この作品はぼく「ら」がつくった
気が付くと見知らぬ場所にいることはないだろうか.
電車に乗っているとよくある.ネタバラシをすると寝過ごしただけなのだが.
もちろん,それ以外のこともある.自分で歩いて動いて,見知らぬ場所にたどり着くことが.
身体が勝手に動くというものに近い.
無意識にぼーっと歩いていくと,頭では考えてはないのに体が覚えているためか,ふと気が付くと
景色が変わっていて,目的地についていたり.
頭が動いていないときは無意識が色々と手伝ってくれる.
お風呂にはいっているときにいつの間にかシャンプーが終わっていたり.
椅子に座っていたはずなのに,いつの間にか布団に入って寝ていたり.
ふと気づいたら隣に誰かがいる.両隣.その顔は今でも思い出せない.
一緒に座っている.机に向かって何かを書いている.
きっと,これは夢.僕は小説なんて書いたことがない.
横に座っている「モノ」はそもそも人の姿をしていない.
のっぺらぼうで,まるまるとしていて,指もないのにペンを握って紙になにかを書いている.
僕は彼らと話しながら小説を書いている.違和感なんて感じていない.
昼食も片手にパンを食べながら書き続ける.
風呂に入りながらも,書いている小説の内容の談義をしている.
いつも3人一緒.寝る時も,食べる時も.
そして,目が覚める時,リアルに戻ってくる.
見慣れた部屋.見なれた現実.もちろん隣にはその「モノ」の姿はない.
目が覚めた瞬間は覚えていても,すぐに記憶はなくなる.
誰かが近くにいた気がする.
誰かと話した気がする.
そして,頭の中には3人で作った小説の内容だけが明確に残っている.
僕は珈琲を注ぎながら,PCを立ち上げる.
今日も小説を書くために.3人の物語を.書くために.




