第2話 選ばれし者
西の大地、マルザント峠。
精霊の森と南にあるマルザントの町を繋いでる峠の道だ。
この峠には“若草色の祠”という神聖な祠があるというが見える者にしか見えないという。
それとは別に最近、粘土でできた怪物が出るとの噂があった。
だがそんなことも知らずロイディオは峠を越えようとしていた。
ロイディオは急ぐわけもなく、かといって休むわけもなく、風ゆく方へゆるりと一歩一歩踏みしめていた。
…するとロイディオはふと考えた。
「俺にはこの先、どんな冒険が待っているんだ?この先、どんな奴らと出会うんだ?」
そう考えていると…、ロイディオの耳に少女の悲鳴が響き渡って来たのだ。
ロイディオ「なんだ!?」
???「きゃああーーッ!!誰か助けてーーー!!」
ロイディオは悲鳴の聞こえた方へと向かった。
そこにはピンク色の髪の少女が木に登り怯えていた。
木の根元を見ると『ビッグローラー』という巨大なダンゴムシのモンスターがちょろちょろ動いていた。
ロイディオ「なんだ〜。ビッグローラーじゃないか。」
???「なんだ〜じゃないわよ~!?早くやっつけてよお!!」
少女は虫が苦手なようだ。
ロイディオ「その必要はないさ。ビッグローラー!お前またはぐれたんだな?」
なんとロイディオはビッグローラーと友達であったのだ。
ビッグローラー「群れをどこかで見なかったかこの子に聞いたんだが怖がって答えてくれないんだよお。」
ロイディオ「お前の群れは北にいたぞ。もうはぐれるんじゃないぞー!!」
そう言うとビッグローラーは北へ向かって走って行った。
???「ふう、あ…さっきはありがとう!あたしはセレデネ!!あんたは?」
少女はセレデネと言った。西の大地の北部でよく聞く名前だ。
ロイディオ「俺の名はロイディオ。精霊の森出身だ。」
セレデネ「あんた、精霊の森の出身なの?だったらもしかして“あれ”知ったりしてない?」
ロイディオ「ん?なんだそりゃ?」
その“あれ”という言葉を聞いてロイディオは何も浮かばなかった。
セレデネ「はあ~、知らないか……。“伝説の12色の雫”の一つ“若草色の雫”がこのあたりにあるって聞いてシルヴェーデンからはるばる来たのに……。」
シルヴェーデンは西の大地北部の町である。
セレデネ「じゃあねえ!!」
ロイディオはセレデネと別れた。
しかしロイディオはさっきの言葉が少し気がかりだった。
ロイディオ「若草色の雫……。なんか聞いたことある気が………。まあいいか。」
ロイディオは歩き出した。
すると突然ロイディオの周りを霧が覆った。
ロイディオ「な、なんだ!?」
ロイディオは前が見えないがこのまま立ち止まってもしかたないと前へ前へと進んだ。
その時!ロイディオの目の前が光った。
その光と同時に今まで見たこともない光輝く大きな虎のような狼のようなモンスターが立っていた。
ロイディオ「お、お前は?一体……?」
ロイディオは何故かそのモンスターに引き寄せられるように、ついていった。
するとモンスターはいつの間にか
いなくなりそこには………。
ロイディオ「これは………!!」
そう、若草色の祠であった。
ロイディオは中に入って見た。とすると………!
「そなたは選ばれし者。
我はそなたにこの若草色の雫を託す。
この雫がそなたを他の選ばれし者と繋ぐであろう。」
どこからともなく謎の声が聞こえて来た。
ロイディオ「お前は一体誰だ!?選ばれし者!?どういう事だ!?答えてくれよ!!」
謎の声はロイディオの言葉に答えてくれなかった。
だが……光とともに若草色の雫の形をした宝石がロイディオの手元に現れたその瞬間、ロイディオは何かを悟ったかのように、選ばれし者という意味が少しわかったような気がした。
目をゆっくり閉じるとぼんやりとしか見えないが多くの仲間がロイディオのそばにいるようなものが見えた。そして目を開けるとそこはマルザント峠だった。
ロイディオは夢を見ていたのかと思った。
しかし!
ロイディオ「若草色の雫……。やっぱり夢じゃないのか。」
ロイディオはしっかりと手に若草色の雫を持っていた。
その時ロイディオに再び声が聞こえて来た。
「シェイバーロン城へ行くのだ。そこでデントレインを手に入れるのだ。そなたはデントラーにならなければならぬ。」
ロイディオ「シェイバーロン城か……。
行ってみよう。」
ロイディオはデントラーになることを決意し強く胸に刻んだ。
そして峠を抜ける最後の草むら。
セレデネはそのあたりを探していた。
セレデネ「こんなとこにあるわけ無いか。」
すると突然、謎の雄叫びが響き渡って来たのだ。
???「ぐわおおおおおお!!!」
セレデネ「何?!」
慌ててセレデネは後ろを振り向いた!
そこには粘土の怪獣ねんどマンの姿があった!!
セレデネ「あ!あんたもロイディオの友達ね?仲間とはぐれたの?」
そこにロイディオがやって来たのだ。
ロイディオ「ん?セレデネじゃないか。そっちはお前の友達か?」
セレデネ「あ!ロイディオ!何言ってんのよ!あんたの友達でしょ?」
ロイディオ「俺はそんな奴見たことないぞ?」
セレデネ「え?じゃあこいつは…………?」
ねんどマン「ぎゅええええええ!!!」
ねんどマンは凶暴な魔物だ!!
ロイディオ達に襲いかかった!!
セレデネ「はあ!!」
セレデネはムチでねんどマンを叩いた!!
しかしねんどマンは弾力性のボディでガードした。
ねんどマンはパンチ連打で突撃してきた!!
ロイディオ「物理はだめでも魔法なら効くはず!!シャイン!!」
ロイディオの手の平が光り、光の波動を放出した!!
ねんどマンはシャインで砕けた。
セレデネ「やったわね!」
セレデネは安心した。しかし!
ロイディオ「いや、まだだ、まだ倒せてない!」
ねんどマン「ぐわおおおぉぉおおお!!!」
雄叫びとともに瞬く間にねんどマンの群れが集まった!!
ロイディオ「セレデネは下がってろ!!シャイン!!シャイン!!………!」
ロイディオはそう言って何度も何度もシャインを唱えた!!
倒しても倒しても減らない、ねんどマンがついにロイディオのふところに潜り込んだ!!
ロイディオ「しまった!!」
セレデネ「ロイディオ!!」
ロイディオはもうだめだ!と思ったその時!!
あの霧が中で見たモンスターがロイディオの背後に現れたのだ!!
セレデネ「何あのモンスター!!こんな神々しいモンスターが存在するの?」
ロイディオ「お前!!来てくれたのか!!」
その神々しいモンスターはロイディオに光を浴びさせた!!
するとロイディオに力がみなぎってきた!!
ロイディオ「よーしっ!!行くぞ!!全力パワーのシャインをくらええ!!!」
ロイディオは手の平からものすごい光を放ちねんどマンを全てついにやっつけた!!
ねんどマン「ぐばばっっ………!!」
ロイディオ「ありがとう…!…え?」
セレデネ「え?消えちゃった……!」
神々しいモンスターは霧が風に吹かれるように消えていった。
そして……。
セレデネ「え!?若草色の雫手に入れたの?見せて!!本物だわ!!」
ロイディオ「悪いけどあげることはできねえこれは…この雫は俺を選ばれし者の場所へと導くんだ。」
セレデネ「そっか。あたしの宝石コレクションに入れたかったけど。しかたないわね。
あ!そうだ!あたしも一緒について行ってもいい?」
ロイディオ「別にいいけど。俺はデントラーになるけどいいんだな?」
セレデネ「え!!?そうなの?人前では言えないけど実はあたしも見習いだけどデントラーなの。宝目当てのトレジャーデントラーってとこかしら。」
ロイディオ「そっか!じゃあお前は宝探し!俺は真実を知るため!ちょっと目的は違うけど、同じデントラーなんだ!終点はきっと同じさ!よろしくなセレデネ!!」
ロイディオは空を見上げた。
セレデネ「うん!よろしく!(若草色の雫がだめだったけど、他にも宝石はいっぱい見つかる予感!!これは楽しみね!!)」
ロイディオ「よし!!まずはデントレインを探すぞ!!!」
こうしてロイディオは最初の冒険を難なく通り過ぎたのだった!!