


セーフゾーンを示す光は既に消えてしまっているので、子供たちが間違って範囲外に出てしまわないように念のため目印を置いていたのだが(セーフゾーンの範囲はマップで確認できた)、よく見ると神像が立っている場所は円の中心ではなかった。微妙にズレている。


もしや…と台座を確認してみると、所々欠けたり崩れたりしていて分かりずらいけれど、たぶん崩れる前はもう一体置ける分くらいのスペースはありそうである。


「おいジョン、ここにあった神像は一体だけか?」

「?前に来たときはそれ一つだけだったよ」

「そうか」


台座が崩れた部分の角が取れて丸みを帯びているということは、崩れたのはおそらくかなり前なのだろう。もう一体の神像─たぶん闇の神─が近くに転がっている可能性は低いかもしれないが、結構な大きさの石像でもあるため遠くまで転がっていくとも考えにくい。まあたぶんだけど、このセーフゾーン内に転がっているんじゃないかな、と。


「おい二人とも、この範囲内でこれと似たような大きさの石像を探せ。見つけたら後でご褒美をくれてやる」

「何くれるんだ!?絶対見つける!」

「アンナもやる~!」


報酬で幼気な子供たちを釣りつつ、石像を探す。まあ範囲も狭いしすぐに見つかるでしょう…


「石像な~~い!」

「兄ちゃん本当に石像なんかあるの?全然見つかんないけど」


あっるぇ~~???

おかしいな…絶対このセーフゾーン内にあると思ったんだけど…。まさか外側にある?いやでも住人と一緒のクエストだし、敵は弱いけどわざわざ危険に晒すようなことさせないと思ったんだけどなあ。まだゲーム序盤も序盤のクエストだし。


うむむ…と悩んでいると、ちょうどジョンが腰掛けていた石に目がいった。


(あ、もしかして…)


「ジョン、ちょっとそこどけ」

「え~なんだよもお…」


ジョンを下がらせると、生活魔法の【穴堀り(ディグ)】を使って周りの土をどかす。

いやあ、生活魔法がとても便利。現実でも欲しい。


しかしこれ魔法が使えない人はどうするんだろうか。盾なら頑張れば掘れないこともない…?剣…は厳しそう。まあなんにせよ魔法があってよかった。


さてどれどれ……



[アイテム]風化した闇の女神像

[備考]長い年月放置されていたため崩れかけている。


………大丈夫かなこれ。

まあかろうじて形は保っているので、これにも【洗浄(クリーン)】をかけてもう一つの神像の横に置いてみる。


《特定の行動によりスキル〈修繕〉を習得しました──》


ん?

なんかスキルをゲットしたみたいなので、ステータスで確認してみる。


〈修繕〉:傷んだり、壊れたりしたものを繕い直す。レベルにより直せるものが増える。


ほうほう。どうやら対象となるものに大きさは関係なく、単純な作りのものなら低レベルでも修繕可能らしい。しかし複雑な作りのものほどレベルを上げないと修繕することは出来ない、と。

ということは、単純な石の作りであるこの女神像なら修繕出来るということでしょう。──いざ!


スキルを発動すると、風化しかけていたはずの女神像がファーっと光った後に精巧とまではいかないが、ああ女神様だなと分かる程度にデフォルメされた石像へと姿を変えた。

そうすると隣の神像がかなり哀しい感じになってしまったので、ついでに隣も〈修繕〉をかけておく。


「おお~!兄ちゃんすげ~!!」

「わあ!こっちは女神様だったんだね!」


子供たちがキャイキャイ喜んでいると、今度は女神像から光が溢れ再び波紋が広がていく。




《セーフゾーンが完全に復活しました──》

《セーフゾーンに自動回復機能が追加されます──》


───はい???

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知は力なり 好奇心旺盛な猫の本能が役に立ったネ
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