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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第1章 ハジメマシテ、【犯罪者】
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Episode 6


--浮遊監獄都市 カテナ 中央区画 メディウス

■【リッパーA】ハロウ


連絡を取り合ってから数分後。

丁度良いという事で、メアリーの露店を目印に私達は集合した。

やはり見た目からか客の少ないメアリーの露店は分かりやすかったらしく、CNVLともう1人。男性が軽く喋りながらメアリーの露店を冷かしているのを発見できた。

囚人服を着ていることから同じプレイヤー、恐らくあれがCNVLの言っていた後輩なのだろう。

そんな2人に少しあたふたしながら対応しているのがメアリーだ。


「ごめんなさい、待たせたわね」


そう私が声を掛けた瞬間、メアリーがこちらへバッと顔を向け、助かったと言いたそうな安堵の表情を見せた。

そしてそのまま私の近くまで寄ってきて、囚人服の裾を掴み息を吐いた。

……もしかしてこれ依存されてる?こんな短時間で?


「ん?あぁ、ハロウ。全然待ってないよ、むしろ今来た所さ。……ところでもう1人いるんだよね?」

「えぇ、この子がそうよ。……メアリー、私に引っ付いてないで一度露店を片づけてもらってもいいかしら。場所を移動しましょう?」


そう言ってメアリーに露店を片付けさせ、そのままデンスへと移動する。

娯楽系の施設が集まっている影響か、とにかくデンスには喫茶店のような店が多い。

座って話をするならこれ以上ない区画だろう。

単純に私の所属区画だから、何かあってもセーフティエリアへ逃げ込めるというのもあるのだが。



--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス


「はは、もしかして私達警戒されてる?」

「もしかして、とかいうレベルじゃないです。普通に警戒されてますよ。先輩何かしました?」

「おいおい、君は私が何かする所を見たのかい?一緒に露天に集合したのに」

「見てないから聞いたんです」


適当な喫茶店のような店に入り、そのまま適当な4人用のテーブル席に座って喋り始める。

CNVLとその後輩、私とメアリーがそれぞれ対面で座る形だ。


「んー……メアリー。あなたチャットなら結構レスポンス早いし楽でしょう?そっちで話す?」

「……ん」


こくんと頷いたため、この場にいるメンバーでパーティを組み、そのパーティチャットで発言してもらう事にした。

筆談ならぬチャット談だ。


ついでにパーティを組む際に自己紹介を行った。

CNVLの後輩である彼は、マギというらしい。

【犯罪者】は【シップマン】。

CNVL曰く、「彼はこっちの方がらしい(・・・)からね」とのこと。

短い黒髪で、人の良さそうな青年だ。


『いやぁ、申し訳ないです!私2人以上の知らない人がいるとあんまり話せなくなっちゃうんですよね〜(´・ω・`)』

「……おぉ、これは所謂ネット弁慶って奴かな」

「まぁこんな子だから。安心して良いわよ2人とも……ってナチュラルにいつもの口調で話してるけど、マギさんは大丈夫?変えた方がいいかしら」

「いえ、大丈夫ですよ。さん付けもいらないです。ゲーム内ですし気楽に行きましょう」

「分かったわ、よろしくマギ」


メアリーへの口調も、今のように後から本人に許可を取っているため問題はない。

メッセージで聞いたからか、『友達っぽくてイイ!(・∀・)!だから変えなくてもイイ!(・∀・)!!』とテンション高めの返答を貰ったのは記憶に新しい。


「じゃ本題に入りましょうか」

「あは、私らの所為で横道逸れちゃったから、メアリーちゃんからでいいよ。どうせこっちの用事は半分終わってるし」

『おk じゃ、ハロウさんこれ。新しく作った試作品。簡単な物だけどこれから御贔屓にって意味での物だから受け取って?(°▽°)生産依頼とかの奴じゃないからお代とかはいいよ〜( ・∇・)』


そういってメアリーが出してきたのは、革で作られているように見える腕輪だ。

装飾として鉄が使われてることから、鉄の欠片も使われているのだろう。


――――――――――

【人革の腕輪】 装飾品

装備可能レベル:1

制作者:メアリー

効果:物理防御+1%


説明:人革で作れた腕輪

   鉄によって補強されているため、見た目よりもずっと丈夫だ

――――――――――


「あー、うん。ありがとうメアリー。でも対価というかこれに使った素材くらいは渡させて?流石に序盤の装飾品とはいえ、これをタダで貰うわけにはいかないもの」

『ん〜……別にタダでも良いんだけど……』

「ダメ。キチンとした物にはキチンとした対価を支払うべきなの。革は今手持ちにないから……CNVL持ってる?」

「あるよ。腐った肉片と1:1交換で良い」

「ありがとう。という訳だから、素材で払うわ」


そう言うとチャットで暫く唸った後、諦めたように素材の内訳を教えてくれた。

いくら試作品だからといって、物を作るのにはコストがかかる。

これからかなりお世話になる予定なのだ。ここら辺はキッチリとしておきたい。

CNVL達もそれが分かっているのか、何も言わず私の交換に応じてくれた。


「はい、これでいいわね。オマケで破れた項も付けておくから」

『ファッ!?』

「いいのいいの。多分これから大量に余りそうな素材だから」


そう言って、使われた素材とはまた別に破れた項を5〜6枚分渡しておいた。

これは純粋に労働に対する対価だ。1種類しか渡せないのは申し訳ないし、そもそもゲーム内通貨で渡せないのも心苦しいのだけど、今はこれくらいしか渡すことが出来ない。

但し、正直にそう言ってしまえばメアリーは受け取らないだろう。

だから言わない。どうせどこかで本人も気付くだろうが、その時は知らんぷりをすればいい。


「よし、こっちの用事はこれで終わりね。お待たせ」

「はは、全然いいよ。というか絶対あとの方が良かったしね……よし、じゃあ本題に行こうか。これからまた【劇場作家の洋館】に潜らないかい?あぁ、メアリーちゃんも一緒でいいぜ?というか、同じ【ゲイン】として色々話してもみたいしね」

「ん、私は構わないのだけど……メアリーはどう?大丈夫?」

『問題ない~(^O^)そろそろ潜ってみようかなって思ってた所だから丁度いい!( ゜Д゜)』

「うん、大丈夫そうね。……じゃあ行きましょうか。お互いの使う武器なんかも道中で話しましょう」


そう言って、喫茶店から退散する。

そもそも何も頼んですらなかったため、現実ならばただの迷惑な客だが……まぁ、問題はない……と思いたい。


ダンジョンへと向かう途中。

CNVLが隣に来てこんなことを質問してきた。


「というか、私もアイテム作成できるのにこんな子捕まえたのかい?ハロウ」

「そうよ。貴女どっちかというと物作りより戦闘してる方が好きなタイプでしょう?」

「あは、否定はしない。……成る程、私への配慮って事かな……それなら何も言わないでおこう」


どこか嬉しそうな顔をして、CNVLはぐんぐんと前へ前へと歩いていった。

私達の前には、少し前にも見た洋館が見えてきていた。



--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 1F


1Fに入場する。

というのも、メアリーがまだ2Fに辿り着いていないためかテレポーターが使用できなかったのだ。

まぁ出来たとしても、1Fから入場しただろうが。


CNVLが一番前、私が二番目、マギ、メアリーがその後ろからついてくる形で進んで行く。

マギが使うのがフラスコとその中に入れるための薬品、メアリーが使うのがクロスボウという、両者とも中遠距離での戦いに向いている武器だったからだ。


その辺から動き出したアクターゾンビを切り刻みつつ、飛んできたフリューブックを使い、合流する前に試していた事を実践して見せた。

やはり、この方法が私的には一番楽だ。


「……って感じで、フリューブックの対処は割と簡単に出来るようになったわ」

「成程、敵対する意思に対してのトリガーですか……フルダイブならではの脳波判定ですかね?」

「恐らくは。便利よね」

『掲示板見てみたけど、まだ誰もそのことに気付いてないみたい?(´・ω・)』

「多分気付いてても言ってないだけでしょうね。周りが攻撃当たらないって嘆いてる中、経験値を稼げるのだから」


といっても、私達が隠す意味も薄い。

ここに居るのは全員所謂エンジョイ勢……ガッチガチに前線に立ってゲームの攻略をしていくような者達ではないのだ。

……あとで書き込んでおきましょうか。


「んー。そのトリガーって奴の話になるんだけどさ」

「なぁに?」

「それって、網とかで捕まえようとしても引っかかって逃げ始めるのかって気になってね。一度試してみる価値はあるだろう?」

「……確かにあるにはあるけれど、それ一度にブックを纏めるってことよね?ゴーレムにならないかしら」


私がそう言うと、先頭を歩くCNVLはドヤ顔でこちらへと振り返った。


「大丈夫。あいつらがゴーレムになるのは5体以上一緒になったらだから。ちゃんと昨日マギくんと一緒に検証したし、掲示板ってやつにも載ってたから確かだと思うぜ?」


ちらっとマギの方へと振り返る。

それで察したのか、マギは苦笑いを浮かべつつもこくんと首を縦に振って肯定した。


「成程ね、じゃあ大事をとって4体くらいを一気に捕まえられるような網とか……作れるの?」

「そこまでは考えてなかったけれど、作れるんじゃないかい?確か革のロープは作れたから……」


CNVLは何処か明後日の方向を向いて、独り言を話し始めた。

恐らくは他人から見えないように表示が弄られているウィンドウを使って、アイテム作成を行っているのだろう。

そこにメアリーが加わって生産系のスキルを持っている者同士の会話が始まった。……メアリーに関してはチャットでの参加の為、それだけは見えているのだが。

私とマギの2人で周囲を警戒しつつ、2人の作業が終わるのを待つこと数分。


「よし、完成!ハロウにマギくん、それとメアリーちゃん用の網もあるよ。動きを捉えるのに結構手間取るとは思うけど、そこは慣れってことで頼むぜ」


そう言いながら、CNVLは手元に複数の革を継ぎ接ぎ作られた網のようなものを出現させ、手渡してくれる。


――――――――――

【革造りの網】 武器:縄

装備可能レベル:1

制作者:CNVL

効果:網で捕らえた者に対し【拘束】効果。


説明:何かの革を継ぎ接ぎして作られた革の網。

   そこまで大きくはなく、捕らえられる数も多くはないだろう。

――――――――――


「あは、これがトリガーに引っかかるかどうかをまず確かめて、その後にちゃんと捕まえられるかって所だね。まぁ頑張ろうぜ」

「明日も用事あるからあんまり遅くまではできないですけどね、CNVL先輩」

「おいおい、それを言ったら君もだろう?マギ後輩」


そんな若干ふざけている先輩後輩の会話を聞きながら、私達は1Fを進んで行く。

目的地は2Fへと繋がる階段の近く……危なくなっても2Fにすぐに逃げ込めるくらいの位置だ。

頑張って慣れることにしよう。


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