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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第5章 月を壊したかぐや姫
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Episode 19


近づいてくる2、3人のプレイヤー達に自ら近づき、私は手に持ったマグロ包丁と出刃包丁を振るう。

狙うは急所ではなく、腕や足。

それらを斬り飛ばすように、部位の欠損が狙えるように、力任せに得物を振るう。


出来るのならば彼らの肉を喰らってスキルを発動させていきたいが、下手に近づくと身体を抑えつけられる可能性が高い。

先程の1人目も半ば博打のようなものだったのだ。

自殺も出来ない状況にされるのだけは勘弁願いたい。


……んー、やっぱり気になるなぁ。

そんな中私は、斬った時の感触、突き刺した時の感触に違和感を覚えていた。

自慢ではないが、PvPの経験だけならばハロウよりも多い自信がある私は、それこそプレイヤーを斬った数も斬られた数もそれなりにある。

その時の感触と、今目の前で対峙しているプレイヤー達の感触が少し……否、意識してみれば明確に違う事に顔を顰めた。


一度確かめる必要があるだろう。

まずは本当にプレイヤーなのか。


「なぁ、君?ちょっと話さない?」

「……」

「おいおい無視かい?表情にも出さないなんてすごいじゃあないか」

「……」

「あはッ、言葉の代わりに攻撃か。成程成程……」


どうやらこちらと会話を交わすつもりは無いらしい。

まぁこれくらいならば、たまに居なくもない。

相手をする側としてはやりにくいが、それを分かってやっているプレイヤーもいるため、そこは良いだろう。良くはないが。


仕方ないが次として。

残り少ないスポーナーの肉塊を取り出し、【祖の身を我に】を発動。

赤黒い人型に周囲のプレイヤーを拘束させた。

その内の1人へと近づき、その喉元へと喰らいつく。

スキルとしては【あなたを糧に生きていく】の発動を意識して。


柔らかい喉を喰らい、その肉を噛み千切ると口の中にいつもの味――、


「うげぇ、まっず」


――などせず。

口の中に広がる紙とインクの香り。凡そ人が喰らうものではない感触。

【あなたを糧に生きていく】が発動していないことから、これが人肉ではない事を表していた。

私の知らない【犯罪者】に、人から別の存在に変わってしまうタイプのモノがあったりするのかもしれないが……今はその可能性を考える必要はないだろう。

なんせ、目の前で喉元を食い破ったプレイヤーが今までのように光ではなく、黒い粘性の液体となって溶けていったからだ。


「……さて、と。じゃあここで頑張ってもコストだけが減ってくわけかぁ」


周りにいるプレイヤー……もどき。

これらはほぼ確実に誰かが使役してるものだろう。

では誰が使役しているのか?


「おや、バレてしまいました?」

「結局君が全部操ってるのかい?言っちゃ悪いけど1人で出来る量を超えてるぜ?」

「はは、それもまた【偽神体】の力ってわけですよ。イベントが終わった後なら色々融通しますよ?」

「あは、遠慮しておこうかな。条件さえ満たせば似たような物が作れるだろうし」

「それは残念です」


答えは簡単だ。

いつの間に相応に距離をとったのか、私の近くに居たはずの例の男……【式紙】などを行使していた男性は、【偽神体】の近くでこちらへと話しかけてきていた。


「これが本気って事でいいかい?」

「えぇ。本気ですよ。……というかPvP関係では悪い噂しか聞かない貴女を相手にするには、これを使わないと厳しかったのでね。ここまで頑張らせていただきました」

「オーケィオーケィ。良いぜ、そこまで買ってくれるならこちらも今以上に全力でいこう」


血の雨が降る。

周囲には、人の姿をしている者達が。

そして私の視線の先にには、宮司のような姿をした1人の男がいた。


「改めて名乗ろうか。デンス所属のしがない1プレイヤーのCNVL。巷じゃ『屍肉喰い』なんて呼ばれてたりするぜ」

「ディエス所属、特に通り名なんてものもないプレイヤーの木蓮です。どうか、お手柔らかに……」


木蓮と名乗った男は、血に濡れながら薄い軽薄そうな笑みを浮かべる。

これまでの戦いから、逃走技術は今まで出会ったプレイヤーの中でも1番。

ここで一度デスペナルティにしておいた方が良いだろう。


お互いの名乗りが終わった瞬間、私は地を蹴り木蓮へと近づいていく。

それを見た彼は【偽神体】から黒い液体を湧き出させ、それを人そっくりの何かへと変えた後。壁のように私との間に配置した。

このまま私を捕獲するつもりなのだろう。


だが、それに素直に引っかかるほど私は優しくない。

もう1~2回使えれば良い【食人礼賛】を、シェイクスピアの腕を使う事で発動させそのまま木蓮の方へと腕を伸ばした。

大きくなっていく腕が、急速に距離を縮めていき人型達へと接触する。


瞬間、黒い粘性の液体が腕へと絡みついていくが、それは腕の動きを阻害できるほど量が多いわけではない。

手が伸びていき、木蓮の元へと迫っていくものの。


「【式紙】」


虚空から大量に出現した紙によって、その動きが止められる。

私の身体自体は少しずつ近づいて行っているため、完全に勢いが止められたわけではないだろうが……それでも一時的に【食人礼賛】が無力化されたのと同義だ。

もっと他の攻撃を考えなければいけないだろう。……少しだけ面倒だが。


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