表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第5章 月を壊したかぐや姫
182/194

Episode 28


『流石に無理。頼んだわ』

『『了解』』


短く、そして返ってくる言葉も短く。

私は瞬時に後ろへと跳ぶ。

次の瞬間、白い粘性の人型達が爆発した……否。

見覚えのある白い爆発が発生し、彼らを巻き込んでいく。

その爆発に巻き込まれないようにその範囲を見極めながら、私は私で自身に掛かっているバフの有効時間を確認していった。

……【強欲性質】があと10秒。これはもうダメ……印章の方は全部切れてるか。


白い爆発。

その正体は以前、【決闘者の墓場】にてグレートヒェンを倒し切ったダメージポーション。

それを大量に、かつ迅速に2人で投げているだけ……と言えば簡単だが、実際やっている2人からすればかなりの重労働だろう。


しかしながら、その労働に見合うだけの効果は出ている。

ポーションの直撃を喰らった人型はそのまま爆発、光の粒子となって消え。

それ以外の人型も、爆風によってこちらへと近づく事が出来ていない。

そうやって足踏みしている間に、また新しいポーションが投げられ爆破される。

対個ではなく、対多に特化した攻撃手段だ。


今までこれを【式紙】などに使ってこなかった理由は簡単で。

単純に在庫量イコールこの爆撃の続く時間となっているため、下手に使うという決断が下せないという点が1つ。

マギが随時足りなくなったら作れないわけではないが……それでも戦場で行うような事ではないために考えていなかった。


そして、投げている2人の隙が大きすぎるというのが2つ目の理由だ。

ポーションを投げ続けなければ、この爆発は続かない。

そんな攻撃を縦横無尽に襲い掛かってくる天使や【式紙】、そこら辺のプレイヤー達に試せるわけもなく、今の今まで使っていなかったのだ。


暫くすれば、アリアドネが生み出した人型達はそのほぼ全てが爆発によって光へと変わっていた。

それに伴い、マギとメアリーによるポーション爆撃が終わる。


「そんなのアリ?!」

「こうして出来てる時点でアリよ。というかそっちもそっちでズルしてるようにしか見えないけれどね」

「こっちも出来てるんだからアリよアリ!」


爆発音の中声を張っているのか、顔を真っ赤にして少しだけ涙目になっているアリアドネに適当に返事をしておく。

何というか……少し、気が抜けてしまった。

別にアリアドネを侮っているわけではない。むしろ今も何をしてくるのか分からないため、しっかりとその一挙手一投足には警戒している。

それこそ、まだ見ていない残りの難題シリーズの効果が予測できないため、一定の距離は保とうかと思っているくらいだ。


だが……区画への侵攻やらソーマ達から聞いていた話から受ける印象と、現実に相対した印象が違いすぎるのだ。

早く倒さねばならない。これはデンス所属のプレイヤーとしてイベントの勝敗に関わってくるため、周りに迷惑を掛けないためにやらねばならない事。

しかしながら……私はここにきて、彼女が次にどんなことをしてくれるのか、見せてくれるのか楽しみになってきていた。


後ろから溜息が1つ聞こえた。

恐らく、私のそんな心境をマギが察したのだろう。

それでもパーティチャットやなんやかんやで言ってこないのは、私の事を尊重してくれているのか……それともそれ以外か。

兎に角、何も言われないのならば……自分の好きなようにやろうじゃあないか。


「さて……第2ラウンドと行きましょうか。そっちの大量召喚?はこうして無力化できるってことで。次の手を見せてくれるかしら?」

「……このッ!馬鹿にしてッ!!」


少し顔がにやけているのを感じる。

恐らく、アリアドネからすれば私の態度はふざけているようにしか感じないだろう。

私自身もそう思うし、多分私の後ろにいる4人もそう思っていることだろう。

だが、まぁ。

こういうのもたまにはありなんじゃないだろうか。


……昨日から天使との戦いとか色々あったし。ここらへんで私欲に走っても許されるわよねぇ。

ネースで思いっきり私欲に走った気もしないでもないが、それはそれ。これはこれ。

どちらかと言えば、うちのパーティではCNVLの方が本能のままに突っ走ってる気がするのでノーカンだ。


改めて私は双剣を構える。

そんな私に対して、石階段の上からこちらを見下ろすようにしているアリアドネは小さく息を吐き、何も持っていない手をファイティングポーズのように構えた。

どうやら何を言った所で無駄だと考えたのだろう。

私がアリアドネの立場でも同じ考えに至っていたと思う。

そして、動きだす。


爆発に巻き込まれないようにとっていた距離を駆け抜け、一気にアリアドネへと近づいていく。

彼女は『火鼠の皮衣』を未だに纏ったままだが、私なら見てから避けれる事が分かっている。

他の『仏の御石の鉢』だが……アレはアレで『土精の鎚』にさえ切り替えるか、もしくは頑張って攻撃範囲内から逃げればいいだけの事。


残る『蓬莱の玉の枝』、『龍の首の玉』、『燕の子安貝』の3つがどんな効果なのか分からないのが少し痛いが……まぁ、何とかなるんじゃあないだろうか。

……そういえば、召喚するときに使った【難題】は何を出したのかしら。

特殊スキルの宣言と共に、アリアドネは何かを握りつぶしていた。

もしかしたら、アレが3つの内の1つなのかもしれない。

何を出したのか、何を握りつぶしたのかは分からないが……どの効果なのかが分からないというのは相対する側としては少し、否。かなり痛い。


そんな事を考えていれば、石階段の下まで私の身体は近づいていて。

そのまま上にいるアリアドネへと向かって跳びあがった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ