11歳、戦いはこれから
11歳になった俺。
大きな温泉施設の横に家を建てていたが、それが完成した。
水回りは、蛇口をひねると水とお湯が出る仕組みだ。
お風呂はシャワー付でいつでも入ることができる。
耐熱レンガでカマドを作り、薪ストーブも作ったが床に温泉の源泉で温めたお湯を通しているので床暖になっている。
隙間は少なく丈夫な柱で屋根を支え、採光と風通しを考えて設計した。
その頃になると突然開拓がうまくゆき裕福になった開拓村の、旨みを横取りしようとするものが現れた。
この地を治める領主だ。
ただ開拓村については、王に許可を受けての開拓であるため領主といえども横取りはできないのだが。
ここを治めるスノーメル=トランド子爵は、強欲で強引な男だった。
「視察名目で兵を送り、鹵獲して我が子爵領の村として来なさい。」
と、子爵の私兵に命じた。
兵の数200人、対する開拓村は女子供合わせて50人。
とてもではないが抵抗できるものではない、普通ならば。
突然開拓村の前に兵士200人が現れたが、水濠と見上げるような城壁に焦り始めた。
「これはどういうことだ、まるで城塞都市のようではないか。こんなものを開拓村で作ることが可能なのか?」
現場に現れた兵の隊長が焦りながらも
「中に入ればなんとかなるだろう」
と思い直して、門に向かって声を張り上げた。
「我らはこの地域を管理するトランド子爵の者だ、責任者は門を開け我らを中に入れよ。」
と。
すると城壁の上からリーダーのステファンが
「何用で開拓村に来られた。」
と臆することなく兵士に尋ねる。
突然の問いに慌てた隊長が、
「トランド子爵の命できた。我らを迎え入れよ。」
と命令口調で答えると、城壁の男は
「そのような用件は聞いていない。出直して来るように。」
と言って姿を消した。
このままおめおめと帰ることはできないと思った兵らは強硬手段にで始めた。
ーー 村を襲う兵士200、そして1000の兵士とファースト
「弓を打て!」
隊長の言葉に兵士が弓を引き絞り放つ。
数百の矢が城壁を超えて行くが効果がわからない。
弓が尽きるほど打ち込むも全く反応がない事態に焦る兵士。
すると城壁の上に盾を手にした男らが現れた。
何をするのかと見ていると大きな何かを操作しているようだったが、兵士に向かって置かれたその道具が自分達を狙っているのがわかり始め、慌て出す兵士らに火を吹く何か。
そして吹き飛び始める兵士。
怪我をした兵士を抱えて命辛々逃げ帰った兵士たちは、子爵に報告した。
「とてもではありませんが、あの開拓村は攻め落とすことは無理です。」
と言う兵士の言葉に納得できない子爵は、冒険者と隣の男爵の兵を借り受けて1000の兵士で自ら先導して開拓村に向かった。
「コレはなんだ。」
城壁を見ながら子爵は隊長に声をかける。
「報告したように開拓村の城壁です。」
と答える。
万一を考えて攻城兵器を持ち込んでいた子爵は、
「扉を壊して攻め込め。」
と命令した。
命令されたのは良いが兵士たちは困っていた。
はば10mほどの堀が行手を拒んでいる、深さもかなりありそうだ。
「隊長どうしますか?」
と聞かれた隊長は
「周囲を探って狭いところを探せ」
と部下に命令した。
その頃開拓村内では、ステファンがファーストを呼んで、コレからのことを協議していた。
「あれだけやられてまた来るとは、トランド子爵は馬鹿なのか」
と言うファーストにステファンが
「この開拓村を直接目にしなければ分からないさ。」
と言いながら
「コレからどうする。」
と聞いてきた、俺は最近作った魔道具を見せながら
「コレは目の前の映像と音を取り込むことができる魔道具だ。コレを城壁の上に設置してから子爵軍を叩くよ。」
と言うと城壁に登り出した。
「ここにこうして・・上手く設置できたぞ、後は・・コレの起動をして・・よし。」
と呟きながら準備を終えた俺は、横に立つステファンに魔道具を持たせて紙を見せた。
「コレを読んで」
という。
ステファンが魔道具を口元に紙に書かれた文章を読み上げる。
「ああ・・、こちらは王より許可を受けた開拓村である、ここを武力で攻めるは国王に弓引くこと直ちに立ち去りなさい。これ以上の武力攻撃は武力を持って対抗する、トランド子爵の返事はいかがか?」
と魔道具による大きな声は子爵のもとにはっきりと聞こえていた。
馬鹿にされたと感じたトランド子爵は、
「思い上がるな!この開拓村の全てをこのトランド子爵が接収する。」
と大声で答えた。
「よし。」
と横のファーストの声を聞きながらステファンは、もうなるようになれと思った。
周囲を調べていた兵士が戻ってきた
「どうだどこかいい場所はあったか?」
との隊長の問いに兵士は首を振りながら
「どこもここと一緒です、しかもものすごく長大です。やめましょう隊長無理ですよ。」
と言う報告に頷きたくなる隊長は、子爵の様子を見ながら
「やるしかないんだ。」
と諦めの言葉を口にして、立ち上がると
「総攻撃をする、弓兵は紐を結んで攻城の準備をせよ。残りは浮き橋を作り堀を渡るぞ。」
と命令を下した。
筏のような浮橋ができつつあるのを見ながらファーストは、油を用意させていた。
「あの橋を水濠に浮かべたらこの油を落とせ。」
と近くの男に言うと開拓村の女子供に家の中から出ないように伝えた。
「橋を浮かべて弓を射よ!」
下の方で声がして足音が近づいてきた。
「バシャン」
水の音がした、すかさず油のツボを持つ男が浮橋に次々とツボを落として行く。
俺はそれに火のついた松明を投げ込むだけ。
浮橋に乗り城壁にしがみつき始めた多くの兵の足元から炎が噴き上がる。
悲鳴をあげては水濠に落ちる兵士達、その油が水濠の上に炎の壁を作り始める。
「退却だ!下がれ!」
兵の隊長が号令を下す、火傷をした兵の数は100人ほど。
死者はいないが手当てをしなければ分からない。
「何をしておる、早く攻略せよ!」
と子爵が大声を上げるが、兵の指士気が低い。
そこにあの砲撃が兵士を襲い出した。
以前はそこまで大怪我をした者は居なかったが、今回は何かが飛び出してきた。
「コレは・・クギなのか?何かが塗られている!毒か。」
隊長は絶望的になった。
「子爵様、ただちに引き返しましょう。これ以上は危険です。」
と進言するも子爵は
「お前はクビだ!お前、お前が隊長をしろ!」
と隣の男に命じた。
「はいお任せあれ。」
とその男は答えて
「怯むな!弓を打て、火矢を打ち込め。」
と号令し始めた。
その直後新たな隊長は爆音と共に吹き飛んだ。
首になった元隊長は慌てて子爵の方を振り返った。
「子爵様・・・。」
身体中に釘を打ち込まれたような姿の子爵はそのまま後ろに倒れると、息を引き取った。
「撤退だ!引き返せ。」
元隊長は大声でそう言うと子爵の死体を引き摺りながら下がっていった。
兵士たちの姿を見えなくなったことで、ファースト達はなね橋を下ろして周囲の被害を確認した。
「城壁に被害はありません。」
報告を受けたファーストは近くに大きな穴を掘り兵士の死骸を埋めた後、墓標を建てた。
【無謀な作戦の為、命を散らした兵士の魂をここに祀る。】
と彫った墓標を。
その後適当な嘘を作り国王に報告した子爵家の跡取りの策で、逆賊の汚名を着せられた開拓村に討伐命令が下された。
差し向かわされた兵士約5000。
開拓村の城壁の前に陣取り討伐隊の隊長である、王家の騎士隊長が開拓村に使者を出した。
すると使者は子供を1人連れて戻ってきた。
「お前は何者だ。」
隊長の質問に子供は
「私は開拓村の使者です。あなたがここの責任者ですか?」
と尋ねてきた。
「そうだ」
と答えると少年は、一つの魔道具を取り出して白い布を目の前の兵士に黒い布をその他の兵士に渡しながら
「白い布はこの辺りに、黒い布は周りの光を遮るように立ててください。」
と言いながら隊長に対峙すると
「今回のトランド子爵の蛮行をここに記録しております。確認をお願いします、コレを見てそれでも我が開拓村を攻めるのであれば覚悟してもらいますよ。」
と言いながら魔道具を起動した。
魔道具から流れる声と映像はそこに本人がいるような物だった。
「確かに・・トランド子爵が国王の許可を得た開拓村を襲っていることは分かった。ただそれでも子爵の命は軽くはない。」
と言う隊長に俺は
「先ほども言いましたが、責めるなら覚悟してくださいよ。その時俺は慈悲を持たない殺戮者となり、この国を蹂躙することになるでしょう。」
と言って魔道具を片付けるとテントを後に歩き出した。
「あの子供を捕らえよ。」
隊長がそう兵士に命じたその次の瞬間。
飛び掛かる兵士が吹き飛んだ。
「何があった?」
隊長の声が響く。
その時の俺のステータスは
ステータス
名前 ファースト 年齢11歳 性別 男 種族 人族(?) レベル120(200)
HP 12000(22000) MP25000(50000) VIT2000(30000) STR30000(45000)
AGI15000(12000) DEX800(3000) LUK50(30)
スキル
アイテムボックス 鑑定 身体異常無効 魔法全属性 魔力超回復
剣術 体術 槍術 弓術 投擲 気配察知 気配遮断
創造魔法
火魔法 土魔法 水魔法 風魔法 氷魔法 雷魔法 光魔法 闇魔法
時空魔法 収納魔法 錬金魔法 転移魔法 飛翔魔法
加護
女神スベラートの加護
になっていた。
このステータスの俺を生身の人間が止めることはほぼ無理である。
収納から剣を出すと隊長に向け、
「ここでやるならそれでもいいでしょう。どうしますか?」
と言いながら俺は空に舞い上がる。
「空を!まさか・・・。待、待ってくれ。わしに時間をくれ。」
と言う隊長に俺は
「明日の朝までです。」
と言って開拓村に飛んで帰った。
ーー 王国の騎士隊長 ぜガール
俺は王家の騎士隊長ダンディー子爵。
王命によりこの開拓村に謀反の恐れありと言う理由で派遣されたが、先ほどの魔道具を確認するに謀反は子爵にある。
しかしだからと言ってこのまま帰るわけもいかず・・・あの砦をいや先ずあの少年を倒すことが可能なのか。
時間がない彼は「明日の朝まで」と言った。非のない者を攻め込むことと、貴族の対面を守るのは同じことなのか?王命を無視した子爵こそ罰せられるべきではないだろうか。
俺は、すぐさま子爵の屋敷に馬を向けた。
「主だった者をあつめてもらいましょう、直ちに。」
俺はトランド子爵のものを集めてもらい話を切り出した。
「先日の開拓村の件について本当のことを伺いたい。先ほど開拓村を襲うトランド子爵の証拠を見せられてきました。言い逃れられない証拠です。それを持って開拓村を逆賊と言うのであれば、私は討伐をすることができません。トランド子爵の一族がすべきで我々はそれを確認するものということになります。そしてその時間は明日の朝までです。それ以降は我々は王都に引き返し国王に報告することになります。いかがしますか?」
と言う俺の話に居合わせたトランド子爵の面々は、真っ青になって話し合い始めた。
しかし結果は分かりきっている。トランド子爵の手勢であの開拓村を殲滅できなければトランド子爵家がお取りつぶしになるのだ。
「分かりました。我々が恥辱を濯ぎましょう。」
代表の者がそう言うと出陣の準備に動き出した。
夜半に開拓村の前に戻った俺は、開拓村の城壁に向かい声をかけた。
「俺は王都騎士隊長のダンディーだ。先ほどの少年に会いたい。」
と声を張り上げるとしばらくして、あの少年が空から降りてきた。
「期限は明日の朝のはずだが。」
と言う少年に俺は
「我らは開拓村に一切手を出さない。しかしトランド子爵の兵は明日にでもここを攻めるだろう。そうしなければあの家はおしまいだからだ。それを伝えにきた。」
と言うと少年は。
「了解した、結果を見定めて報告するのだな。それならおれの力を十分に見て帰ってくれ、刃を向ければどうなるか正しく報告するために。」
と答えて少年は空に舞い上がった。