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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第1章 ハジメマシテ、【犯罪者】
9/194

Episode 8


--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 3F

■【リッパーA】ハロウ


暗い階段を落ちた先。

突如落下の勢いが落ち、なにやら浮遊感に包まれ地面らしき所へとゆっくりと着地した。

周りを見渡そうにも、本当に何も見えない暗闇の中の為、情報が全く得られなかった。

そうしていると、突如何かが聞こえてきた。


『ジジ……ジジジ…………』


スピーカーの音らしきものが聞こえ、その瞬間に身体の制御が利かなくなった。

……これは、ムービー?

ゲームにはよくある、ストーリーなどに重要なモノが出現した場合に流れたりする、ゲーム内では出来ない挙動ばかりをするあのムービーだ。

T〇Sさんのイライラポイントでもある。

ただ、こういうダンジョン内でのムービーには嫌な予感しかしない。


『……レディースアーンドジェントルマーン!!よウコそおいでくだサイましタ!』


そんなアナウンスが聞こえると共に、パッと周囲が明るくなった。

私達4人はどうやら現在、舞台の上にいるようだった。

しかしながら、その舞台はほぼほぼ朽ちており、まともに舞台として機能しているものではない。

更に、観客の方を見てみればそこには大量のアクターゾンビが行儀よく座っているのを見ることが出来た。


『今日!皆サマに見ていタだくのはかの有名な……なナ……ガガガ……』


アナウンスの声が突如バグったかのように機械音へと変化し、ブツン!と大きな音を立て消える。

一瞬の静寂の後、ガタガタッ!と音がしたかと思えば、観客のアクターゾンビの中の1体……妙に背が高く、服装も中世の貴族のようなものを身に付けているゾンビが立ち上がり両手を広げた。


注意深く見てみれば、他のゾンビとは違い生きた人間の目をしていた。

但しそれは目だけであり、所々腐敗している事から、やはりゾンビであることが分かる。


『今日!皆サマに見ていタだくのは、彼ラ四名の舞台役者の物語ィ!!そしてその敵役ハ皆サマ自身でありまス!第一幕ゥ!!』


-【劇場作家 シェイクスピア】-


そのゾンビが高らかに声を上げたかと思えば、名前らしき表示が頭上に表示され、HPバーが3本出現した。

私達の身体も動かせるようになり、舞台になだれ込むように襲いかかってきたアクターゾンビ達との戦闘が始まった。


名前、HPバーの多さから見てあのゾンビ……シェイクスピアがこのダンジョンのボスなのだろう。

ムービーが始まった時点で覚悟はしていたが、順当というべきか。

ボス戦の始まりだった。


「ぁー……よし、声が出る!これボスって奴だよね?!」

「恐らく!【薬を扱う者の信条】、【アタックドーピング】、【ディフェンスドーピング】!」

『キモいキモいキモい!Σ(゜д゜lll)』

「アクターゾンビとはいえ、流石にこの量は何かギミックがありそうねぇ……【シャープエッジ】」


私が使うスキルは【シャープエッジ】のみだ。

手を抜いているわけではなく、数十を越えるアクターゾンビに群がられている状態で一撃特化の【霧の外套】は単純に相性が悪い。


近付いてきたアクターゾンビの腕や首筋をナイフで切り、メアリーとマギが囲まれないように立ち回る。

こちらが耐えれば耐えるほど、一撃が重いメアリーによって相手の数が減っていくからだ。


「マギくん!回復!」

「【リジェネタブレット】!これ飲んでください!徐々に回復するんで!」

「了解!」


CNVLはそれを分かってか否か、ダメージを食らいながらも1体1体光に変えていく。

そんな風に戦いながら、何かこの大量のアクターゾンビをなんとか出来そうなギミックらしきものが見当たらないかを探す。

……範囲攻撃さえあれば楽なのに!



数分後。

ある程度倒したというのに、減った気がしないアクターゾンビを倒しながら、回復薬を貰うためマギの近くへと道を文字通り切り開いた。

ちなみにボスであるシェイクスピアはといえば、特にこちらに攻撃してくるわけでもなく高笑いをしているだけだ。


「マギ、何か見つけた?」

「特に……強いていえば、攻撃を受けていないはずのボスのHPが減っていることぐらいですかね……」

「ボスの……?もしかして……ちょっと試すからボス見てて!【霧の外套】」


一撃の威力を上げた状態で近くのアクターゾンビ、その首筋へとクリティカル狙いで突き出す。

動きが鈍いためか、それとも単純にソルジャーと違って避ける防御するというパターンがないのか。

スキルの乗った私の一撃はそのまま吸い込まれるように首筋へと刺さり、HPバーを削り切る。


すると、だ。


「ハロウさん!減りました!そのかわりにボスの近くに1体ゾンビが新しく湧いてます!」

「了解!2人とも聞いた?!兎に角敵を倒せば良いわ!!」

「『了解!』」


HPの分散か、それとも別の何かかは分からないが、いつ終わるか分からなかった作業のゴールが見えた。

それだけでも私にとってはかなりモチベーションの変化になった。

他にも笑いながら周囲のアクターゾンビたちを切り刻んているCNVLもいれば、いつの間にかフラスコから乳棒のようなものに持ち替えたマギが器用に攻撃を加えているのが見えた。

メアリーはそこまで見た目自体には変化はないが、その分チャットの連投でテンションの高さが伺えた。器用なモノだ。


だが、やはりそれでもジリ貧な事には変わりない。

ゾンビを倒し続けるのは確かに正攻法だろう。しかしながら、私達のパーティがこのまま戦い続けていても恐らくはこちらが削りきられるだろう。

それほどまでに苦しい戦いを強いられている。


ならば、と考え近くのゾンビを倒しながらメアリーへと問いかける。


「ねぇ、メアリー?」

『???』

「貴女そこからシェイクスピアって狙えない?」

『あー……射線は通ってるから試してみる('ω')』

「一応護衛はするから。CNVL達は……あのままやらせてた方が色々便利でしょうしいいか」


私のつぶやきを聞きながら、メアリーは鉄の矢をクロスボウに装填し、狙いをつける。

頭を横に振りながらこちらに近づいてきたりしているアクターゾンビもいるため、しっかり狙うならば一瞬の間に通さねばならないのだ。


彼女が集中している間もゾンビはこちらへと寄ってくる。

それを彼女の邪魔にならない範囲で捌きつつ、私も私で何とかシェイクスピアに近づけるチャンスを伺っている。

HPバーが存在しているということ。そしてギミックによって減ってはいるものの、もしかしたら直接攻撃によっても減らすことは可能なのかもしれない。

そう考え、近くにいるゾンビを倒しつつも、そのタイミングを待って待って待ち続ける。


近づき、切り、近づき、切るを繰り返し。

ただ、集中しているメアリーを置いていくわけにはいかないために、そこまで離れることはできない。

CNVLも同じことを考えたのか、こちらを見て合わせているのか、同じ方向に少しずつ少しずつ進んで行くのが見えた。

そして、その瞬間が来る。


私の右耳の横を、銀色の何かが凄い速さで駆け抜けていく。

その方向はシェイクスピアが高笑いしている方向で。

目を向ければ、その眉間に銀に光る矢が突き刺さっているのが見えた。


『やったぜ(、´・ω・)▄︻┻┳═一』

『ガッアァァアアアアァアア!!!』


HPはといえば、しっかりと減っているようで。

シェイクスピアは叫び声をあげながら眉間に刺さった矢を抜こうと手を伸ばしている。

そして。この瞬間。

シェイクスピアに命令されこちらへと押し寄せていたであろう、アクターゾンビたちの動きが止まった。

……今ッ!


私と、満面の笑みを浮かべているCNVLが走り出す。

さながら人混みの中を走っていくように、ゾンビとゾンビの間を走り抜け、所々で肩をぶつけながらも迫っていく。


「あは。君もマズそうだ……けどッ!食べるよッ!!」


いち早くシェイクスピアの元へと辿り着いたのはCNVLだった。

何やら大声で言いながら、彼女は手に握る出刃包丁でシェイクスピアの足を一回二回、三回と連続して切りつけていく。

シェイクスピアも馬鹿ではないようで、片手で眉間に刺さった鉄の矢を引き抜きながら、もう片方の腕を使い近くにいるCNVLを排除しようと振り払う。


その瞬間。

私がその場に辿り着き。

そのままの勢いで矢を抜こうとしている方の腕へと切りつける。

勢い余ってシェイクスピアの横を通り過ぎてしまうが、周囲にいるアクターゾンビを使い方向転換し戻ってくる。


「【霧の外套】ッ!」


身体に纏うは霧。

何処かで見た事のあるような、そんな姿で私は目の前の敵に立ち向かう。

見れば、シェイクスピアのHPバーは1本目が底をつき、2本目へと突入していた。



変化は突然だった。

周囲のアクターゾンビたちが突然白い煙となって消え、シェイクスピア自身も同じように煙になっていく。

そしてそれらが全て一点に集まったかと思えば、何かを形どっていく。


「ゲームのボスってすごいなぁ。こんな風になるのかい?」

「……これは特例だと思うわ。全くないとは言わないけど」


私達の目の前に現れたのは、巨大な人型のゾンビ。

所々欠損しているもの、その姿はファンタジーに出てくるようなオーガによく似ていて。

ただ顔だけが先ほどと変わらない、シェイクスピアの顔だった。


『モッ物語は第二幕ヘ……第ィ!二幕ゥ!!困難を乗り越えた先二!待っていタのはヨり強大ナ敵ィ!!舞台役者へ襲い掛かルぅウウウ!!』


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