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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第5章 月を壊したかぐや姫
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Episode 32


■【赫奕姫T】アリアドネ


全くもって、理解が出来なかった。

いや、私の頭がそもそも理解しようと考えていなかっただけかもしれない。


目の前には5人のプレイヤーがいる。

今回の区画順位戦中、何かとこちらへと攻め込んできていたネース所属の2人のプレイヤー。

そして、新顔の3人だ。

その新顔の1人は、自らの事をデンス所属のハロウであると名乗った。

そして彼女が私の事を相手するとも。


最初は1人で何が出来るのかと、正直嘗めていた。

私のように使役系に特化しているスキルを持っているなら別だが……それ以外ならば、5人全員で襲い掛かってくればすぐに私なんて殺せていただろう。

でも、彼女はそうしなかった。

寧ろ、ほぼ1人で私と『決闘』していた。


『火鼠の皮衣』によるカウンターは見てから避けられ。

『仏の御石の鉢』による頭上からの攻撃は地面を盛り上がらせることで一時的に凌ぎ。

『蓬莱の玉の枝』と特殊スキルの組み合わせによるモブの大量召喚はこちらが予想していなかった方法で退け。

『燕の子安貝』による条件付きのHP全快効果を使わされ。

そして、今。

目の前では『龍の首の玉』によって出現させた水龍達何体かが、彼女の足一本と引き換えに弾けて消えた。


あり得ない、とは思わない。

なんせゲームの中の世界だ。レベルアップやバフの効果によって、その身体能力は現実よりも大幅に向上するのだから、普段は出来ないような身体の動かし方なども出来るだろう。

だが、あくまでそれは身体が動かせるだけであって、実際に考えた通りに動かせるかは本人の素質によるものが大きい。


あり得ない、そう思いたい。

そう思うと同時、木蓮が警戒していた理由が分かった気がした。


彼女は、否。恐らくは彼女のパーティメンバー全員がそうなのだろう。

言っては悪いが、諦めが悪いのだ。

『火鼠の皮衣』や『仏の御石の鉢』が防がれたのはまだ良い。ここまでならばまだ普通に防がれたりもするレベルだから。

しかしながら、今各区画を襲わせている『蓬莱の玉の枝』や、『龍の首の玉』による水龍の攻撃など、途中途中で諦めても……負けてしまったとしても、周りからは「しょうがないね」と言われそうな攻撃を怪我を負いながら、まっすぐに私を見据えてきていた。


……私だったらもう諦めてる。

これはゲームなのだ。どこかで諦めても非難されることはない。

何処か自分の中で後味の悪い何かが残るだけだ。

だが、私と相対している彼女の目には、今だ諦めは浮かんでいない。


強い人だ、そう思う。

肉体的な意味ではない。ゲームとして考えるのならば、この戦闘中に一度私は彼女を倒せる場面があったのだから。

私が言いたいのは、精神的な強さだ。

何が何でも諦めない。目の前のハロウという人物はそれが自然と出来る人物なのだろう。

本当の所はどうなのか分からないが、この戦いの中で彼女を見てきた私にはそれ以外には考えられなかった。


もう少し、彼女の事を見て見たい。

そう思うものの、彼女の身体は既にボロボロだ。

HPは半分を切り、徐々に回復はしているものの足を片方失ったために今までこちらを上回っていた速度が地に堕ちた。

空中にいる水龍を向かわせれば、次こそ彼女の身体は光へと還るだろう。


懸念すべきは、その後か。

今、新たに1人……へらへらと軽薄そうに笑う女性プレイヤーが合流したが、1人増えた程度じゃ問題はない。

『蓬莱の玉の枝』によって拘束してしまえば人数差などどうとでも出来るのだから。


そう考え、私は手を上から下へと振り下ろした。


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