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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第5章 月を壊したかぐや姫
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Episode 27


敵が目の前にいるというのに、思わず上を見てしまう。

そこには、


「隕石!?」


空から降ってくる岩のような何かがあった。

私の身体くらいならば下敷きになってしまうくらいには大きいそれは、今もこちらへと向かって落ちてきている。

……いや、隕石なんかじゃない!竹取物語準拠ならアレは……。

直前に宣言したスキルは、彼女が身に纏っている推定『火鼠の皮衣』を出現させた【竹取の五難題】。

それに倣うのであれば、上から降ってきているアレは竹取物語の中の5つの難題の中の1つなのだろう。


一番近いのは……『仏の御石の鉢』、だろうか。

釈迦だけが持つことが出来ると言われる、石の鉢。

落ちてきているのであれば、下から支えればいい。


インベントリ内から【土精の鎚】を取り出し、【隆起】の印章が彫られた面を地面へと叩きつける。

瞬間、触れた地面が盛り上がり今も私に向かって降ってきている石の鉢に向かって伸びていった。

それらはそのままぶつかり合い石の鉢の勢いを殺していく。

しかしながら、その勢いが完全に死ぬ事はなく……少しずつではあるが、今も落下し続けていた。


「凄いじゃない!そんな方法で止める人初めてみたわ!」

「余裕そうね」

「まぁ、まだスキル1つしか使ってないしぃ……」


こちらを見て楽しそうに笑うアリアドネは、ちらと私の後ろ……ネース側の2人に向けて視線を向けた。


「正直、あの2人が参加してこない限りは何とかなりそうな気がするのよね。貴女、本当に決闘イベントの優勝者?」

「あからさまな挑発ありがとう。でもそれを言われると弱いわねぇ……」


顔は苦笑いを。

しかしながら、言われた一言に対して反応してしまう。


一瞬で双剣へと持ち替え、石の鉢を無視して元々近づいていたアリアドネに対し。

一歩でその距離を零に……剣を振るう事が出来る距離へと詰める。

アリアドネはこの一瞬で起きた事が理解できていないのか、きょとんという顔を浮かべていたが、それに対して苦笑いを崩し……にっこりと笑ってやる。


「【強欲性質】」

「なァッ!?」


そしてしっかりと与えたダメージ分ステータスを強化していくスキルを発動させ……その無防備な胴体に向かって左から右へと剣を振るう。

近すぎたのか、それとも反応出来なかったのか……それとも別の理由か。

その一撃は避けられず、アリアドネの胴体へとするりと吸い込まれるように入っていく。


瞬間、彼女の羽織っていた推定『火鼠の皮衣』が赤い光を放ち始めた。

やはりというか、予想通りの代物だったのだろう。

すぐさまその光は炎と変わり、私に向かって飛んでくる。

……申し訳ないけど、似たようなのはもう見てるのよねぇ。


少しだけ眉を困らせながら、その炎を軽く横に跳ぶことで避ける。

後ろから焦ったように私を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、気にしない。恐らくマギだろうし。

アリアドネの顔に更に驚愕が浮かぶものの、仕方がないだろう。

私も酔鴉と共に攻略したダンジョンの経験がそのまま活かせるとは思わなかったのだ。


「さぁ、どんどん行くわよ」


戦闘のスピード感を上げていく。

元々こういった白兵戦は得意ではないのだろう。徐々にアリアドネが付いていけなくなるのを感じ、ソーマを含めるネース所属のプレイヤーがどうしてあんなにも警戒していたのかを疑問に思った。

ソーマの性格ならば、私がそこまで苦戦しない相手ならば……『まぁ、お前なら何とかなるだろう』などと言ってもおかしくはない。


しかしながらそれを言わなかった。

と言う事は、何か警戒するに足るものが目の前の彼女に存在しているということなのだ。


そんな事を考えていた、その時だった。

ずしん、と私の後ろで重い何かが落ちる音がした。

恐らくは【隆起】によって止めていた『仏の御石の鉢』が地面に落ちたのだろう。少しばかり私がそちらへと意識が逸れた瞬間、


「【竹取の五難題】、【怠惰模造】ッ!」


彼女は大きく後ろへ……階段を数段上がるようにして私から無理矢理距離をとり、スキルの宣言をした。

片方は3度目となる竹取物語関係のもの。

そしてもう1つは名称から私の【強欲性質】、CNVLの【暴食本能】と同じ特殊スキルであることが分かった。


――そしてその効果は一目瞭然だった。


アリアドネが何かを握りつぶすとともに、私の目の前には先ほど拘束してきた白い粘性の液体で出来た人型が少なくとも5体以上出現した。

恐らくは、ネース所属のプレイヤーはコレを知っていたのだろう。

特にソーマはこれが出来る事を知っていた……だからこそ、少しの特徴だけでそれが誰の仕業か分かったのだろう。


絶望はない。

寧ろどうやって拘束を解くのか知っている私達が相手をしていて良かったと言うべきだろう。

そうして、私はパーティチャットを開いた。


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