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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第2章 【食人鬼】は被食者の夢を見るか?

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30/194

Episode 1

2章開始


■【食人鬼】


この世界の私は自由だ。

なんたって、何を食べても吐くことはないし。

ん?『食』がそんなに大事なのかって?


君は分かってないな。

『食』というのは、君の思っている以上に大切なものなんだ。

確かに、人によっては食にはあまり力を入れず……それこそ栄養管理食材だったり簡単なモノで済ませるという人もいるだろう。

しかし、私はそういう人とは違うのさ。


私にとって『食』っていうのはね。

もう何年も前に失われてしまったもので。それを取り戻すために沢山の事を考え、実行して、そして誘われたこの地で再び取り戻すことが出来たものなんだ。


だからこそ。

君にはそういったモノがこの『Festival in Crime』という作品で、私でいう『食』を見つけてほしいと思ってるんだ。

いや、君なら既に見つけているのかもしれないな。

それから必死に目を逸らしているだけで。


さぁ、君は何から目をそらしている(逃げている)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



■遠野 葵


大学から帰った後。

Festival in Crimeにログインする前に、足りない知識を埋めるため色々なサイトを巡ったりしていた。

例えば、掲示板。

ログインしている者のみが書き込めるスレッドと、全員が書き込めるスレッド。この両方を見ながら、一応公式のサイトを覗いていく。


「んー。やっぱりまだランクアップしてる人の情報は少なそうだなぁ」


と言っても、主に調べるのはランクアップ関係の情報。

私と同じ【犯罪者】である【食人鬼】、それに類するものになった人がいないかを確かめるためだ。

マギ……後輩やハロウに言わせればキワモノプレイと言われるのだろうが、それでも似たようなプレイをする者は確実にいるはず。

そんな彼らにコンタクトをとって、色々とご教授願おうという考えもあった。


「ま、そんな都合のいい話は絶対ないよね。……仕方ない。とりあえずログインしようか」


そんな風に調べていたら、目に留まった公式サイトの大きな文字。

『第一回大型アップデート!』という、過剰じゃないかと思うくらいに装飾されたソレを見つつ、私はいつも使っているヘルメット型のVR機器を被り起動した。


意識が遠く、そして深い所に潜っていく。

スゥと体から何かが抜けていく感覚は、最初は慣れなかったが、少しずつ好きになってきた。

あの世界に降りる感覚だからだろうか。





--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス

■【食人鬼A】CNVL


そうして、私はCNVLとしてこの地に降り立つ。

身体が軽い。何かに抑えつけれているようなそんな感覚がないこの世界(ゲーム)は本当に素晴らしい。


前回のイベント……区画順位戦から数日経ち、区画間のゴタゴタも落ち着いてきている。

私はそこらへんの問題についてはあまり興味がなかったため、いつもパーティを組んでいるまとめ役であるハロウに任せきっていた。

……あぁ、いつもパーティ組んでる人達の事を『固定』っていうんだっけ。


セーフティエリアから出て、友人らのログイン状況を確認する。

現在は2人……ハロウとメアリーがインしているようで。とりあえずメアリーの元へと向かう事にした。どうせメアリーと共に居ればハロウも合流するだろうから。

ちなみにマギは今日もバイトのようなモノがあって、ログインするのが遅れるらしい。ご苦労な事だ。断じて仲間外れなどではない。


「むぐ……あぁ、そういえば今日はHardに挑む日だったっけ」


【劇場作家の洋館】。そのハードモードをクリアする。

区画順位戦前、ハロウが1人で挑み敗れたそこを皆でクリアするための話し合いと実行に移す日だ。

但し、そのハロウが敗れたナイトゾンビに関しては区画順位戦中に討伐しているため、過去と現在では戦闘経験値的にも、レベル的にも違うのだが。



--浮遊監獄都市 カテナ 中央区画 メディウス


歩いて中央へと向かう。

区画順位戦が終わったからか、デンスのような光景が広がるそこはいつも通りに人で溢れていた。


適当に周囲を見渡すと、いつも通りにぽっかりと人がいない露店を見つけることが出来た。

露店の主はローブを頭から被っており……時折見える金髪が陽によって輝いていた。

私はその露店へと近づいて、露店の主へと話しかけながらパーティ申請を行う。


「お、居た居た。やぁやぁメアリーちゃん。元気?」

『どうもCNVLさん(゜д゜)!1人なんです?('ω')?』

「今日はマギくんがバイトの日でね。一応メアリーちゃんと合流してればハロウも来るだろうって思って……と、言ってたら本人が来たねぇ」

「あら、CNVL。メアリーと一緒なんて珍しいわね」


適当な腐った肉片を食べながらメアリーと話していると、片目が赤く巨大な鋏を背負った囚人服の美人がこちらへと歩いてきていた。

私達のパーティ、そのリーダーであるハロウその人だ。


「やぁ。マギくんが遅れるから暇でね。ちょっと冷やかしに来たんだよ……っと、そっちは装備関係の話かい?」

「そうね。ちょっとここで話すのもなんだから場所を移しましょう。そこで話し合いもするって事で……マギの方には連絡取れるの?」

「一応ゲーム内からメッセージだけは送れるし受信も出来るから問題ないね」

「なら行きましょうか」


場所を移す……といっても、そこまで重要な話でもないのか中央区画から移動はせずに人が少ない端の方へと移動しただけなのだが。


「ここらへんでいいでしょう。……ってことで、メアリー?」

『うん、出来てるよ('ω')お代は鉄の欠片と破れた頁を使った【人革】分ずつで良い?(´・ω・)』

「いいわよ、じゃあ交渉(トレード)成立ってことで」


そう言って、2人が私には見えないウィンドウを操作した瞬間、ハロウの姿が変わる。

トレンチコートのようなものを羽織り、下の囚人服をショートパンツに変えたようで。

これまでの装備とは違い、武器ではなく防具面の変更だったために少しだけ驚いてしまった。


「おぉ、雰囲気変わるねぇ。でもなんでショートパンツ?」

「好きなのよ。動きやすくて」

「成程ねー……ってよく見ればトレンチコートっぽくはないね。それ」

『ミリタリーコートの方を参考に作ってみたからね(*‘∀‘)どうかな、動きづらかったりとかしない?』

「大丈夫よ、むしろ動きやすいくらい。ありがとう」

『いえいえ!素材溜まったら中の囚人服の方も作るから待ってて!(^^)!』


会話的に、恐らく【人革】か何かで作られているであろうその2つの装備品を眺めながら。

私も何かしらの装備更新をしておいた方がいいかもしれないと考え始めていた。

というのも、私自身装備の更新……新調自体は行っているのだが、主にやっているのはメインの武器である出刃包丁くらいで、防具の方はあまり手を出していないのだ。

……でも私よりは【加工師】のメアリーが作った方が性能よくなるんだよねぇ。うーん、世知辛い。


ランクアップした弊害の1つなのだろう。

同じアイテム制作・加工ができる【ゲイン】から派生した上位職ではあるものの、【食人鬼】と【加工師】ではその役割が違うために作ることができるアイテムにどうしても差ができてしまうのだ。

【食人鬼】(こちら)はどちらかと言えば、戦闘系。その中でも武器や罠といったものに特化していて。

【加工師】(あちら)はアイテム全般。全体的に高い水準で制作・加工を行う事が出来るスキルを持っている。

これがゲーム内の役割分担(ロール)というやつなのだろうな、と薄い知識を駆使して何とか納得することにした。



その後、【劇場作家の洋館】にてどういう動きをするのかを話し合いながら。

マギが合流するまでの時間を潰し、攻略へと向かった。


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