表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第2章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/194

Episode 35

2章エピローグ


■遠野 葵


夜。

ゲームからログアウトした私は、いつもの日課として外出していた。

というのも、目的地はそこまで遠くなく。

家近くの食事処、というだけなのだが。


そこへたどり着けば、やはり先に着いていた男から話しかけられる。

私はそこに用意された椅子に座りながら返事をした。


「しかし、なんでこっちで続きなんです?別にあっち(FiC)でも紅茶は飲めるのに」

「おいおい、そうじゃあないんだ。そうだけどそうじゃあない。確かに向こうでも飲めるし、それ用のアイテムも用意したのは私だけどね?でもやっぱり現実の方が良いものがあったりするだろう?」

「長ったらしくありがとうございます。まぁ、そういうことなら何も言いませんが」


FiCを始めてから、ゲーム以外の自分の時間というのは極端に少なくなった私だが。

それでも、定期的にこうしてマギ……後輩と共に適当に話しながら紅茶を飲むという時間を作っていた。


FiCの中でも紅茶を飲むこと自体は、確かに彼の言う通りできる。

しかしながら、やはりゲーム(仮想)リアル(現実)では違うものがあるのだ。

結局の所、ゲームで飲む紅茶は特に言うところもない……言ってしまえば完璧なもので。

現実の方がやはり、雑味などが混ざってしまっている完璧とは言い難いもの。

……でも、だからいいんだよねぇ。


そんなことを考えながら。

私は後輩とゲーム内でのこれからのことを話し合う。


「いやぁ、やっぱりダメだよアレ。防具どうにかしないと」

「ダメージ受けても自己回復出来る先輩でアレですからねぇ……」


話題はやはり、第二階層で発見されたダンジョン。

名前は【決闘者の墓場】というもので。

出現する敵性モブはスケルトン……所謂、動く人体模型という奴だった。


「何が厄介って、スケルトンしゃぶっても回復は出来るけど、数が多くて回復が間に合わないのが」

「僕達も支援しようにしても、的がスッカスカだからかメアリーさんのボルトも中々命中しないですし……僕なんて尚更ですよ」

「あは、どうするかねぇ……」


第二階層に存在するダンジョンは、基本的に第一階層とは違い敵性モブに乗せられているAIの頭が良いとされている。

というのも、ほぼ同時期に第二階層を見つけたらしい酔鴉も言っていたことだが……第一階層に出現する敵性モブではしなかった『連携』をしてくるらしいのだ。


こちらのパーティのように、アタッカーが居て。

バッファー、ヒーラーが居て。タンクが居て。

私達の挑む【決闘者の墓場】も、酔鴉の挑んでいるらしい【亡者の生祭】も、どちらもモブがパーティのようなものを組んで移動し、こちらを見つけるや否やそれらしい動きで襲い掛かってくるのだ。


今まではこちらを襲い掛かってくるだけだった者らが、明確な役割をもって襲い掛かってくるというだけでも、かなり厄介だった。


「単純にパーティ単位での戦闘に慣れるしかないよねぇ。実際、私達がやられてるのって相手がパーティなのに慣れてないだけだし」

「そうですね……今までは乱戦か、それ以外だと1体を数的有利でぼこぼこにしてただけですし」

「私かハロウがタンクに移行すればいい話なんだけどねー。でも今更感強いから、詰む所まではこれで行きたいぜ」

「まぁ、回避タンクとかも一応ありですから。それっぽい事ができそうなの先輩じゃなくハロウさんですけど」

「そうかい?私も避けようと思えば避けれるんだぜ?避けない方がダメージ与えやすいから避けないだけで」


ここまで役割構成を適当にパーティを組んできたツケが回ってきた感じだろうか。

しかし構成だけで計れないのが、VRMMOと私はハロウに教わっている。


「あぁ、そうそう。先輩、掲示板で色々話題になってますよ」

「あ、本当かい?どんなスレ?」

「えーっと……『【お前の名前は】有名プレイヤー通り名スレpart4【なんて言う?】』と『【決闘者の皆様】決闘イベント感想スレ【お疲れ様です】』ですね」


自分のスマホを取り出して確認してみれば、確かに私の事が話題として挙がっている。

例えば、私の食べている肉は何か意味があるのかだとか。

実際に食べてみた人もいるらしく、「あんなの日常的に食べてるだなんて、あの人人間じゃねぇ!」等とコメントも残している。

慣れれば意外とイケるのだが……あまり理解されないようだ。

ちなみに美味しさ的には、スポーナー≦腐った肉片≦ソルジャーゾンビ・プレイヤー≦ナイトゾンビ≦ボス連中の順番で。割とボス連中は美味しい部類にはなる。血が凄いが。


他にも、私の通り名……所謂『漆黒の堕天使』だったり、『疾風迅雷』だったりするファンタジー小説やゲームでお馴染みのアレが考えられているらしく。

といっても、私のは案外シンプルで、そこまで私のイメージと変わりないものだった。


「おぉ、通り名つくんだねぇ私も」

「そうみたいですね。……あんまり変わらない気がするんですけど」

「まぁ、それは仕方ないさ。というか私としてはもうちょっと他になかったのかなって感じではあるなぁ。……『屍肉喰い』なんてそのまますぎるじゃないか」

「あ、一応ルビあるみたいですよ。『屍肉喰い(グール)』って読むらしいです」


屍を喰らう者。グール。

確かに、ゾンビの肉ばかり喰らっている私にはお似合いの通り名だろう。

問題は、私は別に屍肉以外にも生きている相手の肉も喰らうという所ではあるが……、


「一応、CoCでも人を襲うグールも出てくるし、そういう意味でこの通り名かなぁ」

「まぁそうでしょうね。先輩めちゃくちゃ人襲いますし」

「あは、人に見えるだけでアレは人じゃなくゾンビだしねぇ。FiCできちんと人を襲ったのは2回くらいしかないぜ?」

「あるのが問題なんですよ……」


はぁ、とため息を吐く後輩を笑いながら見ながら。

私はぐぐっと背筋を伸ばし、椅子から立ち上がった。


「そろそろ時間だし、帰ろうか」

「そうですね、明日も早いですし……それに明日もチャレンジするでしょうしね」

「そうだねぇ。明日に攻略は無理だろうけど……それでも、前に進めるといいなぁ」


そんな会話をした後に、私と彼は歩き出す。

お互い反対方向ではあるものの、目的地は結局のところ同じで。

私達はそうかからないうちに再会することだろう。

仲間たちの待つ、空に浮かぶ巨大な監獄都市で。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ