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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第2章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

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Episode 10


--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 Hard 5F

■【食人鬼A】CNVL


変化は突然だった。

何か、ガラスが割れたような音がしたかと思えば。

見ている景色ごと変わっていく。


私達の落ちていっていた場所は、何かの図書館のように。

暗かったはずの周囲には、空を飛ぶ洋灯によって闇を掃われ。

そして何より、1人。何者かが、私達の方を見て拍手をしていた。


彼へと向かって、私達は落ちていく。

先程までのようにループはしないようで、このままでは床に激突してしまうだろう。

どうにか受け身、衝撃を出来るだけ無くす方向で着地できるかを必死に考えることにする。

……ハロウもこのまま一緒に落ちようか。この子、まだ目瞑ってるし。


本来ならば、ハロウに助けを乞いながら、どうにか策を考えたい所なのだが。

落下するのに恐怖を覚えている人間に対し、着地の為の策を考えさせるのはあまりに酷だろう。

私は溜息を吐きながら、スポーナーの肉塊を取り出した。


『いやはや。割とすぐに抜けてきたのは驚きだ。気付くとは思ったけど、やっぱり構成が型にハマってるのが一番の理由かな』


何やら聞こえるように喋ってくれているが。

生憎とこちらにはそれに対応する暇がない。


スポーナーの肉塊を喰らい、スキルを発動させ。

その結果、私の身体から赤黒い何か達が落ちていく。

私の身体から出てきたものなのに私より重いのか、少しだけ先に落ちていくそれの直上を確保し。

そしてそのまま図書館の床へと落ちた。


先に落ちたそれらは水音を含んだ落下音を響かせつつも、私とハロウの身を落下の衝撃からクッションとなって守ってくれた。

しかしながら、それも完全というわけではなく。

2割ほどのHPが持っていかれてしまった。


「あ、アレ?浮遊感が……」

「ほら、ハロウ。そろそろ目ぇ開けて。着いたから」

「着いたって……あぁ、なるほど。ごめんなさい、取り乱したわ」

「あは、多分マギくんかメアリーちゃんが録画してると思うから今更取り繕っても遅いぜ?」

「なっ……!」


わなわなと震えだしたハロウを放置し、私は出刃包丁を手に握りながら、目の前に立つ西洋貴族のような恰好をした男へと話しかけることにした。

恐らくだが、アレがここの主なのだと、半ば核心近い考えをもって。


「で?貴方を殺せばいいの?」

『はッはッは、思っていたが中々良い子じゃあないか!そうだろうよ我が作品(子供)達!』

「……ムービー、ではないか」


ちらりと近くに落ちてきたマギ達の様子を確認する。

どうやらこちらはクッションのようなものの生成が間に合わなかったのか、私達よりもダメージを受けているようで。

現在回復中、まだまだ行動を開始するには時間がかかりそうだった。


ハロウはもう少し、現実を受け入れるための時間が必要なのだろう。

まだ目を開くことなく何処かを見つめるようにして座っていた。

何故か哀愁漂うそれを放置し、突然笑い始めた男へと目を向ける。


『んんっ!失礼、お嬢さん。久々にこの姿と成れたものでね。あぁ、感謝しよう。君たちのおかげで、私はここへと落ちてこれた』

「……落ちて、ってことはつまり」

『そう!私が、私こそがシェイクスピア!【劇場作家 シェイクスピア】!君たちの糧となる者!君たちの前に立ちはだかる者!!』


-【劇場作家 シェイクスピア 完全体】-


名前が出現し、彼の頭上には3本のHPバーが出現した。

私以外が動けないこの現状での、戦闘開始だった。




金の一閃を、紙一重で避ける。

自分でバフを掛けて、それでやっと避けられるレベルの速度で放たれるそれは、4Fに出てきたシェイクスピアと同じように金の剣を虚空から取り出した彼による攻撃。

しかし前回とは違う点がちゃんとあって。


未だハロウは何かをやっているようで動けない。

マギとメアリーはもう少しで準備が終わるのか、ガチャガチャと何かをやっている音が聞こえている。

そして一番の違う点。それは今私が相手にしている彼自身だ。


一見したらNPCかと思ってしまうほどに、ゾンビとは思えない人間のような姿となった彼は、その容姿に相応しい知能まで備わっていた。

こちらが攻撃しようとすれば、それを察知した瞬間に防御態勢にはいり。

彼の攻撃の中にはフェイントらしきものも含まれている。

今は何故か私だけしか狙われていないが、恐らくはマギ達が参戦した場合、そちらを優先的に潰そうとしてくる可能性だって考えられる。


そんな彼に一撃入れようと、私は出刃を握りしめて。

本当に近くにいるシェイクスピアへと薙ぐように振るった。

しかしながらひらりと避けられ、逆に一撃喰らいそうになる。

何とか横に飛び避けた私に対して、彼は追撃をしようとして、剣を止め。

何かを切り払うように虚空へと向かって振るった。


ガキン、という音と共に何か棒のようなものが落ちるのが見え。

それがメアリーの使うクロスボウによる支援だという事が分かった。


『ごめんね、お待たせ!(゜д゜)!』

「バフかけます!ハロウさんに関してもこっちに任せてもらって大丈夫です!」


マギによってバフがかけられ。身体が軽くなる。

反撃開始だ。


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