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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第1章 ハジメマシテ、【犯罪者】
3/194

Episode 3


--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 1F

■【リッパー A】ハロウ


「あっ、そっち行ったよハロウ!」

「こっちに来られても困るんだけどもっ!」


私はこちらへと飛んできた本のモンスター……フリューブックに向けてナイフを振るうが、努力むなしく空を切る。

タイミングが合わない、というわけではなく。

フリューブック側が、こちらの動きを見てひらりひらりと避けてしまう所為だ。


私もCNVLも持っている武器はお世辞にも対空性能が高いとは言えない。

もしかしたらレベルが上がればそれぞれ対空用のスキルが生えるのかもしれないが……今は関係のない話。

私よりも少しはこのゲームに詳しいCNVLに聞けば、

『対空アイテムなら【ゲイン(私ら)】くらいじゃない?手段ならやっぱりスキルだろうけど』

とのこと。


つまりは、そんなスキルが生えるか材料を集めて対空アイテムをCNVLに作ってもらうくらいしか方法がないのだ。

おそらくは他にスキルを覚える方法なんかも有るのだろうが、そういうものは見た範囲では発見できなかったため……まだ行っていない区画にあるのかもしれない。


「よしっ!当たった!」


そんなことを考えていると、CNVLの声が上がる。

見れば、彼女の近くには切られて落ちたのであろうフリューブックが1冊……1体?ジタバタと暴れていた。


素早く駆け寄り何度か手に持つナイフで切りつけると、HPバーが底を尽き光となって消えていく。

意外とあっけないが、そもそも序盤も序盤。

ゲーム開始後すぐに入れるようなダンジョンのモンスターだ。こんなものだろう。


「ドロップアイテムはログに表示される形式ね」

「そうそう。……あは、破れた頁が2枚かな。うん、まだ何に使えばいいのかさっぱりだ」


フリューブックのドロップは破れた項というアイテムだった。

撃破後そのままインベントリに入る都合上、実物自体は見れていないが、表示されているアイコンからすると、単純に破れたページみたいなアイテムなのだろう。


集めたら本になったりするのだろうか。


その後、数十分ほど奥へと進んで行くと次の階層へ移る階段を発見する事ができた。

ここまでに出会った敵性モブは合計三種類。

まず私達が苦戦を強いられている空飛ぶ本、フリューブック。

それに加え、道中に倒れていた死体が突然動き出し襲い掛かってきたアクターゾンビ。

最後に、フリューブックが複数集まり合体し人型を形成したブックゴーレムだ。


ドロップとしては、アクターゾンビからは腐った肉片、たまに鉄の欠片というアイテム作成スキルさえあれば加工できそうなアイテムが。

ブック系からは変わらず破れた頁のみが手に入った。

破れた頁だけでも軽く十は超える量が取れたため、後でCNVLに頼んで本か何かに加工してもらった方がいいだろう。


「よし、一旦休憩しようか」

「そうしましょう。レベルも上がったし、そっちはそっちで何かしら新しく作れるんじゃない?」

「あは、そうだね。ゾンビとゴーレムから【人革】も落ちたし、ちょっと作ってみることにするよ。あとスキルも新しく覚えたしそっちの調子も確かめたいしね」


パーティ人数が二人だからだろうか。私達のレベルは1から3まで上がり、新しいスキルも覚えていた。

私は破れた頁をCNVLに渡し、適当なアイテムを作ってもらうよう頼んだ後、覚えたスキルを確認する。


――――――――――

【シャープエッジ】

任意の装備している刃がついたアイテムのATKを強化する。

系統レベルによって強化数値が変動する。

――――――――――


これが私の覚えた新しいスキル。

恐らく私の【リッパー】の成長系統がAttackだからこそ覚えたスキルだろう。

効果としては単純に火力アップ系で、例えるならゲームでよくある付与(エンチャント)に似ているだろうか。

詳しく検証していないため分からないが、恐らく固定値でダメージが増える形式のスキルだろう。

説明にもある通り、系統レベルさえ上げていけば便利なスキルになる気がする。


「うし、完成。ハロウの分はこれね」

「ん、ありがとう。……これは、革の手帳?」

「そうそう。【人革】と破れた頁を使って作った【人革の(ヒューマ・)手帳(ノートブック)】。効果としては魔法ダメージアップに精神汚染耐性だって。いやぁ、そういうのもあるんだねこのゲーム」

「……地味に耐性付きの装備品。序盤じゃ結構貴重ね」


一応、装備する前にどういった効果を持つのか確かめておく。


―――――――――――

【人革の手帳】 装飾品

装備可能レベル:1

制作者:CNVL

効果:装備すると、魔法ダメージに2%のボーナス

   精神汚染耐性:小


説明:人革で作れた手帳

   あぁ、なんて冒涜的な道具なんだ!

――――――――――


「ねぇ、これ……」

「あは、冒涜的だって。そりゃ当然だよね、【人革】使ってるんだ。これが冒涜的じゃなかったらなんだっていうのさ」


制作者本人が分かってるなら、まぁいいだろう。

ステータス画面から【人革の手帳】を装備する。


装飾品の装備欄は全身で合計10も空いていて、どこに装備するかは個人の好みによって変えることが可能となっている。

腰からぶら下がるような形で設定すると、先ほどまでは存在しなかった紐がどこかからか出現し、囚人服の腰辺りで留めてくれた。


「おぉ、結構お洒落じゃん」

「囚人服だけどね」

「……早めに何か服とか装備買うか作るかしないとなぁ」


ちなみにCNVLが手に入れた新しいスキルは【人骨加工】という、彼女に言わせればらしい(・・・)スキルとのこと。

効果としては、人型範疇の敵性モブなどから【人革】以外にも【人骨】が大中小のサイズでランダムにドロップするようになる……らしい。何故【人骨】がドロップすることがらしい(・・・)のかは分からないがそういう事なのだろう。


休憩もそこそこに、私達は次の階層へ移動をした。



--第二区画ダンジョン 【劇場作家の洋館】 2F

視界の隅にフェードインしてきた文字を確認しながら、周囲を見渡す。

大体がほぼほぼ第1階層と似たようなものだったが、大きく変わっている点が1つ。


「全体的に廃墟っぽくなってる?」


所々床が崩れていたり、壁に罅が入っていたりもする。

極めつけは、そこらに倒れている人間の死体から蔦のような植物が生えている所だろうか。

階層が上がるにつれ何かしら変わるとは考えていたが、ここまで分かりやすく変わっていると少し進むかどうか迷ってしまう。

隣にいるCNVLもそう思ったのか、こちらを見て、


「どうする?」


そう聞いてきた。

こういったゲームの経験が少ないからだろう。経験者の判断に委ねるといったところか。

少しだけ考え、リアルの時間も確認する。


「とりあえず、このまま進んでモンスターの強さだけでも確認しましょうか」

「了解。そろそろ後輩も来るだろうしそこらで解散だね……あ、よかったら一緒に来てもいいけど?」

「それは流石にやめておくわ、悪いもの」

「そうかい?ならまた今度だ」



そんなことを話ながら、奥へと進んで行くこと数分。

1Fで出てきた3種のモンスターと共に、もう1種のモンスターが出現した。

見た目はほぼアクターゾンビと変わらないものの、まるで戦士のように長剣と盾を装備していた。

名前はソルジャーゾンビ。そのままだ。


「よっ、ほっ!」


CNVLが攻撃をせず、ソルジャーゾンビの攻撃を一方的に避け続ける。

無駄なHPの減少をしないよう、大きく避けてはいるが時々剣が当たりそうになっているため、僅かに焦る。

が、焦るだけだ。

私は大きく剣を振るったソルジャーゾンビの背後へと移動し、そのうなじへとナイフを押し込みグリッと回す。


「結構避けるの楽しく……ってあぁ!!」


モンスターにも急所判定があるのか、それともソルジャーゾンビが人型範疇のモンスターだからかは分からないが、ナイフを押し込みまわした瞬間HPが一気に減り、その身体を光へと変えていった。

戦闘終了だ。


「ふぅ……少し苦戦する程度ね。硬すぎるわけでも、軟すぎるわけでもない。反応速度もゾンビだからと言って遅すぎるわけじゃないし……戦闘に慣れるならこの階層の方がいいかも」

「……ドロップアイテムはあんまり変わらないみたい。でも鉄の欠片が出てるから、もしかしたらソルジャーの方がメインでドロップするアイテムかも?」

「剣とか持ってたしありえなくはないわねぇ」


戦闘能力はそこまで高くはないが……直剣を使い攻撃をしてくるために、下手したら首や急所にあたる場所に当たってしまった場合即死も見えてくる。

1Fの時のように、適当にあしらいながら進むというのもダメだろう。

最悪、フリューブックを相手している時に後ろから不意打ちを受け、そのままデスペナルティ行きもあり得る。


「単純に既存モンスターの強化系かな」

「ゾンビでこうなるって、他の2種はどうなるのかしらね?ブック系は厄介そう……」

「あは、ブック系の強化によってはゴーレムも厄介になりそうだ」


そんな話をしながら、1Fへと戻る階段の前まで戻ってくる。

一度解散するために外へと出るためだ。

確認すると、一種のテレポーターとなっているのか上へと上がる階段に近づいた瞬間、どこに移動するかの案内が出現した。


――――――――――

<どこに移動しますか?>

 ▼出口

  1F

  2F

――――――――――


2Fが灰色で表示されていることから、同じ階層に移動することはできないのだろう。


「いやー楽しかった楽しかった」

「私も楽しかったわ、ありがとう。またPT組んでくれる?」

「勿論、大丈夫!次は後輩もつれていくから楽しみにしておいてくれ」

「それは楽しみね。ではまた」

「バイバーイ!」


私は案内の出口を選択し、そのまま光に包まれる。

次の瞬間、光が晴れると共に私の視界には入る前とあまり変わらない軽いお祭りのようになっている光景が広がった。

こうして、このゲームにおける初めての冒険が終わった。

……先ほど別れたCNVLが隣にいたため、締まらない終わりではあったが。



――――――――――

PLName:ハロウ Level:3

【犯罪者】:【リッパ―A】

所属区画:なし


・所持スキル

【切裂衝動】、【シャープエッジ】


・装備品

【使用済みナイフ】、平凡な囚人服【上】、平凡な囚人服【下】、【人革の手帳】


・称号

なし

――――――――――


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