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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第2章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

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Episode 17


■遠野 葵


イベント前日。

いつも通りのパーティメンバーで通話を繋ぎつつ、公開されたイベント内容について話し合っていた。


「あは、こういうイベントってやっぱりあるもんなんだねぇ」

『ありますね。いや、季節に気をとらわれすぎて忘れてましたけど……っていうか』


マギ、というか後輩が一度言葉を切り、溜息を吐いた。

イベント内容が発表されてからというもの、ある一名のおかげで疲労が溜まっているのだろう。

実を言えば私も彼女(・・)のストッパー役として駆り出されることが多く、実を言えば精神的には割と疲れている。


『ハロウさん、ハロウさん。楽しみなのはわかりますけど――』

『なに!?私今割と集中してるんだけど!!』

『――いえ、なんでもないです。そのまま静かに考えててください』

『分かったわ!!』


そう、ハロウが暴走しているのだ。

というのも、その暴走はある意味仕方ないというか。

決闘が大好きと言うには狂いすぎている彼女が暴走するくらいには、今回のイベント内容は彼女にマッチしすぎていた。


「しっかし、あの謳い文句でプレイヤー同士の決闘イベントとはねぇ……一応、それっぽい敵モブも出るフィールドに飛ばされるんだっけ?」

『そうだねぇ('ω')かぼちゃのお化けとか、そういうのが出てきたり。一応決闘の舞台になる廃墟の街にもNPCとして幽霊が居るみたい(´・ω・)』

「おや、メアリーちゃんは乗り気じゃない?……まぁ、そこの(ハロウ)みたいになってもらっても困るんだけど」

『うーん……(-_-;)私、あんまりお化けとか得意じゃないから('ω')』

「『成程』」


決闘自体は任意参加が可能となっていて。

それ以外のイベント限定で出現するハロウィンに因んだモブたちを倒すと期間限定の記念アイテムだったり、NPCが何かしらの素材アイテムと交換してくれるものだったりをドロップするようで。

前回の区間順位戦と比べると、いくらか平和なイベントだった。


一応私も決闘の方には参加する予定だ。

今回のイベントは第二階層にある闘技場で行うような狭い範囲での決闘ではなく、街全体を使っての決闘という事で楽しそうだなと思ったのが主な理由で。

それ以外の理由としては、面白そうだなと思った時にそれが顔に出ていたのか、それを見たハロウに押し切られたというのもあったりする。

それに、だ。


『何といっても!他の区画のプレイヤーと決闘出来るなんて良いじゃないの!ねぇ!?』

「あーはいはい。第二階層の闘技場じゃ同じ区画のプレイヤーかNPCとしか決闘できないんだっけ?」

『そうよ!いや、ほんとね。ランキングというシステム上仕方ないとは思うんだけどあんな代物を用意しておいてなんで同じ区画だけに限定するのかわからないのよ。出来るなら他の区画のプレイヤーとも決闘させていただきたいものだわ――』


ハロウが再びフルスロットルで走り出したため、狂人はほっといて明日の計画を他の2人と決めていくことにした。

と言っても、決闘の方に参加するのは私とハロウのみ。

マギとメアリーは今回適当にお祭り気分でフィールドで狩りをする程度にしておくとの事で、あまり決めることもないのだが。


明日の集合場所、それに加えメアリーからは個人的に渡すものがあるとのことで早めに集合するように言われ。

今日の通話は終了した。

色んな意味で明日が不安だが、まぁ備えることにしよう。




--浮遊監獄都市 カテナ 中央区画 メディウス 第一階層

■【食人鬼A】CNVL


翌日。

自らの準備は程々に、集合場所であるいつもの場所……メアリーの出店がある中央区画へとやってきていた。

デンスの方で集まっても良かったのだが、集まりやすさでいえば正直こちらの方が上なのだ。

わかりやすいし。


ということで探していると。

少しだけ騒ぎが起きているようで、何やら野次馬が大量に集まっていた。

とりあえず事態の把握の為という尤もらしい理由を自分の中ででっち上げ、近くにいた男性プレイヤーへと話かける。


「もし、そこの男性さん。この集まりは一体?」

「ん?お、CNVLちゃんじゃねぇの。ってぇことは丁度いいな……今ちょっと変なのにメアリーちゃんが絡まれててな?」

「成程?ちょっと行きますかねっと」


インベントリから未だ銘の付けていない短剣を取り出し、それを手に持つと。

声をあげながら野次馬の群れをかき分けて中心の方へと向かっていく。

途中で私の事に気付いたプレイヤーが多く、道を譲るように避けてくれたのは幸いだった。


そして中心に辿り着くと。

そこではメアリーに話しかけているほぼ初心者装備の男性?女性?プレイヤーと、その対応に困っているメアリーの姿があった。

……あー、成程?ただ話しかけてるだけだから周りが手を出せなかった感じかな。うーん、融通利かないなぁ。


私はそのまま当事者であるメアリー……ではなく。

周りに気付かず話しかけ続けているプレイヤーの後ろへ気付かれないように立ち、短剣をそっと首筋にあてた。


「ねぇ、いいでしょ……ッ!?」

「はい、ストップ。ほら、彼女困ってるのわからないかーい?」


カッコつけではなく、単純に暴れられても困るという考えからした行動だったが中々効果があったようで。

そのプレイヤーは両手を上げ降参のポーズをとる。


「あの、貴女は……?」

「私?私はそこの子と普段組んでるプレイヤーの1人さ。流石にその子が困ってるってのは見過ごせなくてねぇ……ほら、周り見てみ?」

「え?……あの、なんでこんなに人が……?」

「あ、知らない?この子、結構人気あってねぇ。掲示板の方じゃ勝手にファンクラブだったり、接する時の注意事項だったりが個別で出来てるくらいにはアイドルプレイヤーだったりするんだよ」


事実、メアリーの人気は高い。

攻略情報を出してくれるという意味でも、本人のその小動物的な仕草的にも。

このゲーム(FiC)の誘い文句である『【犯罪者】ばかりの――』という部分で、普通の女性プレイヤー達は手が出しにくいようで、女性のプレイヤー数は全体的にみると少ないのだ。

その中で、小柄な小動物のような金髪美少女が。チャット越しにはなるものの、ある程度友好的に誰にでも接してくれたら?……まぁ、祭り上げられるだろう。色んな意味で。


「まぁ、君がちゃんと知らないで話かけてたってんなら、少しは知ってから……それこそ中央区画に屯ってる人らに聞けばある程度彼女の事は分かると思うぜ?」

「……」

「ほら、解放してあげるから今日の所は行った行った。周りの野次馬諸君も、今度は助けてあげなー?チャットでしか話せないってわけでもないし、扱いに困るからって傍観は紳士でも犯罪者でも駄目だぜ?」

『『『はーい』』』

「よろしい。じゃあ解散」


私の掛け声によって、主にデンス所属のプレイヤー達が野次馬達を散らしていく。

事情というよりは、私の実力を知っているからこその動きではあったが。

すぐに飛んできたパーティ申請を受理した後に、話の中心であった彼女へと話しかける。


「やぁメアリーちゃん。大丈夫だった?」

『うん(;´Д`)ごめんねぇ、迷惑かけて(-_-;)』

「いや、これくらいだったら迷惑ですらないぜ?……まぁこのままだとちょっと注目されてるから離れようか」

『了解!』


そう言って現在居る場所から、いつも何かしらの話をする時につかっている端の方のスペースへと移動していく。

その道中で先程の騒動?についても聞いたが……まぁ、単純にパーティに誘われていただけだったようで。どうしても実力的な差があるために断ろうと思っていたものの、断るためにはチャットで答えるか肉声で答えるか。


しかし誘われているのがパーティの為、断るために一度パーティに入ってチャットして抜けるのもどうかと思い……というのがあの状況だったようで。

……少しあの子にも悪いことしちゃったなぁ。まぁ、仕方なし。今度あったら何かしら教えてあげることにしようかな。


「で、私を先に呼んだってことは頼んでたのが出来たってことで良いのかい?」

『うん!(゜д゜)!はい、これ!それとこれはおまけで!('ω')ノ』

「おまけって……まぁ良いけれど」


手渡されたのは、私が元々使っていた出刃包丁の刃を一回り程度長くしたものと、刀のような長さの刃を持つ包丁のようなものを渡された。


ーーーーーーーーーー

菜切・偽 武器:短剣

装備可能レベル:8~

制作者:メアリー

効果:人型モブに対して+5%のダメージボーナス。

   5%の確率で遠距離攻撃判定が発生。

説明:ある短刀の名を偽ながらも受け継ぐ短剣。

   時たま、触れていないものを切りつけてしまうため、取り扱いには注意が必要。

ーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーー

解体丸 武器:刀

装備可能レベル:8~

制作者:メアリー

効果:解体時に得られるアイテム数にボーナス。

説明:短めのマグロ包丁。

   武器としても扱う事が可能。

ーーーーーーーーーー


「おぉ、マグロ包丁。しかも解体にボーナスはありがたい……けど本当にいいのかい?」

『いいよいいよ('ω')ノさっき助けてくれたしね(;´Д`)』

「そういうことならありがたく。じゃあコレ包丁分の報酬ね」


そうやってアイテムを交換し、適当に話しながら自分の防具を作っていると。

集合時間になったのか、ハロウとマギが一緒になってこちらへと近づいてきていた。

4人集まったことで色々と注目されることにはなったが、それを今更気にするような者はこの場にはいるわけもなく。

イベント開始までの時間を適当に話しながら、アイテム制作や自身のやるべきことをして潰していれば。


突然、それは始まった。


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