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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第3章 オンリー・ユー 君だけを

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Episode 8


--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 1F

■【偽善者A】ハロウ


対処法を実践し始めてから、私達のダンジョン攻略速度は劇的に上がった。

戦闘で血を周囲に撒き散らしながら進んでいくCNVLに最初は私を含め引いていた2人も、今では慣れたのか回復用のアイテムとして手持ちに余っていた肉片などを渡したり、普通に雑談などをしていた。

慣れというのは怖いものだ。


そうやって奥へと進んでいくこと暫くして。

やっとのことで2Fへと繋がる階段を発見する事ができた。


「ふぅ、やっとね。大体2時間くらいかかったかしら」

「そうだねぇ。あ、どうする?一応もうくっつけておくかい?」

「あー……とりあえずここの回りに血を撒き散らしておいてくれる?その後にくっつけてもらって、一旦休憩しましょう」

「了解ー」


そうして一度休憩をとり。

次の階についての相談をすることにした。

と言っても、出現する敵性モブは変わることなくスケルトンのみなのだが。

では相談する内容は何か、というと。


「確か2Fはスケルトンの数が増えるのよね」

「そうですね、それに加えて今まで出てきてない格闘家系や、修行僧系のスケルトンなんかも出現し始めます」

『バリエーション豊かになっていくねぇ('ω')』


そう、単純にスケルトンの数が増えるのだ。

種類的にも、単純な出現数的にも。


格闘家のように動くスケルトンや、僧侶の姿をして殴ってくるスケルトン、さらには弓矢を持った狩人のようなスケルトンまで増えていく。

それがどんどん下に行くごとに増えていくのがこのダンジョンの特徴と言えば特徴なのだろうが……それでも、攻略する側の私達からすれば対処する対象が増えるのは単純に厄介だった。


「今までは一応ツーマンセルでやってたけど、次の階層から皆固まっておくことにするかい?液体を嫌がるとはいえ、狩人スケさんとか出てきたら距離取られて対処しにくくなるだろうし」

「……そうねぇ、流石に分かれて対処するには難しい数だものね」

「じゃあいつも通りに、2人が避けタンクしながらアタッカー、サブアタッカーがメアリーさん、バフとヒーラーは僕が、って感じで」

「改めて言葉にされると、ホントうちのパーティ構成偏ってるねぇ」

「まぁ、今嘆いても仕方ないでしょう。今は今ある戦力でなんとかしないと」


誰かしらが防御系統でも取ればまた別なのだろうが、生憎私とCNVLはどちらも攻撃系統。

マギとメアリーに関して言えば、2人とも生産職であるために器用系統……Technic系を伸ばしているため、パーティ内で誰も防御する気がないともいえるのだ。

……赤ずきんに出来れば防御系統取ってもらって時々入ってもらおうかしら。


そんな事を考えつつ。

相談という名の作戦会議を終えた後、私達は階段を降りていく。

真っ暗闇、自分が今踏んでいる階段すらも見えないほどの闇の中を慎重に降りていけば、


--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 2F


という表示と共に、灯りが灯される。

先程よりも薄暗く、少し劣化している部分や壁に罅が入っていたりと、少なくとも1Fよりは手入れも何もされていないのだな、という印象を受ける。

私達が降り立ったのはそんな、少しだけ廃墟化が上よりも進んだカタコンベ、その通路のだった。

T字路のようになっており、私達の左右と目の前に通路が続いている形だ。


「周囲に敵影なーし」

「聴こえる範囲には何もいませんね」


CNVLがスキルで強化した視覚を、マギは薬で強化した聴覚を使い索敵を行って周囲にスケルトンがいない事を教えてくれた。

こういう時、自身の自己強化系スキルは使い勝手が悪いと少しだけ思う。

……時間経過で強化されていく、っていうのも考えものよねぇ。


そんなことを考えつつも、どの方向に行くか決めるためマギに風の流れを音として聴いてもらう。

なんのヒントもない状態で進んでゴールを探すよりはこちらの方がいいだろう。


「えっと……そうですね、左の道に風自体は流れていってます。あるとしたらそっちかと」

「どうする?また血撒いとくかい?」

「いえ、一度この階層でも戦っておきましょう。CNVLのアイテムの在庫確保的にもそろそろ戦闘は挟んで置いた方がいいでしょう?」

『私もスケルトンの素材は欲しいからくれると嬉しいかな!('ω')ノ』


メアリーもスケルトンの素材は何かのアイテム用に必要だったようで。

私と、意外にもスケルトンの素材を使わないマギは手に入れた素材を全て彼女らに渡すという話をした後に、左の通路へ足を進めていく。

左の通路、今私達が進んでいる通路は特に横道に逸れたり道中に部屋があったりもせず。完全な一本道となっているようだった。


「しかし、やっぱり慣れないもんだねぇ。毎回入る度に形というか通路の配置とかが変わってるのは」

「あぁ、私は特に気にしてなかったけど……そうよね、あんまりゲームの経験ないとそこは気になるわよねぇ」

「あー、やっぱりこれ割と普通の事なのかい?掲示板とか探しても特に誰も触れてなくてさ」


FiCのダンジョンは全て、所謂不思議のダンジョン形式となっている。

つまりは入るたびに地形が再生成され、その都度マッピングをし直す必要がある。

と言っても、ダンジョンによって癖のようなモノがあるようで。

ほぼほぼ決まった位置、座標に次の階層へ続く階段や扉が存在するためそこまでマップ埋めなどは気にしなくてもいいのだが。


「まぁこういうのは慣れとしか言いようがないわね。それにほら、こうやって配置が変わってた方が、色々と新鮮で楽しめるでしょう?」

「そうだねぇ。実際、マッピングしても一回限りしか意味がないってことを除けばいいと思うぜ」

「そこについては後で要望送っておきましょう。私も思っていたことだし」


雑談をしながら歩いていると、マギが足を止める。

耳に手を当てていることから何かが聞こえたのだろう、私を含める他3人はその場で一旦止まり、いつでも戦闘が始められるように武器を軽く構えた。


「数は?」

「6、1パーティです」

「了解、CNVL早めに倒すわよ」

「了ッ解!」


マギが通路の奥へと指を指し、CNVLは駆けだした。

私も遅れないよう【偽善活動】を発動させた後にその後を追う。


通路で戦う都合上、ハサミ状態よりも双剣状態にした方がいいのだろうが……狭い所での取り回しも練習しておきたいために、少しだけ無理をする。

……まぁ、危なくなったらすぐに双剣にすればいいし。


付かず離れず、お互いの距離を一定に保ちながら2人で進んでいくと。

そこにはマギが言った通り6体のスケルトンがこちらへと向かって歩いてきていた。


「前衛は貰うわ!アタッカーとシューターお願い!」

「おっけーい!」


素早くどちらが何を狙うのか、それを伝え行動に移す。

前衛……今回の場合は、頭蓋骨以外騎士のような甲冑に身を包みタワーシールドを持ったスケルトンを私が、剣士のようなスケルトンと、その後ろにいる弓矢を持ったスケルトンをCNVLが処理をし。

それ以外の、神父スケルトンやら魔法使いスケルトンなんかは自分のタスクが終わった者から攻撃していくことにして、戦闘を開始した。



近づいて、まずは横振りの一撃を盾に当たるように狙ってみる。

右から左へと振られたそれは、狙い通り騎士スケルトンの持つタワーシールドへと直撃し。

通路に大きな激突音が響き渡る。

……あら、意外とちゃんと防ぐものね。


少しだけ体勢を崩した程度で、それ以上特に応える様子がないそのスケルトンは、そのまま激突した私のハサミを押し返すように、タワーシールドで弾き。

それによって開いた私の身体へとどこかから取り出した剣を突き出した。


といっても。ここまでは予想出来た展開で。

私は身体を右側に回転させて突きを避けながら、【HL・スニッパー改】をその勢いでさっきとは逆……左から叩きつけるようにして騎士スケルトンへと直撃させる。


先程とは違い、盾ではなくその身体に纏う甲冑に命中したからか大きく体勢を崩したスケルトンの腕……剣を持つ方の腕を甲冑の上から挟み込み、そして切り潰し光へと変えていく。

思ったよりも抵抗がなく、【HL・スニッパー改】に付いている『鉄製品に対し破壊確率上昇』という効果が実感できる程度には効果を発しているのだなぁと暢気に思考する。


一瞬動きの止まったスケルトンに対し、私はそのまま他の四肢も切断していく。

そして、足も腕も無くなった……所謂達磨状態となった騎士スケルトンを放置し、私は回復しようとしているのか、杖に光を込めている神父スケルトンの方へと駆けよって。

挨拶代わりにハサミを上から振り下ろした。


流石に先程の騎士スケルトンとは違い、普段攻撃を捌きなれていないのか慌てたように光を込めるのを中断し、後ろへと跳ぶ。

私の攻撃は空振りとなったが、神父スケルトンの行動もある程度阻害出来たため良しとする。


ちらりとCNVLの方を見てみれば、何やらマグロ包丁片手に武器を大量に空中に出現させ2体相手に立ちまわっている。

口には大量の骨が詰められているのは少しだけシュールだが……まぁ、あぁいう事をするのなら仕方のない事なのだろう。

心底楽しそうな顔でしゃぶっているのは少しどうかと思うが。


「さて。あっちも頑張ってるみたいだし……こっちももう少し頑張りますか!」


そう言って私は神父スケルトンと距離を詰めるべく再度地面を蹴る。

メアリー達が来る前に、少しでも敵の数を減らしておきたい。

そんな事をうっすらと頭の中で考えながら。


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