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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第2章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

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Episode 27


--イベントフィールド 【決闘者の廃都】 交差点エリア

■【食人鬼A】CNVL


三度目の真正面からの突撃。

流石にそんなあからさまな手は取らないだろうと考えていたのか、少しだけ目を見開いていた彼だったが、それでも腰を低くしていつでも動けるように準備はしていた。

恐らく彼は、何か私が絡め手やらスキルを使って何かをするとでも思っているのだろう。


ある意味で絡め手なのかもしれないな、と。

そんなことを考えながら、私とスキニットの距離は再び0となる。


まずは一撃、上段からの振り下ろしを彼へとお見舞いしようとするが、しっかりと盾で防がれ勢いがそこで止まる。

それを好機と捉えたのか、スキニットはそのまま右手に持つ剣を私の腹に向かって突き出して。

それはずぶりと、私の腹の中へと沈み込んでいく。


「なっ……?!」


その感覚に刺した本人が驚いているのか、彼の声が漏れ。

私は逆に、自分がピンチだというのに大きく頬を歪ませた。


一瞬の思考の空白。

視界の隅で減っていく自分のHPバーを見て焦らないように。

私は【解体丸】をインベントリへと戻し、ナイトゾンビの腕を右手で取り出しながら。

突き出すように、というか現在進行形で私の腹を突き刺している剣を握るその手を、空いている左手で掴んで逃げれないようにした。


その手の感触に、私の考えというかその無謀とも言える策を察したのか、焦ったような顔をした彼の顔を見ながらも。

私はナイトゾンビの腕を喰らい、スキルを発動させて。

白銀に輝く剣を右手に出現させ、逃げれない彼の右腕へと振り下ろす。


スキニットは咄嗟に盾を構え、それを防ごうとしたが少しだけ遅く。

剣の腹へと盾の縁が当たり、軌道を少し変えただけでほぼほぼ勢いは変わらずに、彼の腕へと剣が触れた。


先程も感じた、肉にはない硬さを感じながらそのまま力を込め。

彼の右腕をそのまま切り落とした。


「一本ッ!」

「このっ!はな、れろッ!!」


切り落とされた腕はすぐに光へと変化していき、私の腹に刺さる剣にかかっていた力も抜ける。

それによって唯一私と繋がっていた部位が消えたからか。スキニットは盾を使い、押しのけるようにして私との距離を開けた。


私も私でこのまま彼の近くで戦うには、現在進行形で減っていっている自分のHPバーが少し心配だったため、それに身を任せるように彼との距離をとった。

すぐさまインベントリ内からスポーナーの肉塊を取り出し、それを喰らう。

スキルによってのHP回復、自己強化バフの延長、それに加え【祖の身を我に】を発動させ、私の身体から再度赤黒い人型が計3体生まれ落ちる。


「クソッ!本当に厄介だな!」


片腕がなくなった彼にとって、先程よりも対応しにくいはずで。

ある程度の量の肉を喰らった事で傷が塞がったのか、私の方のHPの減少がなくなって。

盾から片手剣に変え、迫ってくる人型達を何とか遠ざけようと奮闘しているスキニットへと近づき、左腕へと歯を立てた。


私をどうにか離れさせようと腕を振り、地面に叩き付けたりするものの。

現在進行形で人肉を喰らい回復をしている私には、少し強い衝撃程度でしかなく。

むしろその腕を振る勢いで肉を噛み千切り確実なダメージを与えていった。


そしてそんなことをしていれば。


「ぐっ!?」

「あはッ!万事休すッてェ奴だねぇ!」


私の方へと集中していたために、周囲への対応がおざなりとなってしまい、彼は人型に拘束されてしまう。

腕、両足が固定され、顔だけが自由に動かせるその状態で。

スキニットは苦しそうに舌打ちを漏らした。


「チッ……一瞬油断しちまった結果がこれか」

「いやぁ、あれで油断しなかったらこっちが普通に殺されて終わってただろうね」

「こういう所がまだ甘いんだよ。だからまだHardの2Fから先に進めねぇ」

「言っちゃアレだけど、私も相手が突然自分から刺さりに来たらびっくりするけどね」

「本人が言うなや……」


そう言いながら、彼は諦めたように首をだらんと下げる。

恐らく首を切って終わらせてくれと言外に伝えているのだろう。

私はインベントリから【解体丸】を取り出し、後ろへと回る。

彼のこの態度が私の油断を誘うための演技かもしれないからだ。


見た目だけでは本当にその人が諦めているかどうかはわからない。

私が考えられないような、ゲーマーならではの逆転方法もあるかもしれないから……出来る限り対応できるように自分が有利な位置へと移動して。

右斜め後ろから、彼の首へとマグロ包丁を突き入れた。


一瞬びくんと身体が跳ねた後、彼の首から血が溢れ出る。

暫くそれが続いたかと思えば、身体の端の方から光の粒子へと変わっていく。


--System Message 『CNVL選手の勝利です。転移しますので今暫くその場でお待ちください』

「ふぅー……」


流石に疲れを感じてしゃがみ込む。

時間だけ見ればそこまで経っていないものの、内容的に少しだけ精神的に疲れてしまったのだ。

特に刺された後なんてゴリ押しもいいところ。

本当に一瞬彼が呆けてくれなかったらどうしようもなかっただろう。


……というか私、基本的に回復できるからって結構無茶な攻撃してるなぁ。

【食人鬼】にランクアップしてからだろうか。そういう傾向の戦闘スタイルでやっていくことが多くなった気がする。


これから先、今までのように一撃喰らって何とかするというのは流石に意識的に辞めた方がいいだろう。

例を出すなら禍羅魔のような。一撃喰らったらアタッカーとしては致命傷となりえるスキルや技を持っている相手も増えていくかもしれないからだ。


今のスタイルから、どう自分を変えていくか。

それを考えながら、グリンゴッツによる転移が行われるのを休みつつ待つことにした。


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