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Festival in Crime -犯罪の祭典-  作者: 柿の種
Season 2 第5章 月を壊したかぐや姫
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Episode 15


■【食人鬼A】CNVL


『……本当に、行ってしまわれた……』

「あは。君は分かってないみたいだね」


今は私にしか響かない声を、私は骨の腕を両手で支えながら笑う。

ハロウ達は先に行った。恐らくネースの2人は分かっていなかっただろうが、いつもの3人には在庫が残り少ない事くらいはバレていたのだろう。

だからこそ、あの場でハロウは1人残るように言ったのだろうし……他の面々が何も言わなかったのはそういう事だ。

特に一番何か言いそうなメアリーが何も騒いでいなかった事から確定だろう。


「ここを、【式紙】を大量に操ってると思われる君を私1人任された。つまりこれってさぁ」

『……』

「君程度(・・)なら私1人で余裕だって言外に言われてるの分からない?」

『……ッ!貴様……ッ!!』


分かりやすく煽るように、あくまでこちらは余裕であると思わせるように。

軽くふんぞり返りながら、隙だらけの姿を晒しながら私は言う。


『ま、まぁいいです。すぐにその認識が間違いだったとその身をもって分かるのですからッ!』

「ブーメランって知ってるかい?それにさぁ……」


私は新たにインベントリからナイトゾンビの腕を取り出し、それを喰らう。

発動するスキルは勿論、私がこのFiCで最も好んで使うスキルである【祖の身を我に】。


「君はコスト全開放する【食人鬼】の怖さを知らないのに、侮りすぎだぜ?」


左手に出現した銀に光る剣を握り。こちらへと倒れてくる巨大な骨の腕に空いている右手を触れさせる。

そうして発動させるスキルは勿論決まっている。

巨大な、グレートヒェンの腕は一瞬で光へと変わり。

それらは私の腕へと集まって、巨大な異形の骨の塊を作り上げていく。


その姿を見て何かを感じとったのか、目の前の森の中から複数の手裏剣の形をした紙がこちらに飛んでくるものの。

左手に持った剣でそれらを軽く弾いていく。

およそ紙と鉄がぶつかったとは思えないほどに小気味いい音が聞こえるものの、これくらいならば片手間に対処できる程度には私も剣の扱いは成長しているのだ。

……まぁ、剣の性能がいいのかもしれないけど。


『チッ……』

「おやおや、今のが本気かい?もう小手先調べの攻撃が効かない事くらいは分かっているだろうに。――さぁ、ここからはッ!食事の時間だッ!!」


足に力を入れ、地を蹴った。

【食人礼賛】によって作られた骨の腕は、いつものように振り下ろさず。

横に伸ばし、木々に対してラリアットしながら森の中へと踏み入れていく。

それと同時、私に対して複数の人型の【式紙】が森の中から近づいてくるのが分かり、少しだけ笑ってしまう。

既に何度も対応してきた相手だ。

流石に操っているプレイヤーが近いからか、少しばかり動きは良いものの……それでも左手の剣で軽く切るだけで倒れていくためあまり脅威とはなっていない。


だが、マギが居なくなってしまったために敵がどこに居るのかは分からない。

相手のフィールドだろう森の中に入ったはいいものの、そこまで何かを考えていたわけではない私は、1つ。思い付きではあるものの……普段ならばコストの問題で絶対にやらないであろうことをし始めた。


「よっしゃいくよぉぉおおお!」

『はぁ!?クソッ、【式紙】追加ッ!!』


その場に足を止め、私は回転(・・)し始める。

縦にではなく、横にだ。

それに伴い、横に伸ばしていた骨の腕がラリアット以上の範囲で木々をなぎ倒していくのが感覚で分かる。


【式紙】達も、流石にそんな所へは近付けないのか骨の腕の範囲までは入ってこないものの。

どうにか私を止めようと、遠距離攻撃をしてきているのが分かった。

骨の腕を抜け、私の身体を傷付けるものも出てきているものの致命傷になるレベルではないため問題はない。


一度止まる。

それと同時、骨の腕が光となって消えていくのを横目で見ながら新たに巨大な人間の腕を取り出し喰らいついた。

それだけで複数の強化スキルが発動し、減っていたHPも回復を始め。


「【暴食本能】、【フードレイン】」


次いで発動させるは、広範囲に降り注ぐ血肉の雨。

【暴食本能】によって強化されたそのスキルは、コストにした物が物だったからかいつも以上に巨大な肉塊などを私の周囲に降らせ始める。


「あはッ、どうしたんだい?私1人じゃあ【式紙】達を相手にできないとか言ってなかった?」


本来、紙という素材はそこまで液体には強くない。

それこそ近年開発された耐水紙などではない限り、ふやけてしまったり、物によっては穴が開いてしまう。

このゲームの紙でもその特性は変わらない。


私の周囲に存在する【式紙】達は、その名前通り紙でその身体が作られている。

その為か、血の雨に晒されたモノ達は徐々に体勢が崩れていっていた。


『……』

「おや、だんまりかい?私を倒せないって認めてるようなものじゃないかなぁ?」


周囲を見渡す。

木々が薙ぎ倒され、血や肉塊などが転がる中、少しずつ赤く染まっていっている【式紙】達。

【フードレイン】の範囲外にも【式紙】はいるものの、自ら弱体化されるような場所へと入ってこようとはしないのだろう。


……んー、プレイヤーらしき姿はないかぁ。何かしらのスキルで隠れてるのかな?

ではもっと周囲を破壊しながら探すしかないだろう。

何せ、ここで全てのコストを使い切っていいと言われたのだ。つまりは、【食人礼讃】でも【祖の身を我に】などなど何でも使うことができるのだから。


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