異世界の村
ーー 初めての集落。
開拓村は人口50人ほどの村で、20世帯ほどが暮らしている。
産業は主に森で採れる、魔物・獣それと薬草だ。
素材を加工して街に運び売るようだ。
リーダーはアリスの父親で、元Aランクの冒険者のようだ。
開拓村の場合、冒険者を引退した者や現役の冒険者が成功報酬の貴族位を狙って挑戦することが多いようだ。
この世界には川が非常に少なく、川のあるこのあたりが唯一開拓できそうな場所ということで、今までも沢山の開拓村ができては消えているそうだ。
『あの女神、環境作りも下手なのか。井戸は掘れるのかな。』と思いつつ土魔法で地中を探ると、深さ50〜100m程のところに地下水脈を見つけた。
『こんなに深いと普通掘れねえだろうが。』ほんと使えねえなアイツ。
俺はこの開拓村の新しい住民にとなった。
◇
「ファースト。今日はどこに行くの?」
アリスが俺に聞いてくる。
「今日も森さ。欲しいものがあってね、行ってくるよ。」
と言いながら俺は森に入る。
俺が探しているのは、鉄鉱石などだ。井戸を掘るにも滑車を作るにも畑を耕すにも道具がいるが、その素材がないのだ。
日干しレンガを作りカマドを作り耐熱レンガを作る準備をしている。
石炭はこの前見つけた、炭も準備したので後は鉄などの鉱物だ。
川を遡りながら河原の石を確認する、鉱石が混ざり出せばその付近か上流に地層がある可能性があるのだ。
「見つけた」
目的の鉱石を河原で見つけた俺は、付近の地層を確認する。
鉱石が種類別に段違いで地層を成している。
『またいい加減な仕事だ』と思いながら掘りながら収納してゆく。
「ついでに水脈を探って・・おおこれは!温泉の源泉か?」
水脈に沿うように温泉の源泉も流れている水脈を見つけた。
可能な限り開拓村に近い場所まで探って、水と温泉を掘り当てる。
土魔法で作った土管を高台に位置する場所のタンクに接続し、高低差の水圧で村に流すのだ。
さらに森の中を流れる川の一部を開拓村の外堀用に水路を作ってゆく、幅と深さを大きくすれば魔物避けにもなる。
開拓村の外周を大きく巡るように、水濠を掘ってゆく俺にアリスが。
「こんなところで何をしてるの?」
と聞いてきた。
「将来の発展を考えると、この付近まで村が大きくなると思うからそれに合った外濠を掘っているんだよ。」
と答えたがよく分からないようだった。
◇
1月後。
開拓村を外側に大きく巡る水濠が出来上がった。
内側に土魔法で石作りの外壁を作ってゆく、大きさは高さ10m幅3mの規模だ。
これも一月ほどかかった。
村人が高く丈夫な外壁と深い水濠を見て
「ファースト、こんな大層なものを作って何をしてるだ?」
と聞いてきた。
「この壁までが開拓村の敷地だよ。空いてる場所に畑を作ったり、新しい入所者用の家を作るんだよ。」
と言うと皆大笑いしていた。
この開拓村が大きくなる想像が出来ないのだ。
◇
それからまた一月後。
上下水道を開拓村のメイン道路を中心に敷設した俺は、新しい場所に大きな建物を作り始めた。
温泉だ。源泉を引いてタンクに貯めると、大きな湯船を左右対称に作り壁を作りながら洗い場や脱衣場を作ると。
一部天井がないが、立派な温泉施設が出来上がった。
さらに土を耕し、森の腐葉土をすき込むといい具合の畑が出来上がった。
そこに商人から手に入れた麦と米と芋などを植えて育て始めた。
畑には横に穴を開けた竹のような植物を埋め込みそれに定期的に水を流すことで、水やりができる。
森の腐葉土のすき込まれた土は栄養が豊富で、植えた穀物がみるみるうちに育ち上がった。
◇
半年後。
見事に実った畑を見た開拓村の住民は、驚きながらその黄金色の実を見ていた。
「皆さん、見ているだけでは腹は膨らみません。俺1人では食べきれない量です、手助けする人にも分けますから・・手助けしてもらえますか?」
と聞くと皆が刈り取りに手伝ってくれた。
乾燥させた後、穀物用の倉庫に収めると俺は村人に言った。
「今回手伝ってもらったこ人に、報酬代わりに穀物を差し上げます。」
と言うと皆が袋を持って来たので、手伝い1人に対し半年分の穀物を渡した。
俺はその後すぐに、畑に次の種を蒔いた。
この世界は年に一度の収穫ではなく条件さえ揃えば、2〜3回収穫できるのだ。
さらに畑を広げることにした、この話は開拓村のリーダーに通して参加者を募った。
すると家族の多い家からの参加が多かった。
俺が最初に耕した畑の3倍の面積が耕され、腐葉土がすき込まれた。
土づくりが終わると、水撒き用の竹のパイプを埋めてゆく。
種を蒔き草を抜くなどの手入れをすると、半年でよく実った畑が広がり開拓村での食糧自給は100%を越えて備蓄ができるようになった。