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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第2章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

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Episode 9


--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 5F

■【食人鬼A】CNVL


このダンジョンで二度目の落下。

3Fから4Fへと降りる時の落下は自分から飛んだものだったが、今回は違う。

所謂ゲームのギミック、というやつだろう。


問題は、このゲームを始めた時……初めて中央区画へと降り立った時のような姿勢制御のようなものが一切ないところだろうか。


「あははっ!流石にこれは怖いなぁ!!」

「全然怖そうに聞こえないわよちょっと!!」

「あ、先輩。こっちメアリーさん確保したんで、ハロウさんよろしくお願いします」

「りょうかーい……ってこれどうやって空中で移動するんだい?……いいや、ハロウがんば!」

「はぁ!?」


声のした方向を見てみれば、メアリーをまるで米俵のように確保しているマギの姿と。

涙目でバタバタと落ちていくハロウの姿があった。

……高いところ、というよりはこういう落下系が苦手なんだろうなぁ。

助けてあげたい気持ちはあるが、正直私も私の方で安全に着地できるかどうか分からないため、今回は自分の身を優先させてもらう。


まぁ、死ななければHPの消費くらいで済むだろうし、マギに回復してもらえばいいのだ。

それくらいの気軽さで。少しだけ笑いながら落下していく。


『落下長くない?(´・ω・)』


メアリーがチャットによって疑問を代弁してくれる。

現在進行形で落ちているのにせよ、どう考えても落下している時間が長すぎる。

いや、それこそ立地的にいつの間にか本当の空へと放り出されている可能性も考えられる。

そんなことを考え、周囲を見渡して。すぐさま自分のその考えを否定する。


そもそもダンジョンから外へ出ていた場合、何かしらのメッセージが出るはずだ。

それが出ていない、警告らしきものすらも出現していない時点でまだここはダンジョン内。ボス戦の途中だと判断した。

ならば、どこかにこの落下の終わりはあるはずだろう。

目視以外の索敵技能を持っていない私だけでは心もとない。そう考え、マギへと声をかける。


「マギくーん!」

「はーい」

「感覚強化でその辺の風の動きとかどうなってるー?」

「ちょっと待ってくださーい……ん、んん?」


問いかけ、答えを待つこと数瞬。

何かに気が付いた彼が、こちらへ向かって口を開いた。


「突然、僕たちが移動してる感じ……って言ってわかります?落下中にループしてるっていうか」

「成程?一定の所まで落ちたらまた一番上に戻されてる……みたいな?」

「そうですそうです」

「そりゃ厄介だ。いつの間にか居なくなってる仮称シェイクスピアの事も気になるし……どうするかな」


こういう事を考えるのはハロウかマギの得意分野だが。

現在進行形で叫び声のBGMと化しているハロウは今回役には立たないだろう。

ループものにはどこかしらにそれを止めるための機構が用意されているものだ。

ゲームであるこの世界ならば確実にそれらしいものはある、と思いたい。


しかしながら。

このループを解くためのヒントというものは提示されていない。いや、既に提示されているのかもしれないが、少なくとも私はそれを確認していない。

あの様子から、マギも分かっていないのだろう。


「マギくんはそのまま感覚強化でどっかに穴ないか探して!横穴!私はあの子(ハロウ)どうにかするから!」

『私はどうするー?(*‘∀‘)』

「メアリーちゃんも何かないか探しておいて!くっそ、こういうのは私の仕事じゃあないぜハロウ……!!」


こっちの話も気が付いていないのか。

ずっと叫び続けている彼女の方へと視線を向ける。

……目、瞑ってるなぁ。アレ。


仕方ないと溜息を吐いた後に、彼女の近くへと近寄っていく。

空を泳ぐように、イメージは平泳ぎで。

彼女の近くへと着くと同時、バタバタと暴れている彼女の体を抱きすくめる。

これ以上暴れてもらっても困るからだ。


「ひぅ!?」

「おーいハロウー?!ちょっとそのままでいいから聞いてくれるー??」

「な、なによCNVLじゃない……何か言ってから近くに来てよ……!」

「言ってたんだけどね?まぁいいや。さっきからマギくんと話してたこと教えてあげるからちょっと考えようか」

「……?」


彼女は私という、ある程度話せる相手が近くに来たからか少しは落ち着いたようで。

こちらの言葉に反応してくれた。


そのまま先程から話していた内容を話し、彼女の視点から何かわからないかを考えてもらう。

ちなみにここまで話しても彼女は目を開いていない。


「……」

「いやぁ、マギくんもヒントみたいなの見つけてなくてね。ある意味お手上げ状態なんだよ。だから君も一緒に考えてほしくて――「ちょっと、いいかしら」――お、来たね。なんだい?」


そこまで話して、彼女は私の言葉を止めた。

見れば彼女の顔は今だ目を瞑っているものの。真剣な顔つきへと変わっていた。

その顔が周囲のどこかへと向けられる。


「やっぱり……そうね。CNVL、貴女目を瞑ったら何か見える?」

「いや、見えないけど……あぁ、そういうこと?運営さんも意地悪な事するぜ」

「本当にそうね。……私にはこの状態でも見えている。目を瞑っていてもこの落下の状況が見えてしまっている。この目(・・・)のおかげで。そしてその中に、何か光ってるドクロみたいなのも見えてるのよね」


彼女の目は、片目だけが義眼となっている。

劇場作家の炯眼。装備したプレイヤーに対して【目利き】と呼ばれる、注視したものの名前を与える程度のスキルを付与するだけの装飾品。

しかし、今回はソレがキーアイテムとなっていた。


彼女がずっと叫んでいたのもそこが原因なのだろう。

目を閉じていても、落下している現状がずっと見えていれば苦手な人にはつらいものだ。

よく気絶……というか、このゲームから弾かれなかったなぁ、と思う。


「うん、十中八九それだろうね。おっけー、それ動いてる?」

「いいえ、動いてないわね……近くにメアリーは?」

『いるよー!(゜д゜)!というか私達は見えてないの?(´・ω・)』

「……見えないわね。あくまで周りの状況しか分からないわ。メアリー、私のいう方向にクロスボウで矢を撃ってもらってもいいかしら」

『落下してるから風で方向ずれない?(´・ω・)』

「それについては大丈夫。多分問題ないわ」


目を瞑りつつサムズアップしている姿はまったくもって大丈夫ではないのだが。

メアリーも一応は納得したのか、彼女の指示に従ってボルトを撃ち始める。

一回、二回と撃ち。メアリーも何か分かったのか驚いたような顔をしながらも、ハロウの指示に従い撃っていく。


計十回ほど撃っただろうか。

唐突に変化は訪れた。


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