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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第3章 オンリー・ユー 君だけを

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Episode 25


--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 5F

■【偽善者A】ハロウ


駆ける。

双剣を持ち、ダメージを与え。

それで得たステータスでまた駆ける。


メアリーに指示された通り、5回攻撃を与える度にグレートヒェンの傍から離れるように離脱する。

【強欲性質】によって1分という短い間ではあるものの、際限なく上がっていくステータスは私の移動速度や攻撃をより速く、より深く、より鋭くしてくれる。

行動を開始した直後はあまり効果がないように思えた脚への攻撃も、今では一撃一撃入れる度に傷が付き、HPバーを削っていく。


決定打にならないのは申し訳ないが、そちらについても問題なく。


「やぁやぁ、もう一回喰らッとこうかッ!」


歪で巨大な骨の腕のようなものを携えたCNVLが、先程異形の腕でやったことの再現を行う。

どうやら彼女の使っているスキルは、彼女がコストにした(食べた)ものの影響が露骨に出るらしく。

所々に剣や盾、杖や弓矢なんかが混ざっているように見える。

CNVLは、自身の身長の2倍近くあるそれを天に掲げグレートヒェンへと向けて振り下ろす。


流石に2度目ともなれば素直に喰らうのは嫌なのか、骨の怪物は同じ骨を受け止めるために盾を掲げ受け止める体勢をとった。

しかし、それは完全に私という足元にいる存在を無視しきっているという証明であり、


『ハロウ、全力で脚切断('ω')』


この上ないチャンスだった。


素早く双剣をハサミへと戻した私は、骨の腕を受け止めようと腰を落としているグレートヒェンの脚……今まで私が攻撃をしていた方へと近づいて。

思いっきり、鋏み込んだ。

ガチン!という音と共に、少しずつ通っていく刃と共に、それに呼応するように少しずつ強くなっていく身体に笑みを浮かべながら、私は言う。


「あら、こっちも忘れてちゃだめよ?」


グレートヒェンにこちらの言葉が伝わっているかはわからない。

しかしながら、私を脅威だと認識してくれたのか自身の持つ剣を使い、脚に付きまとう厄介な虫である私を払おうとする動作をした瞬間。


「あはッ!」

「遅いわねぇ」


私のハサミが脚を断ち切り。

体勢を崩したグレートヒェンへとCNVLの骨の腕が命中する。

HPは大きく削れ、またも大きな怯みが入ったのかそのまま尻もちをつくようにして骨の怪物は倒れ込んだ。

HPにして、残り約3分の1。


漸く、と言っていいのだろうか。

まだまだ気が抜けないものの、半分以上は削ったのだ。

今だ何もしてこないファウストが気がかりではあるものの……グレートヒェンだけならそう時間はかからずに討伐することが出来るだろう。



暫くして。

三度目となるCNVLのスキルによる攻撃がグレートヒェンの胴へと当たり、骨の怪物は地面に膝をついた。

HPはほぼ底に近く、ほぼほぼ満身創痍と言った所だろう。骨にそんな状態があるのかは知らないが。


対する私達はといえば、


「先輩大丈夫ですか?」

「応とも。ある程度HPは回復してるし、在庫もまだ余裕あるしね。まぁ流石にあんなデカブツと何度も戦いたくはないけども」

「あ、マギ。こっちにはちょっと回復頂戴。少しだけ掠ってたわ。メアリーは最後の一撃いれて終わりにしておきなさい。そのまま残しておいても面倒でしょう」

『了解~('ω')ノ』


ある程度の余裕はあった。

というのも区画順位戦や【劇場作家の洋館】のハードモードなど、長時間に及ぶ戦闘を何度か繰り返してきているのだ。

全力で戦いはするものの、スタミナの使い方を間違わないようにしなければ長時間戦う事は出来ないのだから。


私の言葉に従って、メアリーは離れた位置からクロスボウを使いグレートヒェンを狙う。

そして、風切り音と共に放たれたそれは命中すると共に白い爆発を起こし巨大な骨の怪物を光の粒子へと変えていった。


「よし、残るはファウスト1人――「あぁ素晴らしいィ!」――は?」

「素晴らしい素晴らしい素晴らしい素晴らしい!【犯罪者】達はここまで私の想定を超えてくる!あぁなんてことだ!おぉ我らが神よ!そして我が友悪魔よ!私が未だ知らぬ知識はここにあった!」


……発狂モード?それとも条件付きのスキルかしら。

光へと変わったグレートヒェンの跡に、ファウストが駆けつけ涙を流しながら笑い、天を仰ぎながら狂ったように言葉を紡ぐ。

見ているこちらからすれば単純に危ない人でしかなく。

このまま放置していても危ないだろうということで、メアリーへと目配せをしクロスボウを放ってもらう。


すると、だ。


「あぁあぁ――無粋だ。もう少し空気を読みたまえよ」


空気の温度が下がったような、一瞬だけの威圧の言葉と共に。

地面から何かが出現し、メアリーのクロスボウの矢を防ぐ。


それは白く。

普段は見る機会が少ないはずのモノであり。

それは厚く。

通常の矢程度ならば弾かれてしまう程のモノであり。

そして、どう見たってそれは。


「……嘘でしょう?」


つい先程光の粒子になって空へと昇っていったグレートヒェンだったのだから。

私達の戦闘は、終わらない。


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