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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第1章 ハジメマシテ、【犯罪者】

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Episode 19


--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス

■【リッパーA】ハロウ


「やっと当たってくれたなァ!察しの通り状態異常系のスキルだ。詳細までは教えねェがな……」

「おやお喋りタイムかい?こちらとしてはありがたいけど。こういっちゃあなんだけど、君攻め手として向いてないだろう」

「挑発か?はッはッはァ、良いんだよ。この間に――」


--ALL System Message 『第三区画のモンスター生成系施設が破壊されました。(1/4)一定時間中モンスターの出現数が減少します』

--ALL System Message 『第三区画のモンスター生成系施設が破壊されました。(2/4)一定時間中モンスターの出現数が減少します』


「ほらな?」

「第三区画……オリエンスか!」


通称ファンタジー区画とも言われている、魔力やらといった超常現象によって成り立っている区画。

恐らくは彼はその区画の所属なのだろう。

役割としては……それぞれ私達が腕を負傷しているのに攻撃してこないことから足止めか?

……足止めに何のメリットが……いや、確かにあるにはあるわね。


一見、この足止めは意味が無いように見える。

事実、私達が掲示板でその事実を伝えれば大半のプレイヤー達は止まるだろう。

しかし、どうしてもこういったオンラインのゲーム上、独断専行する者らは確実に出てくる。


彼は恐らくそういった者らを使ってポイントを稼ぐために来ている面もあるのだろう。

そもそもPS的に私は兎も角、武器のリーチの差などがありつつもCNVLと1人で渡り合えるレベルだ。

TonyHack達が一方的に嬲られていた事にもある程度納得はいく。


「……しかも下手に倒せばデスペナルティによって強化されるってわけね」

「お?頭の回転が速そうな奴もいるじゃねぇの」


男は少し驚いたような顔をして、ニヤリと笑う。

……注意人物として名前を控えておいた方が無難かしら。何もわからないよりかはマシね。

右目を凝らし、その男の事を見る。

すると名前が浮かぶと同時、ニヤニヤしていた男の顔が不機嫌なモノとなった。


「そこのオッドアイの奴。今なんかしたな?」

「さぁ?一体何のことか分からないわね……えーっと『禍羅魔(からま)』さん?」

「……テメェ」

「あら?本当にコレ貴方の名前だったの?一応確認の意味も込めて言ってみただけだったのだけど。これは良い情報ね」


そう言いながら、パーティチャットの方でメアリーに指示を出す。

掲示板に情報を出してもらうためだ。それに加え、どうせこの近くに来ているならば防御系の系統を育てているプレイヤーを中心にして来てもらう旨も一緒に書いてもらう。

単純にこのまま戦闘が続く場合、私達だけでは相手をするには荷が重いためだ。


それともう一つ。多くのプレイヤーからは反対されるだろうが、一番無難である作戦を提示してもらうことにする。

当然、それはメアリーにすら伝えてなかったモノであるためか、メアリーからも『本当にこれ書いてもいいの?(;´Д`)』と心配されてしまったが構わないだろう。

追加で私が考えたと言っていいと伝えたら、渋々書き込んでくれた。


禍羅魔の防御系系統がどれほどまで育っているかは知らないが、それでもそこまで極端に高いレベルではないだろう。

それで私とCNVLの攻撃を完全に防げるほどの性能があるのだ。

ならば、他の【犯罪者】の防御系系統でも似たような効果は期待できるだろう。


例え【ラミレス】の防御系系統だけが特化しているとしても、他の【犯罪者】を何人か集めるだけでも互角以上の戦いは出来るようになるだろう。

結局は相手は1人なのだ。それならばある程度やりようはある。

それに、相手も足止め……時間稼ぎが目的ならば、こちらと目的は同じだ。こうやって話をしているだけでもこちらにも利がある。

良く言うWin-Winの関係という奴だろうか。


「貴方はこちらを倒す気はないみたいだし、こちらも今は倒すつもりはない……つまりは話し合いの場が出来たってわけね」

「はァ?何言ってんだテメェ」

「いいから聞きなさいって。私の事をその大剣で攻撃してこないってことはある程度の足止めが目的なんでしょう?……あぁ、もしかして彼女の事が気になってるのかしら。でも――」

「あは。私は色々考えるのが苦手な性質でね。こうやって私らのリーダーが話始めたってことは、何かしら案があるってことさ。それを私の身勝手な行動で潰すのは惜しいからね。今は攻撃をしないと誓ってもいいぜ?」

「――ってことらしいから。心配するだけ無駄よ」


……別にリーダーになった覚えはないのだけどね。

一応、CNVLにもパーティチャット自体は見えているだろう。

ただ、集中状態にある彼女の頭の中にそれがインプットされているかどうかといわれると……それは話からない。

だからこう言ってくれるだけでもありがたかったりするのだ。


『掲示板からの賛成多数だね。一応独断で戦闘動画載せたけど大丈夫だった?(;´Д`)』

『大丈夫よ。実際私はスキル使ってないし、CNVLの方も傍目から見て分かりにくい物しか使ってないから』


ここでパーティチャットの方でメアリーから連絡が来た。


「というわけで、デンスとオリエンスの両区画の不可侵条約もしくは同盟でも結びたいのだけど、そっちの代表出してもらえる?」

「……はァ?」


禍羅魔は顔を手で押さえながらも、何とかそう捻りだしたかのように呟いた。





「いや、まァよ。分かった。つまりは協力してこのイベントをこなすか、互いに干渉しないかのどちらかを頼みたいってことだな?」

「そういう事よ。一応システムにもあるみたいだから、やろうと思えば区画所属プレイヤーならルールで縛ることは可能よ。……だから一応、こちらの言う事を聞かない相手も縛ることは可能なの」

「成程なァ……一応聞くが、それは独断か?」

「発案自体は私だけど、その後きちんと区画掲示板で聞いて賛成多数だったから提案してるわ。この世の中は多数派が勝つのよ」

「俺が言う事じャあねェが、お前恨み買うぞ」

「承知の上よ。今更だしね」


そう、本当に今更なのだ。

言ってしまえば、今の時代どんな物事を成したとしても嫉妬する人間は現れる。

それこそ、私達のパーティが成した【劇場作家の洋館】の初攻略なんてそれの最たるものだろう。


事実、区画を歩いていると突っかかってくるプレイヤーは0ではないし、色々な感情を向けられていることも知っている。

それに今回はやる前にきちんとデンスに所属しているプレイヤーならば見れる掲示板で多数決を行っている。言ってしまえば見ていない方が悪い。

当然、そう言えば反論というか批判されるのは分かっているが。


「……ちッと待て。確認する」

「よろしく。応じてくれるようならメディウスで落ち合う事も言っておいてくれると嬉しいわ」

「……はァ」


笑顔でそう言うと、禍羅魔は心底嫌そうな顔をしながら明後日の方向を向いて一人で話始めた。

恐らくはパーティチャットを使って音声通話でもしているのだろう。

その間にマギ達を呼び寄せ、私とCNVLの怪我の回復を頼むことにした。




しばらくして。

禍羅魔が話を終えたのか、こちらへと両手を上げながら近づいてくる。

恐らくは敵意がないことを示す為の行動だろう。マギ達が構えそうになるのを手で制し、出来る限りの笑顔で迎える。


「話は終わったかしら」

「あァ……とりあえず、リーダーはメディウスで待つッてよ。ちなみに何人そっち側の区画プレイヤーを連れてきてもいいとも言ってたが」

「そうね、じゃあウチのパーティメンバーと……うん、もう1パーティだけ連れて行きましょうか。貴方はどうするの?」

「先に帰る。中央にャ行かねェからさよならだなァ」

「そう、じゃあまた会ったときにはよろしくね」


禍羅魔は振り返り手を上げながら帰っていった。

兎にも角にも、なんとかどちらも倒れる事なくこの場を抑えることが出来たという結果は大きいだろう。

この後の話し合いの場で何かしら起きる可能性は大きいのだが。


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