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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第3章 オンリー・ユー 君だけを

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Episode 21


--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 4F

■【偽善者A】ハロウ


『ぐゥ……!』


人型だからだろうか。

流石に心臓辺りを刺されては余裕の顔は出来ないのか、ヨハンは歯を食いしばり口の端から血を流した。

刺した張本人であるCNVLはそれを見て満足気に笑いながら、更にもう片方の手に持った剣を彼の肩口へと突き立てる。


『嘗めるなァ!』


先程までこちらを嘗め切っていた表情をどこへやったのか。

瘴気を素早く手から腕全体、身体全体へと伸ばしCNVLの追撃を防ぎつつマグロ包丁を掴んで引き抜いた。

そしてそのままに、怒りの表情を隠さないままにCNVLへと攻撃しようとして、近くで手首を鋏んでいる私に気付いた。

にっこりと笑っている私に。

じりじりと、鋏んでいるだけでもダメージが発生しているのか少しずつHPバーが減っているヨハンに対し、私は笑みを浮かべたままに告げる。


「【強欲性質】ッ!!」

『貴様もこッちのと一緒で大罪持ちかッ!』


ダメージを与えるごとに、割合ではあるものの自身のステータスを限定的に向上させていく特殊スキル。

ヨハンの言った『大罪持ち』という言葉は気になるものの。

そのまま更に力を込め、彼の手首を断ち切ろうとする。


ダメージを与えればその分だけステータスが上がっていく関係上、私の鋏む力は徐々に強くなっていき。

それを対応したくとも、近くでうろちょろと攻撃してきているCNVLの対応にも自分の処理を割かねばならないヨハンは苦渋の末に、


『離れろォ!』


継続したダメージが多そうなCNVLを離れさせる選択をした。

私に鋏まれていない方の手を使い、無理矢理CNVLの服を掴み。FFしないように待機していた後衛組の方へと投げ飛ばし。

私はそのままヨハンの手首を断ち切った。


瞬間、私のステータスが今まで以上に上がるのを感じついつい息が漏れてしまう。

目の前では、部位欠損した所為かある程度のHPが現在進行形で減っていっているヨハンがこちらを睨みつけていて。

それがなんとなくイラッときたため、無防備な腹に向かって蹴りをいれた。


瘴気によって直接のダメージは少ないものの、衝撃は伝わったのかそのまま少しだけ後ろへと吹き飛ばされる彼を見ながら冷静に考える。

……あと30秒くらいね。


【強欲性質】の発動時間。

1分しかないその時間中に削れるだけ削らなければ、待っているのは私の弱体化だ。


「メアリー!」


私は自分が作ってしまった距離を再度詰めながら、名前を呼ぶ。

瞬間、私の横を何本かの矢が飛んでいきヨハンの身体のあちこちが爆発していく。


『ここまで無理矢理真ッ正面から来る者達は久方ぶりだぞッ!』

「あは、口調はもう取り繕わないんだねぇ」

『また貴様か暴食!』


それを追撃するように迫ったCNVLに悪態を吐きつつ、身体中に纏った瘴気を使って射程を伸ばした拳を振るう。

恐らく私に対する牽制でもあるのだろう。

しかし、それを今更気にする私ではなく。


いつも以上に強化されたステータスを以って一瞬でヨハンから見て右側……私達から見て左側へと辿り着き、その場で回るようにハサミを振るう。


「私を無視しないでほしいわねぇ!」

『無視などしていないだろう強欲!』


どうやらヨハンの纏う瘴気は全体の総量が決まっているらしく。

一部位を防御するのにそれらを回せば回すほど、他の位置の瘴気は薄くなる。

……残り15秒!


少なからずダメージを与えたことで更にステータスが上昇した私を危険に思ったのか、他のメンバーよりも私に意識を向け始めたヨハンに対し。

私は気付かれないように【虚言癖】を使用してヘイトを強制的に私に向くようにした。


他の……例えばCNVLなどに向いている状態で使えば、無理矢理私の方へと向かせる事になるためヨハンにも気が付かれてしまうだろう。

しかしながら今回はわざと話しかけ私に意識が向いていて、尚且つ私へと攻撃する意識がある所で使用した。

多少の違和感はあるだろうが、気付きにくいと思いたい。

少しばかりの小細工だが、まだまだ長く続きそうな戦闘なのだ。少しでも攻撃を与えられるチャンスを作り出しておかないと後々が厳しいだろう。


ハサミを本来の用途ではなく、まるでハンマーか何かのように振るいながら。

ヨハンが防御しやすい位置をわざと狙う。

と言っても、私の攻撃速度はステータスの上昇に伴って上がっていき……徐々にヨハンも対応しにくくなってきてはいるのだが。

……あと5秒!


横薙ぎのようにハサミを振るい、腕で防御される。

……残り4秒。


そのままの勢いでハサミから双剣に分解し斬りつけるものの、瘴気に阻まれダメージをまともに与える事ができなかった。

……残り3秒。


素早くローキックを放つものの、予想されていたのかまたも腕で防御される。ヨハンの後ろにCNVLが見えた。

……残り2秒。


インベントリへと【HL・スニッパー改】を仕舞い、強化されたステータスを使って顔狙いで拳を振るう。当たったものの、咄嗟に瘴気を集めたのか私の手には鈍い感触しかなく、ダメージも少ないものだった。CNVLが近づいている。

……残り1秒。


にっこりと笑い、ヨハンの腕を掴み足を踏みつけ動けないようにする。やっと背後に迫る気配に気が付いたのか、振り向こうとするも私から視線を外すことが出来ない事に気が付いた。

CNVLが彼の肩へと手を掛けた。

……残り、0秒。


瞬間、私に掛かっていたバフが消え。

ステータスが元に戻る。


「あはッ!言ったろう?『It's meal(食事の) time!(時間だ!)』って」

『ぐッ……!?強欲、貴様何かしているな?!』

「あら、気が付くのが遅いんじゃなくて?」


大きく口を開けたCNVLは、そのままヨハンの首へと噛みついてそこについている肉を食い千切る。

これまでとは比にならないほどに大量の血が溢れ出て雨のようになるものの、この現象を引き起こした本人は関係ないとばかりに咀嚼し。よく味わった後に飲み込んだ。

瞬間、彼女の身体から瘴気が溢れ出る。


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