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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第3章 オンリー・ユー 君だけを

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Episode 7


--第二区画 第二階層ダンジョン 【決闘者の墓場】 1F

■【偽善者A】ハロウ


背後で戦っているCNVLの笑い声を聞きながら。

私とマギは目の前で起きている現象について冷静に考察していく。


「単純に弱点だから……っていうと分かりやすくていいのだけれど」

「でもこれまでそんな反応するモブが居たって話は聞いた事ないですね……掲示板でもそういうのは見てないですし」

「じゃあ第二階層のダンジョン特有の動きかしら。それともある一定の……それこそ、私達が気が付いてなかっただけで、第一階層のハードモードでもそれに類似した動きをしてた可能性もあるわよね」


酸、それもあまりHPを減らすものではないジョークグッズの類を避けるように動き。

それによって今現在私とマギは一時的な安全地帯を作れているという事実。

少し前にあった第二階層が追加された際のアップデート内容も確認はしてみたものの、モブの動作関係の修正や仕様追加などは見当たらなかった。


「他の薬も投げてみます?」

「そうね、何に反応してるのかわかった方がいいだろうし……それに酸に反応してるわけじゃない可能性もあるし」

「あぁ、他の……例えばフラスコの破片とかですか」

「そうそう」


ダンジョンの攻略中にやることではないのだろうが。

これは私達の攻略速度にも関わってくる事柄だったために、今やるのが良いだろうと2人で話し合い、マギの持っている薬を実用的なものから融解薬のようにふざけて作ったものまで全て試していくことにした。

とは言っても、背後のCNVL達の戦闘が終わるまでの短い時間にはなるのだが。




「よーし、終わったー……って何してんのかな2人とも」

「あ、CNVL。お疲れ様、戦闘終わったのね」

「お疲れ様です先輩」


暫くして。

私達の背後からCNVLが声を掛けてきた。


あちらの戦闘が終わったのだろう、CNVLの後ろにはメアリーもいて。

2人ともHPも約三分の一ほど減っているのが分かったため、マギが回復をしながらも事情を説明していった。


その間に私は検証に使っていたスケルトンたちを丁寧にハサミの状態にした【HL・スニッパー改】で頭を粉砕していき、邪魔なものを光へと変えていく。

成す術もなく砕かれていくその姿は少しだけ哀れ、というか。

なんとも言えない気持ち


「……成程ねぇ」

『結論は出たの?(´・ω・)』

「一応ね。奴ら、液体なら何でも反応したわ。マギが持ってたただの水にすら反応してたから、多分あってるはずよ。地面に染み込む前ならそれを踏まないように、染み込んだ後も嫌々そこを通ろうとするから時間自体は稼げる感じね」


結論から言えば、スケルトン達は液体に触れる事を極端に嫌がった。

元ネタというか、そもそもとして私の記憶している限り、スケルトンという怪物にはそういった特徴はなかったはずだし、このゲーム特有のものかもしれない。

或いは、このダンジョンが出来たバックストーリーにそういったものが関係している可能性もあるんじゃないだろうか、ということをマギが語っていた。


事実、第一階層のダンジョンである【劇場作家の洋館】にもそういったバックストーリーがあるらしく。

区画内を調べたりしている検証専門のプレイヤーがそういった情報を掲示板に投稿しているのを私もちらっと見た事はある。

が、この場ではそれはあまり関係はないだろう。

私達に現在重要な情報は、『スケルトンは液体を極度に嫌がり近づこうとしない』という情報のみなのだから。


「ってことで、皆今どれくらい液体系のアイテム持ってる?私はとりあえずで何かあった時用のHP回復用のポーションくらいしか持ってないのだけど」

「僕は一応、【薬剤師】のスキルを使って調薬するために水なんかはある程度持ってますね。検証に使った分を合わせてもまだ余裕はありますけど……できればそれは皆の回復用の薬を作るのに使いたいので……」

『私もハロウと同じくらいしか……』

「あ、私結構液体出せるぜ」

「そうよね、皆あんまり余裕は――CNVL今なんて?」

「いや、だから。私出せるぜ?液体だろう?」


思わず聞き返してしまった私に、CNVLはニコっと笑い、


「あぁ、液体(・・)なら何でもいいんだろう――」


自身の腕を、マグロ包丁で叩き切った。


「いや、いやいやいやいや。違うでしょう。それは違うでしょう」

「え、いや。ほら結構出るぜ?液体(血液)

「それは出ちゃいけない液体なんですよ先輩……」

『(;^ω^)……』


今もなお、血を腕から垂れ流しながらニコニコと笑うCNVLに、リアルの彼女を知っているマギは額に手を当てて。

私とメアリーは彼女の行動にドン引きしていた。

……あぁ……良くも悪くもCNVLも染まったわね……。


以前彼女と話したときに、リアルで暇な時間にゲームについて掲示板などを見て勉強していると言っていた。

その内容はふざけたものもあるだろうが、それでもほとんどはゲームを円滑に……効率的に進めるためのもの。

つまり、彼女は知ってか知らずか、所謂効率厨と呼ばれているものに近い思考をしているのだ。


「あー……えっと。一応聞くけどHPは大丈夫なの?CNVL」

「あは、私の持ってるスキルを忘れたのかい?一応ここのスケルトンたちのドロップ品でもスキルが発動するのは分かってるし、部位欠損に関しても……ほら、【暴食本能】のおかげか【|あなたを糧に生きていく《カニバリズム》】でくっつくんだ」

「……そう……なら任せてもいいかしら……」

「『えっ』」

「あぁ、任された!」


マギとメアリーが驚きに染まった顔をこちらへと向けてきているものの、正直な話CNVLの案はアリなのだ。

HPの減少は問題なく対処でき、やろうと思えばくっつける事も可能。HP回復用のアイテムも、液体さえなければ団体となって向こうさんからやってきてくれるため、要所要所で確保可能。


他の2人も薄々それがわかっているのか、驚きはしつつもそれ以上何も言ってこない。

こうして、私達の攻略は物理的に血生臭いものとなった。

……この絵面、他のプレイヤーには見られてないけど運営には見られてるのよねぇ……。

そんなことを考えながら、満面の笑みで私達を先導していくCNVLの背中を追った。


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