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14.レイネ村

『Viola』での撮影会は、あのあと空が暗くなるまで続いた。

私はぐったりしていたけれど、あの3人はそれはもうツヤツヤとしていたことをここに記しておこうと思う。世は理不尽なり。


あの3人なら撮ったSSを勝手に掲示板やらネットに上げるようなことはしないというのはわかっている。けれどいい作品が出来たのであれば宣伝したいというのもまた職人の性だとも思う。私だってRP勢。自分の作った作品(キャラ)を見てもらいたい気持ちはわかる。実際椿たちの作った作品はネットや掲示板に上げることで注目を浴び、今の人気を得るに至ったのだから。


しかしこの3人は私に起きた事件を知っているので、きっと自分たちからは「ネットに上げてもいいか?」などとは決して言い出さないと思う。

その心遣いはとても嬉しい。嬉しいのだけれど、私もまた椿たちの作品のファンの一人なのだ、自分のために作られた装備を自慢したい気持ちは勿論ある。


だってこの“ジュカ”というキャラクターのためだけに作られた装備が、ジュカに似合わない訳がないじゃないですか!めちゃくちゃカッコいいです!最高です!!

3人がジュカを好いてくれるように、私だって3人の作品が大好きです!


という訳でサクッとSSの掲載の許可を出すと、ひどく心配気な顔をさせてしまったけれど、そこはやはり嬉しそうでもあった。


それに忘れてもらっては困るのだけれど、なぜ今回私が“ジュカ”のようなキャラクターを作ったのか。まずこの絡まれにくそうな外見、そしてもし絡まれたとしても「うぜぇ」の一言で斬って捨ててきそうな性格にしたのは何故なのか。

まずジュカならば厄介な連中に絡まれたとしても、なんの遠慮もなく撃退することが出来るのだ。自分から他人に絡みに行くキャラでもないし、そもそも追いかけ回されるようなタイプでもないと思う。

というかこの外見なら絡まれないのでは?とさえ思う。だって自分ならこんな高身長の強面褐色猫耳男なんて絶対に話し掛けないのだけれど。


だから安心して欲しい!と伝えたのだけれど、なぜかとても微妙そうな顔をされてしまったのは何故なのか。


そんなこんなで最後に一悶着はあったものの、結局その日はもう何もやる気が起きない程度には疲労していたので、そのまま宿に帰って就寝した。ついでにログアウトして現実でも休憩。

SSを撮られるのはいいんだけれど、撮ってる時間が長過ぎるんよな……




リフレッシュしてからのログイン。

さて次は何をしようか。


少し悩んだ後、今日は再び街の外に出てみることにした。

前回探索したときは結局街の南側しか探索していなかったので、今回は東側の方へ行ってみようかな。


ちなみに次の街であるアインスベルは最初の街の南東にある。

徒歩で行くとこっちの時間で2日ほど掛かるので、必ず一度は野営を挟む必要がある。一応街に着くまでに小さな村もいくつかあるらしいので、そちらに寄れば野営の必要はないが大分遠回りになるらしい。

まあソロで行くのなら遠回りしてでも村経由で行くのが妥当かな。


確かもうすぐ頼んでいた椅子も完成するはずなので、次の街へ向かうのはその後にしようか。などと考えながらその辺にいる魔物たちをしばいていく。


実は街を出るついでに、武器である長杖も新調しておいたのだ。

住人作のいたってシンプルな杖ではあるけれど、むしろそこが良かった。プレイヤーメイドは確かに性能の良いものも多かったけれど、如何せん装飾過多であった。

雑魚敵相手であれば杖で殴ったり、突きや払いで相手のバランスを崩すのに使うことも多いので、装飾過多なものだと耐久が一気に削れてしまいそうな気がしたので手に取りにくかったのもある。


そうして装備を一新したこともあってサクサク進んでいると、目の前に小さな村が見えてきた。

村、というよりも集落といった規模感な気もする。周りを囲っているのも普通の木の柵だし、魔物の襲撃なんかは大丈夫なんだろうか?


まあ折角来たので村の中も色々と見てみたいね。

とは言っても店らしきものはパッと見た感じでは見当たらない。畑もあるっちゃあるけど小規模だし、もしかしたら奥に見える林での狩猟なんかがメインの村なのかもしれない。


しばらく村の中を歩いていると、遊んでいる子供たちを見かけた。

特に用事もないのでそのままスルーしようとすると、むしろ私に気付いた子供たちの方から寄って来た。


「ねえねえお兄ちゃん何してるの?」

「見かけない顔だ!兄ちゃん巡り人ってやつでしょ!」


突如絡んで来たのは、この村に住む少女アンナ(6才)と少年ジョン(6才)の二人である。

初対面の得体の知れない男にベラベラと個人情報を話す子供たちに一抹の不安を覚える。一応気を付けるようには言ったけれど、本当に理解したかどうかは謎。


子供たちの会話により判明したここ『レイネ村』は、小さな村で人口も少なそう。実際今この村にいる子供はこの二人だけなのだとか。そんな村に住むアンナは金髪のお下げに笑顔とソバカスがチャーミングな女の子である。ジョンの方は茶髪に猫目のイタズラ好きそうな顔をした活発な男の子である。

ちなみにこの二人、なんと将来を誓った仲であるそうです。お家も隣同士で生まれたときからずっと一緒で、これから先もずっと一緒に居るんだそうです。


6才にして既に将来設計が出来ている子供たちに震える。


暫く話をしていれば、以前は巡り人もちょこちょこ訪れていたらしいが、村に目ぼしいものは何も無いと分かるとほとんど来ることは無くなったそうだ。レイネ村は一応徒歩で行ける範囲に最初の街があるものの、ここに来るまで頻繁とまでは言わないけれど魔物との戦闘はそれなりにあったことを考えれば、気軽に街へ遊びに行くということも出来ないのであろう。目新しい話題もなく、変化に乏しい村では新たに訪れた私は格好の話し相手だったようです。


「わたしたちが村を案内してあげる!」と張り切った子供たちに連れられて村の探索を再開する。

「ここは猟師のトミーさんのお家!」「おっちゃんは罠作るのがすっげー上手いんだぜ!」と次々に個人情報を暴露する子供たちにこっちがハラハラする。別にゲーム内だからいいんだろうか?既に会ったこともないトミーさんなる人物の家がマップに登録されてしまったし……。そしてさっきの私の忠告は一切効いていなかったことを確信した。


微妙な気持ちになりつつも歩いていると、目の前をヨタヨタと歩く老婆が視界に入った。


「あれ、おばーちゃんどこ行くの?」

「ばーちゃん腰悪くしたんだろ?とーちゃんが言ってた。ちゃんと寝てなきゃダメじゃん!」

「あれまぁ、見つかっちまったよ」


どうやらこの老婆、腰を痛めているにも関わらずどこかへ出掛けようとしているらしい。


「ダメだよ!怪我したらちゃんと治るまでベッドで大人しくしてないとママに怒られちゃうんだよ!」

「そうだぜ!そもそもばーちゃんどこ行こうとしてたんだよ?」

「…はぁ。見つかっちまったもんはしょうがないね。ほれ、村の北に神様の像が置いてある場所があるだろう?ここんとこちっとも掃除に行けてなくてねぇ。今日は腰の調子もそんなに悪くないし、ちょっと行って掃除してこようと思っただけさ」


いや、さっきの姿を見るに大分ヨロヨロしていたと思うけれど。

子供たちもそう思ったらしく、キャンキャン喚いて止めている。しかし老婆的にはかなり大切な場所らしく、中々諦めようとしない。やがて業を煮やしたのか、ジョン少年が代わりに自分が行くと言い出した。


「ジョンが行くならわたしも行く!」

「アンナはダメだ!危ないだろ!?」

「ジョンだって危ないじゃない!絶対にアンナも行くからね!」

「どっちでも子供だけなんてダメに決まってるだろう?まったく、やれやれ…」


………正直「自分が代わりに行きましょうか?」と言いたい。

村の老婆が大切にする神像、絶対に何かありそうな予感しかしない。だがしかし、だがしかしである。これをジュカが自ら進んでやるか?と言われれば絶対にしない。むしろ面倒だからと断りそう。うぅ……ジレンマ…


そんな私を置いてやいのやいの言っていた子供たちがハッとしたようにこっちを振り返った。


「そうだ!兄ちゃんに一緒に来てもらえばいいんだ!」

「そっか、お兄ちゃんは村の外から一人で来たんだもんね!一緒に行ってくれたら安心だね!」


この子供たちからの謎の信頼感は一体何なのか。

そもそもさっき会ったばかりの人間に護衛を頼むんじゃありません。


「あ?めんどくせェ、何で俺が…」

「だって兄ちゃんも気になるんだろ?」

「お兄ちゃんのお耳ピーンってなってるし、尻尾もご機嫌さんだもんね!うちのミーちゃんと一緒!」

「……………」



耳と尻尾!?耳と尻尾ですか!?!?恥っっっっず!!!!しかも幼女に飼い猫っぽい何かと同じ扱いされてません!?!?



あまりの恥ずかしさと居た堪れなさに、不機嫌顔で目を反らす。顔が熱い気がするけれど、気のせいだと思いたい。

それをアンナはニコニコと、ジョンはニヤニヤと見ているので更に居た堪れない。ついでに老婆もニヤニヤとこちらを見ている。


獣人族にしたのは失敗だったかもしれない。まさか耳と尻尾にこんなに感情が出るとは思ってなかったんですけど……?


「ふん、まあ悪い奴じゃあなさそうだね。それならあんたたちに任せるとしようか。」



──ピロンッ

《クエスト「村はずれにある神像の清掃」を受注しました──》



いや、まだ受けるとは一言も言ってませんけど!?!?!?

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― 新着の感想 ―
ハアハアしちゃう(笑)
イケメンのツンデレは幅広く需要がある
掲示板でツンデレさん認定される日も近いな?
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