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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 1 第1章 ハジメマシテ、【犯罪者】

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Episode 17


--浮遊監獄都市 カテナ 第二区画 デンス

■【リッパーA】ハロウ


「討伐したはいいけれど、ログが出なかったということはそういうことでしょうね」

「でしょうね……あ、そっちからアクターゾンビきてますよ」

「はいはい」


シェイクスピアを討伐したあと、私達4人はそのままダンジョン前へと帰還した。

【ゾンビスポーナー】を倒した時と同じようなログが出ない限りは、討伐しても意味がないのだろう。


「アレがまだ何体かいるってことだよね?美味しくはなかったから遠慮しておきたいんだけど」

『美味しい美味しくないが基準……?(´・ω・)』


シェイクスピアを倒す必要がないからといって、一応【ゾンビスポーナー】が居たのがダンジョン内ということで、まだまだ複数のパーティはダンジョンに潜ったままとなっている。

ただ普通に街中に出てしまっている可能性もあるため、それを探しているパーティもいるらしい。

私達のパーティもそちらに合流、というか街中を探索するつもりだ。


「あは、やっぱり回復アイテムとして使えるようになったんだから味っていうのは重要だろう?味があるかないか、美味しいか美味しくないかってのは割とモチベーションに関わってくるんだぜ?」

「確かにね。食という文化が発展したのも過去にそういう事を考えた人がいるからでしょうし。詳しくは知らないけど」


とはいっても、所詮街中にいるのはアクターゾンビかソルジャーゾンビ。

今では話しながら倒せるくらいの敵であり、そこまで集中する必要もない敵だ。

だからと言ってコマンダーやナイトが出てこられるのは面倒なのだが。

残り時間が近づくにつれ、それらが出てこないとは限らないのが頭の痛い所か。


パーティメンバーである3人には既にそれらの情報は共有しているし、出会った時の対処法も決めているため、ある程度は善戦できるだろうが……だがその時、周囲の他のプレイヤーたちはどうなのだろうか。

そこも少し心配な所だ。


「とりあえず掲示板の方じゃ情報はありませんね……他の区画のプレイヤーがデンスに入ってくるのを見たっていうのはありますけど」

「あ、もう来たのね。どうなったの?」

「一応は倒して送り返したらしいです。代わりにキルペナルティが発生してるので……ほら、マップ上にマーカー出てますよ」


マギに言われた通りマップを見てみれば、オリエンスとデンスの境界辺りに赤いマーカーが出ているのが分かった。

……成程、キルペナルティはこうやって表示されるのね。自分がなって検証する手間が省けたわ。


「そういえば、キルペナルティとデスペナルティってこの期間中どうなってるんだっけ?私あんまり覚えてないからつい殺っちゃって困る前に教えておくれよ後輩くん」

「はぁ……一応掲示板には載ってるんですけどね。まずキルペナルティは簡単に、通常のペナルティと一緒にゾンビやらを倒した時と同じように区画のポイントが増えます。掲示板に上がってる情報だと、プレイヤーを倒すと大体アクターゾンビの2倍くらいのポイントがもらえるみたいですね」

『大体2倍……ってことはある程度振れ幅があるの?Σ(・ω・)』

「あれ、皆さんもしかして掲示板みてない……?そうみたいですよ。今の所は大体レベルの差だとは思いますが、アクターゾンビの2倍からソルジャーゾンビの1.5倍くらいらしいです。だからまぁ2倍くらいって考えておけばいいですね」


アクターゾンビの2倍。これは多いように見えてそこまで多くはない。

見渡せば見つかる状況で、それも人体の急所さえ狙えば簡単に倒せてしまうくらいの敵だ。

今プレイヤーを倒す意味はそこまでないだろう。

……まぁ、一応はあるのだけど。


「ふむふむ……なるほど。じゃあデスペナルティはどうなんだい?」

「そっちはちょっとややこしくなっていまして。通常のペナルティは勿論の事、まず所属区画のポイントが一定数減少します。こちらは今の所情報を出しているプレイヤーが居ないのでデンス(うち)では分からないですね。それに追加で、自分のキルしたプレイヤーの所属区画のプレイヤーと再び戦闘する場合ステータスボーナスが付与されるとのことです」

「……なるほど?つまりは自分をキルした相手だけじゃなく、そいつの所属区画全体のプレイヤーとの戦闘にボーナスが入るわけね」

「そういうことです」


そう、キルペナルティを受けるとはいえ倒す意味はここにある。

相手を倒せば倒すほど、その相手が所属する区画のポイントが減っていくのだ。

足を引っ張りたいならば、相手の区画に特攻しに行けばいい。ただし自分が倒された場合は同じことが自分の所属区画に起きてしまうために慎重にならないと戦犯になってしまう。


その点、デンスの方は一応は足並みが揃っているのだろうか。

一応イベント中の各所属ポイント自体は、見ようと思えばそこらにある端末から確認することが出来るため、しっかり見ていれば増減くらいはわかるのだ。

事実それを専門にやっているプレイヤーもいるらしく、1時間経つごとの増減を掲示板に投稿しているらしい。


「あ、なんか近くで戦闘音が聞こえますね」

「ん……こっちは聞こえないわ。どっちの方向?」

「大体ここから北東の方向ですね。ちょっと苦戦してそうです。喋り声も聞こえますし、どこかの区画プレイヤーとの戦闘ですかね」

「了解。……それにしても便利ね、そのスキル。私も使いたいわ」

「はは……僕も使えたら使ってるんですけどね……」


現在私達が居る大通りから北東の位置。大体ネースとメディウスとの境界辺りだろうか。

普通に考えればネースからこちらへと来たプレイヤーだが……中央区画であるメディウスの境界も近いため、それ以外の区画から来ている可能性も捨てきれない。


ちなみにマギが使っているスキルは【感覚強化薬】。

自分以外には使えない代わりに、時間制限付きで自身の六感全てを強化する薬を生み出すスキルだ。

【薬を扱う者の信条】と併用すればかなりの範囲の音を聞いたり遠くを見ることが可能となる。

【シップマン】ならではのスキルだろう。


他の2人も問題ないようで、マギからバフをかけなおしてもらい早々に移動を開始した。




「オラァ!デンスの奴らはこんなもんかァ!?」

「くぅ……救援は……」

「掲示板には出した!持ちこたえ……ッ!!」

「……あァ?なんだテメェら」


辿り着いた私達が見たのは、2人のプレイヤーを足で転がしている囚人服の男の姿だった。

赤い鬣のような髪、赤い目、そして手には巨大な大剣とも言うべき剣を持ち。

半笑いでこちらを見てくるその男は、明らかに友好的な関係を築こうとはしていないだろう。


「CNVL、頼める?」

「おや、いいのかい?こういうのは君がいくと思ったのだけど」

「貴女の方がPSが高いもの。それに彼らを助けたらすぐに加わるから大丈夫よ」

「テメェら質問には答えねぇのかよ?……まぁいい。どうせデンスのプレイヤーだろ?丁度いいからテメェらも殺ってやるよォ!!」

『あ、私ああいうタイプの人苦手なのでハロウさん手伝います(´-ω-`)』

「じゃあ僕が先輩のフォローですね。いつも通りだ」


どこの区画かは分からないが。

ここにきてプレイヤーとの初戦闘が発生した。

とは言っても、初めに相手をするのはうちのアタッカーであるCNVL。相手のPSが分からない以上、全員でかかりたい相手ではあるものの近くに倒れているプレイヤーも放置はできない。

メアリーには一応こちらにあの敵プレイヤーが寄ってきた時のため、クロスボウの狙いをつけておいてくれと頼み、後方支援に徹してもらう。


デスペナルティによってポイント減少がある以上、助ける以外の選択肢はない。

それに本人たちが言ってはいたが、掲示板のほうに救援を求める文章を載せているらしいため、私達の勝利条件は割と緩い。

プレイヤー2人を助け、時間を稼ぐ。これだけで近くにいるであろうプレイヤーが寄ってきて数の暴力によって押し潰すことが可能だろう。


「というわけで私が相手だよ、よろしくタテガミくん」

「ハッ!まぁいいぜ。かかってこいよ」


そう考え、CNVLと共に行動を開始する。

私は倒れているプレイヤーの方へ、CNVLは出刃包丁を取り出し、そのまま目の前のプレイヤーへと駆け出した。


どうやらこちらよりも戦闘を優先したようで、特に邪魔をされるわけでもなくプレイヤー2人の元へと辿り着く。

彼らのHPバーを確認すれば、それぞれ1割程度は残っているためマギの元へと運ぶことが出来れば回復自体は可能な範囲だろう。


「大丈夫?」

「君は……そうか、来てくれたか」

「動けるなら動いてほしいけど……あっちの男の子の方に移動できる?ヒーラーよ」

「俺は何とか移動は出来るが……そっちのは【気絶】って状態異常が付いちまってる。多分自分じゃ移動できないだろうな」

「了解。じゃあ行って」


倒れていた2人、ガタイが良い男プレイヤーと少し線の細い男プレイヤーの元へと駆け寄った私は、まず意識確認を行った。

意識のあるガタイの良い方が言ったように、このゲームには【気絶】という状態異常が存在する。


HPを一度に5割以上削られた場合、確率で自分の身体を動かすことが出来なくなるというデバフだ。一応かかる確率は低いものの、大体5%とかそれくらいの確率らしい。

検証班が調べていたため、ある程度は正確なものだろう。


「よいしょっと……」

「軽そうとはいえ意識のない男を背負えるのか」

「まぁゲームだし、それにレベル補正とかもあるでしょう?」

「ふむ……あぁ、君達はあのパーティか」


そんな会話をしつつ、私とガタイの良いプレイヤー……TonyHackという名前の彼と共にマギの元へと移動し、そのままマギに回復を任せた。

その間にもガキンガキンという刃と刃を合わせる音が聞こえており、それに合わせてちょっとした石片が飛んできているため、見ていなくとも激しい戦いが行われているのが分かる。

大剣と渡り合う出刃包丁というのも凄い絵面だろう。


……混ざりたくないけど、混ざらないとダメでしょうね……。

取り出すのは小回りの利く【HL・ナイフ】。一撃を重視するならば【HL・スニッパー】なのだろうが、やはりその大きさから取り回しは悪い。


一度呼吸を整え、はっきりと戦闘中の彼らの姿を確認する。

振り下ろした大剣を避けつつ、出刃包丁で脇腹を狙うCNVLを鋭い蹴りで退けつつ、持ち直した大剣を薙ぐように横に振るうことで距離を開かせる。

何かしらのスキルを使っているのか、大剣には黒いオーラが纏わりついており掠っただけでも悪い影響を受けることが分かるだろう。


対してCNVLはといえば、いつも通り肉片を頬張りながら適度な距離を保ちつつも大きな隙を見つけては、先ほどのように人体の急所を狙って出刃包丁を突き出したり払うように振るったりと、様々な攻め方を見せている。

ハッキリ言って、私が入る隙なんて特にはなさそうに見えた。

……あれ、これ私いる?互角じゃない。


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