壊れかけの教会
壊れかけの教会の中。
食事などが終わった後ファーストは、教会の中にいた。
「かなり傷んでいるな。一度壊すか。」
と言うと教会の中の品物を次々に収納し出し、その後がらんとなった教会に手を触れると
「性質変換」
と唱えると教会は砂山に変わっていた。
そして再度砂山に手をつけながら
「性質変換」
と唱え、ブロックに変えると収納していった。
更地になった教会後に手をつき土魔法で地下室と基礎を作る。
横に森で切り倒していた樹木を数十本取りだし、魔法で柱や板に変えていった。
山の様に積まれる建築資材を後ろから見ていたシスターは、祈ってばかり。
収納から取り出した鉱石類を錬成や性質変換で鉄筋の様に変えると、骨組みを作り上げる。
上の方は空を飛びながら接合していると、下の方で子供らが騒いでいた。
「すげー、空飛んでるぞ。」
「魔法使いだ。」
と言うように。
その後夕方ごろまで作業して、教会は見違えるような建物に生まれ変わった。
内装も古いものを作り替えたりして配置すると、とてもいい感じの教会になった。
裏の方を見ると長屋のようなものがあり、そこが子供やシスターの生活の場所のようだった。
「ここも立て替えるか、でもそれは明日だな。」
と言うとシスターに昼に渡した肉で料理するように言うと調味料を手渡して、ファーストは街に消えた。
シスターの料理ができた頃戻ってきたファーストは、
「今日は俺の家で寝泊まりすればいい。食事も運んできてくれ。」
「お前らはもう一度風呂に入って、綺麗になりなさい。飯はそれからだ。」
と言うと今度は男女別に風呂に入るように言いつけた。
ファーストはシスターに着替え用の服を人数分手渡すと、
「寝具の準備をするので子供らは頼むよ。」
と言って二階に上がっていった。
二階にはファーストの寝室以外に4つの部屋があった。
そこに寝具を男女別に準備すると、シスター用のベッドも準備して下に降りた。
風呂から上がった子供らがおとなしくテーブルに付いている。
「よし綺麗になったな、それじゃ飯を食べようか。」
と言うと子供たちは、お祈りをしておとなしく食事を始めた。
ーー シスター ルシファー 17歳
私は街外れの古びた教会で育った。
私を育ててくれたシスターは、3年前に身体を壊し亡くなってしまった。
その後は私がシスターとして、子供達の面倒を見てきたがもう限界に近かった。
食事や飲む水にも困る生活は、子供の成長にも悪影響していたし、私も最近力が入らないことがあった。
前のシスターの容態に似ている、私も長くないのかもしれない。そう思っていた時にあの方が現れた。
子供の姿をしているが、決して子供ではない。
そして神につながるものだと言ってくださった。
私は涙を流せずにはいられなかったが、それを見せるわけにはいかなかった。
しかし彼の優しさは、言葉以上に心に染みるものでした。
美味しい食事も美味しい水も、温かく柔らかい服に気持ちの良いお風呂で綺麗になった体。
どれもこの世のものとは思えないほど。
彼はこれからどうしようと言うのでしょうか。
見守り従うしかないのかもしれません。
神に祈りを。
ーー 7/9 2
ーー 教会立て直し。
ファーストは次の日の朝早くから作業をしていた。
古く壊れそうな建物を性質変換しながら収納する。
更地にすると、ここでも地下室を作って立派な二階建ての建物を二つ建てた。
一つは宿舎で、もう一つは厨房や食堂にお風呂場。
大きな教室のような部屋に作業場のような部屋まで備えていた。
「コレで一通りは完成かな、後はコレを利用するものだな。」
と独り言を言うファーストは、庭に井戸を掘り出した。
当然一瞬で水が湧き出る、それをパイプに繋いで教会の施設につなげる。
その後は教会の周囲を壁で囲み始めた。
「壊れかけの教会に手を出さなくても、今の教会なら手を出し始めるだろう」
ファーストは昨日のうちにシスターから教会の借金について、聞いていたのでその対応をしているのだ。
壁が出来上がった頃に、カタギじゃなさそうな男達が10人ほどやってきた。
「話は本当だったな、こりゃ高く売れそうだぜ」
と男らは話しながら教会の敷地に入ろうとした。
「そこで待て!コレから先は俺の許可がいる。」
と言うファーストに男が笑いながら
「ガキが何を言いやがる。大きなことは金払ってから言え!」
と脅すように言う男に足元に袋が投げられた。
「そこに借金以上の金が入っている、これ以上ここにちょっかいを出せば死ぬぜ。」
とファーストは言う。
男は金の入った袋を拾い中を確かめると
「足らねえな。」
と言いながら敷地に踏み込んだ。
「ズドーン。」
男の目の前に稲妻が落ちた、腰を抜かすように座り込んだ男に
「言ったろ、殺すと。雇い主に証文を持って来させな。今日の昼まで待ってやろう、それが過ぎたら直接出向くがそん時は覚悟しておきな。」
と言ってさらに稲妻を撃ち落とした、男らは逃げるように消えていった。
それを見ていたシスターや子供達は大喜びしていたが、ファーストまだ終わっていないと思っていた。
◇
その日の昼過ぎ。
「やっぱりか。しょうがねえな。」
言いながらファーストは、街に向かって歩き出すがその際、何事か呟いていた。
ファーストが教会から出るのを遠くから見ていた男が
「やろう出てきましたぜ。」
と別の男に報告した。
「手はず通りやれよ。」
と言うと男は、大きな屋敷の中に消えた。
ファーストは大きな屋敷の前に来ていた。
「教会から来たファーストという者だ、主人に取りつげ。」
厳しい態度のファーストに追い返そうとしていた、門番が慌てて中に入れながら、屋敷に連絡を取りだした。
屋敷の入り口まで来たファーストに屋敷の家令と思われる男が対応してきた。
「ご当主様は忙しいお方しばらく時間が掛かると思われますが、お待ちしますか?」
と丁寧であるが見下した態度であった。
「俺に不敬だな。」と言うとファーストは威圧をしながら玄関の扉を開けて、中にずかずかと進む。
威圧のため身動きできない家令、やっとのことで声が出るようになると、
「不埒者です。」
と大声を上げた、すると柄の悪い男らが20人ほどわらわらと出てきた。
しかし誰もファーストの前に立つと、身動きができなくなりある者はは泡を吹き、ある者は腰を抜かして役に立たなかった。
ファーストはそのまま階段を上がり、当主のいると思われる部屋のドアを開くと中に入っていった。
部屋には男が3人いたが、入って来たファーストを見て二人が慌てて立ち塞ごうとしたが、泡を吹いて倒れた。
「お前がここの主人か?」
と問うと震えながら頷く男
「俺の言付けを聞いているだろう、俺を煩わせればその報いを受けると伝えたはずだが、お前は馬鹿なのか?」
と言えば
「誰がお前のような子供の言葉に従うものか。コレでお前も教会も終わりだ。」
と強がるように言う男
「お前は本物のバカだな。教会は神の家だ。お前は俺を怒らせたのだ、終わるのはお前の方だと知るが良い。」
と言うとファーストは右手を上げた。
「ライジン」
一言言うと、遠く教会の方で大きな稲妻が光音が屋敷を震わせた。
「今のはお前が教会の者にいらぬことをさせようと、向けたもの達への天罰だ。次はお前の番だ。生きていたければ直ぐにここを出ることだ。」
と言うとファーストは、屋敷中に響く声で
「後5分でこの屋敷は崩れ去る、生きたいものは逃げよ。」
と言いながら外の出た。
5分後、ファーストは右手を上げると
「天の裁きを受けよ、ライジン」
と呟いた。
「ドドーン。」
周囲が光で真っ白になり、大きな雷鳴が鼓膜を破りそうな勢いでその場の者を包み込んだ。
音が消え色が戻ったその場には、屋敷であった物の残骸が山の様になり、燻っていた。
「神を愚弄する者どもよ聞け!今日より不届き者はこのファーストが処断する。」
と言うと教会の方に歩いて消えた。
教会の付近には黒焦げの男達が15人ほど居た。
近くの男に
「邪魔な死体を片付けてくれ、神の怒りに触れたものだ教会には入れられぬ。」
と言うと銀貨を何枚か渡した。
教会の門を潜り、ファーストが戻ると子供達が集まって来た。
「お兄ちゃん怖かったよ。男らが教会に入ろうとしたんだ、そしたら雷が男を・・。」
「そうか、でも心配いらんぞ、その雷は神のイカズチだ。悪いものを懲らしめるものだからお前達に落ちることはない。」
と安心させながら、教会の中に入った。
シスターは女神に祈りを捧げていた。ファーストに気づくと
「お帰りになられましたか、それでどうでしたか?」
と俺の用事が済んだか心配していたようだ。
「ああ、問題ない。」
と答えると
「風呂に入ってくる」
と言い残してファーストは家に帰っていった。
ーー サハラ王国、王城。
「先程の雷は神を名乗るものが起こしたと申すか。」
国王は報告者に問いただした。
先日来から「神の化身」とか「神」を名乗る者がいるとの報告がいくつも来ていたのだ、ただのホラであれば国王まで報告させることもない話であるが、その中心人物が幾つものオアシスを作り、空を飛び、貧しき民を助けているとの確認できる事実に、国王は酷く悩んでいた。
そこに先程の目も眩むような光と音、そして王都の大商人の一つが消えたと報告があった。
大商人の屋敷に子供が現れ、「神の天罰を受けよ。」と言いながら雷を落とし屋敷を灰にしたと言う。
生き残りはその子供の
「生きたければ逃げるが良い。」
と言う言葉に従い、外に出たものばかり。
商人は自分のお金に目が眩み逃げ出すことができずに、黒焦げとなったと。
さらには教会にて、商人の配下の者が不法にも教会を占拠しようとして同じく黒焦げに。
コレらの情報を聞いて国王は傍の宰相に
「お前はどう思う」
と問うた。
宰相はしばらく考えていたが、
「話を聞くにその子供の仕業に間違いないと、思いますがそれが神又は使徒とは思えませぬが、手を出すのは得策でないと思われます。本物であれば国が滅びるでしょう、偽物であってもどれだけの被害が出るかわかりません。
ここは静観する事にしましょう。あの商人は裏でかなり悪どい商売をしていたとの噂もありました、これを機にそのような者との取引はやめてはいかがでしょうか。」
と答えた。
即答出来ぬ話に国王も
「分かった、しばし静観しよう。家臣の者にも注意をしておいてくれ。」
と言うと下がっていった。