Episode 23
--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 4F
■【偽善者A】ハロウ
--System Message 『【強欲性質】が再使用可能になりました』
「あ、クールタイム終わったわね」
「おぉ。じゃあ漸く出発って感じかな?」
「そうなるわ。まぁ出発って言っても次の階層がボスなのはほぼ確定してるけれど」
私の【強欲性質】のクールタイムも終わり、それぞれが休んでいる間に固まってしまった筋肉をほぐすように準備体操を始める。
VRという現実ではない世界で、それがどれほどの効果を発揮してくれるのかは分からないが……それでもやらないよりは気分的にマシだろう。
準備体操にそこまでの時間は掛からず。
私達は今まで休んでいた大部屋から出発した。
目指すはこの部屋の下へと続く階段へ。
「……うん、偽物とかトラップとかじゃないみたい」
「便利ですよね、その眼。名称が分かるだけって思ってましたけど、その範囲に制限今の所ないですし」
「欲しいならマギも取ってくればいいじゃない。確率ドロップみたいよ?これ」
「遠慮しておきます。流石にシェイクスピアというか……ゾンビ系とは飽きるほどに戦ったんで」
部屋に入る前と同じように、私とマギが罠の有無などを簡単に調べ。
それらがないとわかると、全員で階段を降りていく。
この闇の先に何が待つのか、私達はまだ何も知らない。
--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 5F
暗闇の中、踏み外さないように慎重に階段を降りていけば。
視界の隅にそう浮かんだ瞬間、私達の周囲は突然明るくなる。
まるでスポットライトを当てられたかのように、私達の周囲だけが明るくなっている現状は警戒するのには十分すぎる状況で。
『ビー……ガガガ……テステス。オーケーだな。ようこそ無粋なお客人よ』
突然始まったアナウンスに、私達は周囲を警戒しつついつでも戦闘が開始できるように身構えることしかできない。
いや、それも身体が制御されたかのように勝手に動いているような気がする。
……シェイクスピアの時にもあったムービーかしら。身体も自由に動かせないし。
『あまり人を近づけるな、とヨハンには言いつけてあったのだが……まぁ良いだろう。君達には私の作った実験物の試験に付き合ってもらうことにしよう』
アナウンスによって話しかけられるというのは、シェイクスピアの時を含めて2回目だろう。
【劇場作家の洋館】のハードモードはこちらに話しかけるというよりは、完全に1人で壊れていたためカウントしない。
『なぁに、簡単な試験だ。……その失敗作と戦ってもらえるだけでいい』
アナウンスがそう言った瞬間に、周囲の闇も晴れ。
私達がどこにいるのかやっと把握する事が出来た。
……ここは、コロッセウム!?
胸が高鳴るのを感じ、今は推定ボス戦のムービー中なのだからと落ち着かせる。
私達が居たのはコロッセウム。
言わば決闘場。決闘者達が互いに死力を尽くし戦う聖地。
私達の立っている場所は出場者の出てくる門の前。つまりは、私達は決闘者としてここに立っている。
そして私達の反対側……目の前には、もう一つ。決闘者が出場するための門が存在し、それが今開いていく。
「改めてお客人。私がここの主であるファウストだ。そしてこっちが……」
『ァ……ァア……』
「こっちが、試験を行う実験体だ。あぁ、実験だ、実験なのだ。彼女の強さを、高潔さを!それらを再現できているかどうか!!さぁ、始めよう!!」
そこから出てきたのは、白衣を着た1人の男性と巨大な骨の怪物だった。
白衣……ファウストの方は語る必要もほぼないだろう。冴えない金髪の男性だ。
しかしながら、巨大な骨の怪物は違う。
それは、巨大な剣と盾を装備していて。
今までの階層で見た、どのスケルトンよりも骨の密度が高い事が一目でわかる。
まるで骨の鎧のようなものが意思をもって動いているかのようなそれは、何か口を開く度に声のような音を発している。
-【魔骨学者 ファウスト】-
-【死骨王者 グレートヒェン】-
そして表示されるは2名分の名前とHPバー。
瞬間、私達の身体は自由を取り戻し動けるようになった。
しかしそれは相手も同じようで。
私達の身体が解放されたと同時、グレートヒェンはこちらへと向かって走り出した。
私達がいる位置と、ファウスト、グレートヒェンが入ってきた位置の距離はおおよそ50メートルほど。
一般人ならば、大体10秒以内……遅くても15秒ほどで詰められる距離を、グレートヒェンは4秒ほどで走破する。
咄嗟に動けたのは私とCNVLだけだった。
素早く自己強化スキルを発動させ【HL・スニッパー改】をハサミ状態で構えた私と、【祖の身を我に】を使ってタワーシールドを出現させたCNVLはこちらへと走ってくるグレートヒェンの前に立ち受け止める構えをとって。
距離を詰め、剣を振り上げこちらを攻撃してくるグレートヒェンの猛攻を多少ダメージを喰らいながら防いでいく。
それが戦闘開始の合図だった。




